「へ・・・・」
ゆうこはネクタイを締める手を緩めた。
「す、すみません! 志藤さんの奥さま、ですか?」
「・・・・・」
ゆうこは息を切らせて彼女を見た。
「あたし・・・ここの医務室に勤務しています・・・西森怜子、と申します。」
名乗られて、思わず呆然と会釈をしてしまった。
「本当にあたしが誤解されるようなことを・・・・。 申し訳ありませんでした、」
怜子から全ての事情を聞いて、ゆうこは落ち着きを取り戻し
「いっ・・・いえ! あの・・・こちらこそ・・・お世話になったのに、」
もう顔から火が出そうなほど恥ずかしくて謝り倒した。
「あたしも志藤さんの言葉に甘えてしまって。 本当に・・・すみませんでした。 それに・・・指輪のことも、」
怜子はゆうこをしっかりと見た。
「指輪・・・?」
「医務室にいらした時から志藤さんの薬指は腫れかけていて。 すぐに指輪を外すように言うべきでした。 そうしなかったために大事な指輪を切ることになってしまって・・・。 奥さまがどんなにか落胆されただろうって、すごく気になって・・・・。」
「あー・・・」
あのひしゃげた指輪を思い出した。
「まだご結婚されたばかりで。 しかももうすぐ結婚式だというのに。 もう・・・あたしも申し訳ない限りで、」
彼女の責任ではないのにこんなに必死に謝られて
「・・いえ・・・。 運が悪かったんだと、思います。 先生が気にされることでは。 返って申し訳ないです、」
ゆうこは恐縮した。
「・・んで。 いろいろ・・お世話になったから・・・。 おれたちの披露宴の二次会にも来てもらって、みんなに紹介しようかって思って、」
志藤はさっき彼女に渡した封筒のことを説明した。
「そう・・だったんですか・・・・。 あ~~~~、ほんっとすみません!! お恥ずかしいところを!!」
穴があったら入りたかった。
「ほんま。殺されるかと思った・・・・」
その後、ロビーのカフェで志藤とゆうこはお茶を飲んだ。
「・・だって・・・」
所在無いようにうつむく彼女に
「しっかし。 レシート一枚でそこまで探るとはな~~~。 女ってスゴいな、」
志藤はおかしくなって笑ってしまった。
「・・・細かい所まで見てしまうのは・・・職業病です、」
赤くなってふくれた。
「ん。 でも。 そんなにヤキモチ妬いてくれて、嬉しかったで。」
そんな彼女がかわいくて頬づえをついてふっと笑った。
「え・・・」
ゆうこは上目遣いに彼を見た。
なんとか誤解は解けましたが・・・・
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