6月に産休に入ってから、会社に初めてやってきた。
どうせ行くなら、と事業部や秘書課のみんなにとお菓子を買ってきた。
もちろん北都社長にも・・
「ほんま、悪いな~~。 あたしたちにもこんな。 ゆうこはほんまに気が利くし、」
事業部に来てお菓子を手渡すと南は喜んで迎えてくれた。
「いえ。 ほんと。 新しい部署になってずっと気になってて。 一度ごあいさつにもって思ってたんです。」
「そんなんいいって。 あ、志藤ちゃんね。 今、ちょっと出かけてる。 そのうち帰ってくると思うから待ってたら?」
「あ、いえ。 これを渡してくださればいいので。」
と、南に封筒を差し出した。
「珍しいですね~~。 志藤さんが忘れ物、なんて。」
泉川も笑った。
「ほんま。 いつもきっちーっとしてるのにな、」
「でも頼りになる奥さんがいるようになって、ちょっと抜けてきちゃったんじゃない?」
香織もクスっと笑った。
「・・佐屋さんも。 泉川さんも・・これからどうぞよろしくお願いします。 ・・仕事に関しては・・・すごく厳しい人だとは思うんですけど。 また管理職ともなると、至らない部分もあるかもしれませんし、」
ゆうこは二人に頭を下げた。
「いえいえ。 こちらこそ。 毎日志藤さんの仕事ぶりには勉強させられてるから。 ほんと『社長秘書』がついててくれてんだもんね。 家のことは安心だよね。 うらやまし~、」
泉川はいつもの軽い調子で言った。
少しだけみんなと談笑した後、
「じゃあ、あたしこれで。 母にひなたを預けてるから・・・」
ゆうこはバッグを手にした。
「うん。 また遊びに行くね、」
南は手を振った。
お菓子の入っていた紙袋が邪魔になったので、通りすがりの給湯室のゴミ箱に処分していこうと入っていった。
志藤はエレベーターを降りた所で、それに乗ろうとした怜子に出くわした。
「あ、レイコ先生!」
「志藤さん・・」
ゆうこはゴミを捨てた後エレベーターホールに向かうが・・・
「この階に用なんて・・どーしたの?」
志藤が言うと
「総務課に用事があって。」
怜子は微笑んだ。
え・・・・
ゆうこは二人の姿が目に入り思わず角に隠れた。
「あ・・それより。 この前はごちそうさまでした。 ほんと・・・おいしいお店でした。 ありがとうございました、」
怜子は志藤に頭を下げる。
「いやいや。 あそこのイタリアンはそんなに高くないけどめっちゃ美味しいって評判なトコですから。 あんなんでよければ、もういつでも・・・」
嫌でも二人の会話が耳に入る。
いや
二人の声をなんとか聞こうとがんばっている自分にゆうこは気づいていた。
「あ、そーだ。 レイコ先生に・・・これを、」
志藤は自分たちの披露宴の二次会の招待カードを封筒に入れたものを彼女に手渡した。
「え・・・?」
やっぱり!
この前のレストランはあの人と???
って!
何渡してんのかしら!
もう平静ではいられなくなっていた・・・
もう絵に描いたような展開になっちゃって・・・・
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