Penny Lane(15) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

あたしがこんなんでどうする!

 

あーー、もう!

 

さくらはぶんぶんと頭を振った。

 

「どしたの?」

 

隣にいた南がコソっと耳打ちした。

 

「なんでもない、」

 

さくらはふっきるように前を見た。

 

そして奏の番がやってきた。

 

「ほら、あのCMの、」

 

後ろの席からささやき声が聞こえた。

 

少しずつ奏はこの世界で認知されつつあった。

 

椅子を調節してすっと腰を下ろすと

 

「まだ15歳なんですって。 すっごく雰囲気あるわよね、」

 

同じ人だろうか、そんなことも言っていた。

 

ホント。

 

ひいき目なしに奏がピアノを引く姿は本当に絵になる。

 

もうその場の気配を一点に集中させる力がある。

 

そして

 

奏が鍵盤に指を下ろした。

 

スッと伸びた背筋と長い腕。

 

教え始めた頃は表現の部分でまだまだだったけど

 

あのCM撮影以来、意識しているのか時折ふっとどこを見ているのかわからないような表情をする。

 

音以外の何かに支配されているように。

 

奏の噂をしていた後ろの席の女性たちから

 

ため息が漏れるのが聴こえる。

 

腱鞘炎で最後の1週間はあまり弾きこむことができなかったけれど、そんなことを微塵とも感じさせないピアノだった。

 

課題曲のショパン マズルカOp63-1

 

が終わり、続けて自由曲の

 

シューベルト即興曲集 第3番変ロ長調。

 

あまり不得意なジャンルがなくて、古典・ロマン・現代となんでもこなす。

 

仙台国際で弾いたベートーヴェンのような激しい曲調も良かったけれど、シューベルトのような哀愁を感じさせる曲調もいい。

 

スキルももちろんあるのだけれど、奏のピアノを弾く姿とトータルで見るとさらに雰囲気が増す。

 

さくらは方肘をつくように微塵とも動かず奏を見つめていた。

 

途中、一か所だけミスタッチがあった。

 

でも、全く知らん顔でそのまま引き続ける奏にふと笑みがこぼれる。

 

 

彼と一緒に聴きたかった

 

 

そしてまた葦切のことを思い出す。

 

ねえ、すごいでしょ。

 

奏は。

 

隣に彼がいるかのように

 

心でつぶやいた。

 

 

 

 

「まだ当分集中治療室になるだろうけど。 さっき声かけたら反応もあるし、ヤマは越えたでしょうって。」

 

休憩室でスマホを手にしていた葦切に義姉がやってきてそう言った。

 

「あ、うん。 よがった。 うん、」

 

少しだけ笑ってスマホをポケットにしまった。

 

「仕事あるんでしょ。 もう東京に戻ったら?」

 

「母さんは、だいじょぶだろうか。」

 

母が動揺してしまった様子だったので心配だった。

 

「もう家に帰らせて寝かせるから。 お義父さんの経過も知らせるし。 だいじょぶだいじょぶ。」

 

義姉は葦切の背中をぽんと叩いた。

 

奏の成長にさくらは思いもひとしおですが、やはり葦切のことが気になって…

 

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