葦切は少しずつ義姉の言葉に気持ちが開き始めた。
「義姉さんが。 兄さんとつきあって最初の誕生日にもらったプレゼントって。 なんだった?」
唐突な質問が口を突いて出てしまった。
「あ? 誕生日プレゼント? なにそれ、」
義姉はきょとんとした。
「中学生のころ?」
「・・うん。 そうねえ。 中学2年の時からつきあい始めたから。 誕生日プレゼントなんて洒落たこと。 高校2年生の時に初めてもらったかもしれない。」
宙を見て、昔のことを思い出していた。
「確か。 修学旅行で東京行った時。 原宿かなんかで買ったとか言ってた・・。 ネックレス。 だったと思うわ、」
「ネックレス??」
「うん。 なんかね。 名前彫ってあった。 英語で、」
思い出して笑ってしまった。
「へえええ。」
兄は父同様やはり無口で家族ともそんなに会話が弾まない方だった。
その兄が。
と思うと、やっぱり笑いが込み上げた。
「うれしがった?」
葦切は義姉を見た。
「うん。 うれしかったよ。 ネックレスなんて。 だってさ、友達に聞いても彼氏から誕生日プレゼントだと・・ハンカチとか? レコードとか。 そんな感じだったから。 アクセサリーだもん。 やっぱり嬉しかったよ、」
そう言った後。
「でもその時にね。 『卒業したらおれと結婚してくれない?』って言われた。」
とつづけたので
「えっ」
それには驚いた。
「まだ高校生だったし。 結婚とが・・全然考えてないじゃない。 こっちは。 びっくりして。 でも・・よぐわがんねかったってこともあるけど、その時は泰ちゃんしか目に入ってないからね。『うん』って、返事した。 子供だから好きな人と結婚することが一番幸せって信じて疑ってなかったし、これから先泰ちゃん以外の人と恋するなんて思いもしなかったし。 ま、実際。 それから何回も何回もケンカするんだけどね、」
義姉は豪快に笑った。
「・・兄さんは。 本気だったってことだなー。 彼女にアクセサリーをプレゼントするって、兄さんにとってはもう一生賭けたって感じだったんだろうな、」
「昔だから。 今の人たちはそんな風に思わないよ。 ホラ、よくテレビでやってるじゃない。 元カレからもらった指輪を質屋に売っちゃうとか、」
葦切はひとつ小さなため息をついた。
そして
「つきあってる女性に。 指輪をプレゼントするって。 意味が深いと思う?」
思い切って聞いてみた。
「え、」
義姉はやや固まった。
月がキレイだった。
ビルが立ち並ぶ場所だけれど、向かい側は大通りなので見通しはいい。
中秋の名月かあ
さくらはひとりそれを見ながらワインを飲んでいた。
車が通り過ぎる音だけが聴こえた。
彼女に指輪を贈る意味。葦切は慣れないことにもうそれだけで悩んでしまい…
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