Apricot Candy(4) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

すると設楽はふと微笑んで

 

「よかったよ、」

 

とひとことだけ言って、席を立って去ろうとした。

 

奏は何となく不安になって

 

「あのっ、ちょっと中盤の音の強さというか、響かせ方が今一つなんじゃないかって、」

 

思わず声をかけてしまった。

 

設楽は振り向いて

 

「・・きみの先生は、さくらだから。 彼女の言うことが全て。 彼女がOKならばそれでいいし、納得がいかなかったらとことん話し合うといい。 ぼくが何かを言う立場でもない。 きみのピアノを久しぶりに聴いてみたかったから、」

 

そう言ってすぐにその場を去った。

 

奏はそれに小さく頷いた。

 

 

先生と設楽さんと、母と。 自分。

 

この複雑な関係は普通ではありえないのかもしれない。

 

それぞれ愛するパートナーもいて、もう何もこだわる必要もないのに。

 

このいつも誰かが誰かに遠慮をしている状態はこれからもずっと続くのだろうか。

 

もちろん『遠慮』をしているからこそ、今のこの平穏があることもわかっている。

 

だけど何だか少し淋しい。

 

男女のことはまだまだ自分にはわかりきれないことばかりだ。

 

 

 

 

 

「うーーーん。 なんかね・・なんか・・」

 

さくらは奏のピアノをひとしきり聴いたあと、腕組みをして目を閉じて眉間にしわを寄せた。

 

「な、なんでしょう・・」

 

奏は何を言われるのかとドキドキした。

 

「あー、なんっか。 うまく言えない・・ スクリャービンのこう・・ロシアっぽい荘厳さとラフマニノフとは違うその奥底のやや華のある部分と・・」

 

言いたいことがまとめきれない。

 

「先生、今日あんまり体調が良くないみたいですし。 もう明日にしたら・・」

 

小和が見かねて言った。

 

「え、どうしたんですか?」

 

奏は少し驚いて言った。

 

「ちょっと朝から胃の具合が悪いっていうか。 ちょっと朝ご飯食べた後吐き気がして。 大したことないわよ、」

 

さくらはまだ目を閉じながら言った。

 

「吐き気って。 まさか妊娠とか、」

 

小野塚が軽い冗談のつもりで笑った。

 

「に・・」

 

奏と小和はぎょっとした。

 

するとさくらはカッと目を見開き、

 

「ちがうわよ!! ちゃんとしてます!!」

 

恐ろしい表情でそう言った。

 

ちゃんとしてる

 

その意味を脳内で反芻してしまい、奏は何となく想像してカーッと赤面してしまった。

 

「ちょ、先生・・」

 

小和も思わず顔を手で押さえた。

 

しかしさくらは

 

「うーん、・・もっと色鮮やかというか、実際ラフマよりあんまり評価されてなかったけど、底辺の所でショパンの影響もあって・・」

 

独り言のようにまた目を閉じてブツブツ言い始めた。

 

そこに。

 

「こんばんわ、」

 

インターホンの向こうに葦切の姿が見えた。

 

 

さくらのことを信じて奏を任せている設楽。そして、さくらの元に葦切が帰ってきて…

 

 

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