なんじゃ、こいつ。
いきなり・・
志藤は眉間に皺を寄せたが
彼が何かに迷っているような悩んでいるような
そんな気がしたので
「・・女って。 わがままやんか、」
ワインに少し口をつけて落ち着いて言った。
「え、」
泉川は彼を見た。
「優しい人が好き~って言っておきながら、優しすぎると『物足りない』って言うし。 ガンガン引っ張っていってくれる人が好き~って言っておきながら、それだって自分の思うようにいかなくなると離れていくし。 んじゃあいったいどないしたらええねん!って。」
するといきなり彼は目を輝かせて
「そう! そーなんですよ! ホント女ってわかんないですよね!」
非常に感銘を受けてしまったようで張り切ってそう言われた。
「だから。 そんな女に合わせていくのって面倒やんか。 そーすっと、自分についてこれへん女にはそこでバイバイやし。 とりあえず性的処理すんならテキトーにナンパしてればいいし、」
灰皿にタバコの灰を落とした。
「やっぱ志藤さんだよな~~~。 そう言ってくれると思いましたよ、」
彼は満足そうにウンウンとうなずく。
婚約者に死なれてからは
もう女を愛することが億劫で
いや
本気でイヤになり。
客観的にしか見れなくなった。
ひとりの『人間』としてではなく
自分が自由にできる『人形』くらいにしか思えなかった。
「でも。 『彼女』はそやなかった。」
志藤はタバコの吸殻を灰皿に押し付けた。
「・・白川さんのことですか?」
「女性のかわいさとか愛らしさとか、健気さとか、奥ゆかしさとか。 全てを持ってる子で。 あったかくてホッとできて。 あ~~~、これが『愛』やって。 心からそう思えた。 わがままなんか・・・いや自分のことは二の次で人の気持ちも思いやれる子やったし。 あ、こんな子っておるんやって。 めっちゃ目が覚めたってゆーか。 おれのがわがままやから。 自分のものにしたいって思ったら、絶対に手に入れたいって、」
志藤はふっと笑った。
泉川は彼の話をジッと聞き
「は~~~~~~。 カッコいいなァ・・・・。」
大きなため息をついて額に手をやった。
「あ?」
「羨ましいです。 ほんっと。 そーやって遊び倒しておきながら、そんないい奥さんゲットできて!」
まった・・・
そーやってサラっと失礼な事を平気で言うし。
志藤は少し呆れたあと、何だかおかしくなって堪えるように笑ってしまった。
「頑張りますよ! おれ。 絶対に最高の女手に入れますから! 今までの女はおれの良さがわかんなかったんだ! この世には絶対におれじゃなきゃって女がいるはずですからね!」
・・・めっちゃポジティブシンキング・・・
また笑ってしまった。
ものすごいアゲ思考の泉川に志藤は呆れて・・・
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