Long way to go(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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その時。

 

「・・今。 家?」

 

奏は怪訝な表情をした。

 

「は?」

 

「今・・そっち5時くらい? もう部活終わったの?」

 

ドキっとした。

 

ひなたの背景が見慣れない場所であることに気付いた。

 

「えーっと・・。 い、今。 部活終わったとこ。 学校、」

 

とっさにまたウソをついた。

 

「・・そう。 先生に怒られない?」

 

「だいじょぶ。 うん、じゃあね。 頑張ってね、」

 

ひなたは慌てて電話を切った。

 

 

『リハビリにおいでの患者さまへ』

 

彼女の背景にそんなポスターが貼ってあったのを奏は見逃さなかった。

 

学校…

 

彼女の様子も少し不審で気になった。

 

何かがおかしい、と思っても

 

まさかひなたが大けがをして手術までしたとは予想だにせず。

 

奏は午後の授業に向けて辞書を開いて勉強をし始めた。

 

 

 

 

「そう。 残念だったね。」

 

さくらは電話で報告を受けた。

 

「でも。 弾いた後。 先生たちの前で言ったんです。 『Bitte wählen Sie mich』って。」

 

「ん?なに?」

 

「『僕を選んでください』って。」

 

「あんた。 度胸ついたねえ、」

 

さくらは思わず笑ってしまった。

 

「すごくいい経験になりました。 ピアノソロもモーツアルトを、と言われています。 この前弾いた8番にしようかって、」

 

奏の声は生き生きとしていた。

 

「うん。 そうだね。」

 

「あー、ぼくもピアコンをやってみたいなって初めて思いました。」

 

「もっともっとスキルを磨かなくちゃね。 オケに負けないように、」

 

「・・ここでもやっぱり日本人や東洋人が差別されてるなって感じることがあって。」

 

「え、」

 

「ピアコンに選ばれるのはいつも欧米人だって言われてたらしいです。今回も。 ドイツから来ていた人でした。 でも。 今日、先生から褒められた時、なんかそういうのも全部壁が取っ払われたようで。 実力さえあれば人種なんか関係ない。 きっと認めてもらえるって自信になりました、」

 

「アメリカでもね。 今だってそういうことはあるわよ。 かたくなに差別をする人もいるしね。 でも。 音楽ってそういうの越えるから。 誰が聴いてもいいものはいい。 奏は自分でその壁をひとつ越えたんだね、」

 

さくらは優しくそう言った。

 

「・・ぼくが弾いている時の空気がいいって言われました。 トータルで見ていてくれた、と思ったら。 それも嬉しくて。」

 

奏の良さをわかってくれる人がいた、と思うとさくらも感無量だった。

 

自分が奏に対して感じていた『空気』は間違いじゃなかった、と嬉しさがわき上がる。

 

 

 

学校から戻ってからずっとマリーの姿がなかった。

 

「マリーはどこかに行ったんですか?」

 

絵梨沙に聞いた。

 

「ああ。 ずっと竜生の部屋のピアノ弾いてる。」

 

彼女はふと笑った。

 

「ピアノ・・?」

 

正直、ここに来てマリーがピアノを弾いている所は見たことがなかった。

 

地下のピアノ室のほかに竜生の部屋にアップライトのピアノがある。

 

そっとそこを覗くと彼女が懸命にピアノを弾く姿が見えた。

 

そんなにピアノに懸命になれない風でもあったのに、そのまなざしは真剣そのもので。

 

シューマン、ピアノソナタ3番・・

 

いつもふざけてばかりの彼女と全く別人のようだった。

 

・・巧い。

 

奏は息をのんだ。

 

奏は自分でひとつ階段を上ることができました。一方、マリーは…

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