実は電話で話をしたのももう1週間前くらいだった。
LINEが来たのも確か3日前が最後。
ひなたもそうやって毎日が忙しく
奏もコンクールが近づいて、北都邸に戻っても寝るまで地下の練習場に籠っていた。
たまにふっと
逢いたいな
と思うことはあるけど、それを叶える術さえ思いつかないほど忙しかった。
それでも
前は学校に行けば会えた。
ちゃんと勉強理解できてるかな
数学もちゃんとやっているかな
今でもつい彼女の勉強のことを心配してしまう。
こういう時に
離れてしまったんだな
と思う。
入学して1か月半経って、ひなたはいつものようにすぐに友達もできて、クラスメイトや部活の先輩ともすぐに仲良くなった。
「へー。 ひなたんちって浅草なんだー。」
「うん。 おじいちゃんの前の前の代からずーっと浅草なんだって。 浅草寺まで歩いて10分くらい。」
「すごいねー。 下町育ちなんだー。 なんか羨ましー、」
そんな会話をお弁当を食べながら友人たちと交わしていた。
そこに。
「浅草は下町じゃねえって、」
前の席ででっかい弁当箱を平らげてその上菓子パンを貪り食う男子から横やりが入った。
「は?」
ひなたは思わず振り返った。
「浅草は。 下町じゃ、ねえよ。」
彼はそう言って、フンといった表情を見せた。
「下町じゃん。 テレビでもよく言ってるし、」
友人の玲那が口を尖らせて反論すると
「下町って意味知ってっか?」
彼は大きな口を開けてホットドッグを一気に食べた。
「え・・意味って。」
そう言われるとうまいこと説明できない。
「・・昔ながらの。 風景が残ってる・・粋なところ・・みたいな。」
玲那はおぼろげなイメージを言う。
「江戸城の城下町ってこと。 浅草はそっから外れた庶民が住んでたところだよ。」
彼は手についたパンくずを払った。
「庶民て、」
ひなたはムッとした。
彼は鞄から地図帳を出した。
そして東京の部分を広げ、
「ここが。 皇居だろ? 昔の江戸城があったとこ。 んで、その周りにはお武家さんたちのお屋敷があって。 その外側に職人や商人の町があった。 ま・・・ここまでが下町だな、」
彼はぐるっと指で指示した。
「つまり。 現代で言うところの『下町』は。 『DownTown』の意味。『Up Town』の対極に来る意味だな、」
「だうんたうん・・・???」
ひなたにはイマイチ理解ができなかった。
奏の心配をよそにひなたは新しいクラスメイト達と…
奏の登場はこのへんから→★
奏が北都家に下宿するいきさつからさくらとの出会いはこのへんから→★
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『My sweet home~恋のカタチ。1 』 --peach blossom--
『My sweet home~恋のカタチ。2』 --bitter green--
夏希と高宮の初期の頃のおはなしを再掲させていただいています。 よろしかったらどうぞ。