「え・・・」
怜子の反応が自分が想像していなかったものだったので志藤は少し驚いた。
「・・女性にとって。 妊娠って劇的なことですから。 思いもかけない妊娠であったら・・・それはもっともっとすごい現実で。 お二人は愛し合っておられたんでしょうが、やっぱり戸惑いや悩みはたくさんあったんじゃないかって、」
美しい笑顔でそう言った。
そう
ゆうこをたくさん泣かせてしまった。
志藤はあの時のことを思い出した。
「すみません、出すぎたことを、」
黙ってしまった志藤を見て怜子はハッとした。
「いえ。 その通りでしたから。 ぼくは彼女の人生をも変えてしまった。 いや彼女の家族に対しても。 そのことだけは一生忘れないで生きて行こうと決めましたから、」
志藤も優しい笑顔でそう言った。
そして
「あの、良かったら。 ぼくらの結婚式の二次会に少しだけでもいらしていただけませんか。 事業部のみんなやウチのヨメにもぜひ先生を紹介したいし、」
志藤はぱっと明るい顔になり言った。
「え・・・でも、」
「大丈夫です。 みんな気心が知れている人間ばかりですから。 『レイコ先生』だってホクトの社員みたいなもんじゃないですか、」
いきなり
『レイコ先生』なんて言われて
「・・・あ、あたしは・・・部外者ですから、」
少し戸惑って遠慮しようとした。
「いえ。 ぜひに。 また詳細は会社でお伝えします。 ホント、ぜひ来てください。 ウチの社にこんなに素敵な先生がいらしてくれたんですから。」
不思議な彼の笑顔に
怜子は身体の力が抜けていくような感覚に包まれた。
「おかえりなさい。 もう夜は寒くなってきましたね~。」
ゆうこに笑顔で迎えられて
少しだけ胸が痛んだけど。
「ただいま~。 ほんまウチ帰ってくるとホッとするし、」
ゆうこに抱かれたひなたの頭を撫でた。
よこしまな気持ちがちょっぴりあったにせよ
あの
天使のような怜子のその人柄の良さが
本当に心地よく
そっちの方に気持ちがいっていて
これから起こる『嵐』なんて
この時の志藤は予想さえつかなかったのだが。
怜子の人柄に志藤は癒されます。 ・・・が。 嵐の予感???
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