「このスーツ。 もうそろそろクリーニングに出しておいた方がいいですね。」
翌朝、寝室のクローゼットにしまう前にゆうこは言った。
「ああ、うん。 お願い。 あ、今日は早く帰れると思うから。」
志藤はベビーベッドで機嫌よく手を動かすひなたの頭をそっと撫でて笑顔で言った。
「じゃあ・・・鍋でもしようかな。 あったかいし、」
忙しくてほとんどきちんとした時間に夕食が採れない彼だったが
たまに早く帰れるとすごく嬉しい。
恋愛っていえる時間もなかった二人は
一緒にゴハンを食べる
という何気ないことさえ嬉しく思えて。
「ひなた~、行ってくるな~、」
そっと愛娘のオデコにキスをした。
ゆうこは買い物のついでにクリーニング屋に寄ろうと、さっきのスーツのボタンを確かめたりポケットの中を確認したりしていた。
「・・あれ?」
いつも帰ってくるとポケットの中も全部スーツから出す志藤にしては珍しく
紙切れが入っていた。
何気なくそれを開くと
レストランのレシートだった。
ここ
会社の近所の・・・イタリアンのお店だ。
いつも会社の友人たちとランチに出かけたりしている所だった。
食事の明細が書かれる中
ん・・???
思わずその刻印された日時に目が行った。
昨日の・・夜9時半・・・。
そして自然に
『2名』
と印字された文字が目に入る。
昨日は・・
外出先から食事を済ませて直帰するって電話で。
事業部の誰かとかしら。
レシートに書かれたそのメニューに目を移す。
食事のメニューが並ぶ中、最後に
レアチーズクリームタルト 1つ
と
キャラメルフレーバーのカプチーノ。
思わずレシートを握る手に力が入った・・・。
志藤、痛恨のミスか!? 鋭いゆうこは1枚のレシートからどんどん志藤の怪しい行動を暴いていきます・・・
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