Penny Lane(16) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「葦切さんは夏休みも取ってなかったんですから。 その分休んだらどうですか。」

 

病院から斯波に電話を入れた。

 

「いや、でも。」

 

「落ち着いたとはいえ。 まだ意識がきちんと戻られてないんでしょう。 ・・親は自分が知らないうちに年取っていますから。 いつまでも元気でいるって何となく思ってますけど。」

 

斯波が自分の父への思いを話している気がした。

 

「ご家族がいらっしゃるとはいえ。 少しご実家でゆっくりしたらどうですか、」

 

いつも無口であまりしゃべることもないけれど

 

本部長としてきちんと部下のことも考えてくれる。

 

「・・ありがとうございます。 父もですが、母の方もちょっと動揺しているようなので。 ・・お言葉に甘えて少しこちらに残ることにします、」

 

葦切は静かにそう言った。

 

 

 

「・・耕平? あんた東京に帰るんじゃないの、」

 

集中治療室の父の傍らについていた母が顔を上げた。

 

「上司がもう少しいた方がいいって言ってくれたから。 いるよ。 母さんはおれと一緒に帰ろう。 少し休まないと、」

 

「そうしてくれる? お母さんさっきからうつらうつらしてるんだわ、」

 

名古屋に住んでいる姉も戻ってきていた。

 

「タクシー呼んでくっがら。 待っていて。」

 

葦切は優しくそう言った。

 

 

母と一緒にタクシーに乗り込んだ。

 

「ほんと。丈夫な人だったのにねえ。 わからんもんだ、」

 

母は独り言のように言った。

 

「母さんもきちんと病院で定期健診して。 父さんは医者嫌いだったし、」

 

「あたしらも。 もういつ死んでもおがしぐねえ年だった、」

 

母はそう言って笑ったけれど。

 

 

高校を卒業してここを出て。

 

末っ子だったので、親のことは兄や姉にまかせっきりで。

 

いつの間に母が小さくなった気がした。

 

心配だけかけて。

 

何もしないで。

 

葦切は窓の外の景色を見た。

 

そして時計を見やる。

 

 

もう。

 

奏くんの出番は終わったか・・

 

 

どうして何も言ってくれないんですか!

 

 

さくらの言葉が甦る。

 

「あんた。 もう結婚はしねの?」

 

母の唐突な言葉で我に返った。

 

「えっ、」

 

「いぐら。 瑠依がいるって言っでも。 子供なんかアテにできねっし。 一人じゃ、この先寂しいでしょうが。」

 

「それは…。 自分が寂しいからって結婚するとか。 相手に失礼だよ、」

 

葦切は苦笑いをした。

 

「親は。 子供がいくつになっでも。 心配なんだよ、」

 

つぶやくように言う母に少し胸が痛んだ。

 

この年になって離婚をした息子をまだ心配している。

 

そしてやっぱりさくらのことが頭に浮かんでしまった。

 

海沿いの道を走ると

 

日が傾いていて、海がオレンジ色に染まっていた。

 

この夕日が好きで

 

子供のころからよくよりみちをして帰った。

 

色々なことが同時に頭に浮かんでは消え。

 

浮かんでは消え。

 

少しの間実家に残ることになった葦切。やはりさくらのことが脳裏に浮かび…

 

 

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