「ほんと。 社長秘書の白川さんなんて意外以外のなにものでもなかったですよね~~~。 だって大阪時代の志藤さんの噂って、めっちゃくちゃみたいだし、」
一転しておかしそうに笑い出した。
「おれのことはええねん!」
腹立たしくなり思わず声を荒げた。
「白川さんってかわいいコでしたけど。 ガードめっちゃ固いって評判でしたからね。 大和撫子を絵に描いたようなコだったし、おしとやかで清楚で。 社内でも狙ってた男、いっぱいいたと思うんですけど、なにしろ社長のお気に入りでしたから。 迂闊に手え出せないってみんな遠巻きにしてましたから。 そこをね~~~、いきなり大阪から来て、『妊娠』、『結婚』ですから。 勇気ありますよね~~。 びっくりしましたよ~~~。」
・・そんなふうに思われていたのか・・・
志藤はなんだか落ち込んだ。
「・・大阪でのことは。 もう忘れてしまいたいと思ってる。 とにかく・・・彼女のことを思いはじめてからは・・・彼女だけでいいって思ったし。 確かに妊娠は意外だったけど、」
悔しいけど本音を言ってしまった。
「ま、でも。 神様もここらで年貢を納めろって言いたかったってことですよ。」
その妙な上から目線も腹立たしいが。
「おれは。 もっともっとたくさんの女の子とつきあって。 そうしてく中で一生を掛けて愛せる人を探したい。 そんだけです、」
『あなたは自分のことしか考えてないもの、』
彼女の言葉が蘇る。
『・・・いつだって一番大事なのは自分で自分が一番愛しくて。 セックスだって自分ばっかりだし。』
まさかセックスのことまでダメ出しされるとは思わずに
本当はめちゃくちゃ落ち込んだ。
『ヘタクソ』
って言われたようなモンだし。
ホントは
女の子と別れるときは
相手からサヨナラされることのが圧倒的に多かった。
みんな同じことを言う。
『自分ばっかり』
って。
ぼーっと赤く浮かび上がる東京タワーを見つめた。
「女って。 いったい何が欲しいんでしょーかね、」
ポツリとそう言った。
「は・・・?」
「高価なプレゼント? それとも・・・優しさ? 高級ディナー? セックスの満足度?」
少し酔ってきたのか
泉川はまるでひとり言のようにつぶやいた。
実はけっこう傷ついちゃってる泉川です・・・
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