Long way to go(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

ふっと顔をあげた時、ドアのガラスの向こうにいた奏に気付いた。

 

「おっと。 盗み見なんかして、」

 

マリーは口をとがらせた。

 

「盗み見じゃないよ。 あんまりうまいから。」

 

「ピアコン。 ダメだったんだって?」

 

「うん、」

 

「でも。 奏はきっとこれからもうひとつ上のステージに行く人だね、」

 

マリーはピアノの蓋をそっと閉じた。

 

「え?」

 

「あたし。 ここんとこずっとピアノやる気起きなくて。 レッスンは行ってても、これ以上やってどうなるのかなっていつも思ってた、」

 

そして少し寂しそうに言った。

 

 

 

「たぶん、ウジウジ考えてて家にいつかなかったり。 そういうことがあったからだと思う、」

 

マリーは立ち上がった。

 

「そろそろ。 家に帰ろうかなって、」

 

奏は少しハッとした顔をした。

 

「結局、あたしはクリスティーナやパパに甘えてただけ。 あたしのわがまま聞いてくれるって、そう思ってただけ。 もっとピアノ一生懸命やろうかな。 奏見てたら。 ちょっと負けたくないかなって、」

 

マリーはいたずらっぽく笑った。

 

「マリー、」

 

「パパは赤ちゃんだったあたしを一生懸命ひとりで育ててくれたの。 今、柊のめんどう見たりするでしょ? もう、しゃべれないから何が言いたいのかどうしたいのか全然わかんなくて、泣きわめいたりして。 ちっちゃい子育てるのってホント大変なんだなーって。 もちろんおばあちゃんも助けてくれたけど、パパはどんなに忙しくても学校の音楽会やリクレーションにも来てくれて。 あたしのためにたくさんのこと犠牲にしてきたと思うの、」

 

奏は自分の母のことを思う。

 

「そんなパパが。 幸せにならなかったら、ウソだと思う。 カタリナと結婚しなかったからって・・そんなのあたしが決めることじゃないし。 パパがクリスティーナを本当に愛して、一緒に生きたいって思うのだったら・・。 あたしが反対する理由はない。 冷静に考えればそんなことすぐわかるのに。 バカみたい、」

 

「ぼくは。 お母さんが結婚するって聞いた時は嬉しかったよ。」

 

奏はふと微笑んだ。

 

「え? ほんと?」

 

「あー、これでお母さんが苦労をしなくてすむって思ったから。 いや、ぼくの荷が下りたことでホッとしたのかもしれない。 お母さんを取られたとか、全然思わなかった。 心から良かったなって思えた。 お母さんがぼくのためだけに生きなくてすむから、」

 

「奏、」

 

「子供のためだけに親が生きるのは。 少しつらいよ。 お互いに。」

 

マリーはそれにニヤっと笑って、奏の肩を小突いた。

 

「あんた。 憎らしいねえ、 ほんとに。」

 

「はあ?」

 

「でも。 ありがと。」

 

そう言ってマリーは奏にハグをして、かるーく唇にキスをした。

 

「わっ…」

 

いきなりのことに驚いて引いてしまった。

 

「なんだよ。 キスくらい、」

 

マリーは口をとがらせた。

 

「日本人は! こんなに簡単にキスしない!」

 

慌てる奏がおかしくてマリーはケラケラと笑った。

 

マリーも父と継母との関係を冷静に考えられるようになりました…

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