そんな『事件』もありながら。
「あー、いい天気だね~。 ほんと秋の空だよ、」
ゆうこの母は空を見上げた。
志藤とゆうこは結婚式と披露宴の日を迎えた。
ゆうこの父の希望で浅草の神社で神前で執り行うことになっており、ゆうこが仕度をしている間ひなたは母の手に抱かれていた。
「ひなた、こっちこい。」
ゆうこの父が奪うようにひなたを抱っこした。
「ちょっと落とさないでよ、」
「落としたりなんかするか! な~~~、」
実際。
あの鬼のような父が
ひなたが生まれてからというものの。
毎日のように用もないのにゆうこのところを訪れ、ひとしきり孫を抱っこして帰ってくるという日が続いた。
「あ、笑った! おれがわかるんだな~~~、」
そんな父に
「絵に描いたようなジジバカだな・・・」
ゆうこの兄二人はつぶやいた。
「ゆうこ~~~。 おめでと~!」
南と真太郎がやって来た。
「あ・・・南さん・・。 真太郎さんも。」
白無垢姿のゆうこは笑顔で二人を迎えた。
「もー・・・。 めっちゃキレイ! ゆうこは着物がすっごく似合うし。」
彼女の美しさに感動して南はゆうこの手を取った。
「え・・そーですか?」
はにかむ彼女に
「ほんまに! ね、真太郎!」
南は真太郎に同意を求めた。
真太郎は
なんだか
胸がいっぱいになってしまう。
「・・ええ。 とても・・」
笑顔で頷いた。
ゆうこもそんな真太郎の笑顔にこれまでのことを思い出してしまった。
「・・ありがとう、ございます。」
やっぱり胸がいっぱいだった。
そこに紋付姿の志藤がやって来た。
「あ、志藤ちゃん! 見て! ゆうこ、めっちゃキレイ!」
南が彼の手を引っ張る。
「あ~・・・。 ウン。」
照れて彼女を正視できない彼にゆうこはクスっと笑った。
「志藤さんもお似合いですよ。」
真太郎に言われて
「え・・なんか・・おれが紋付を着ることになるとは想像もつかなかったけど・・・」
どうも落ち着かないようだった。
「ま、どっちにしろ。 この手じゃね~~~、」
南はふざけて彼のギプスの左手を掴んで掲げた。
「うるさいて!」
その場が笑いに包まれた。
そして。 ようやく・・ようやく二人の結婚式となりました(*^▽^*)
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