Daybreak(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

北都フィルは発足当時から


若く瑞々しい、生き生きとしたクラシック音楽を目指してきた。



それは今も受け継がれ


単なるクラシックのコンサートではなく、セットやライティングもまるでポップスのコンサートのように観客を飽きさせない。



玉田はいつもの公演と


今回のコンサートは思い入れが違っていた。




傍から見ると当たり前のようにしている



『音を合わせる』



ということが、本当に難しくて大変なことはもちろんわかっている。



オーケストラはこれだけの人間が奏でる楽器の音をひとつの新しい音にする。



一度は壊れそうになったその『音』が


今はひとつになっている。




気難しかった麗子も


あの一件からウソみたく素直に自分や澤田の言うことを訊くようになった。



自分の気持ちをしまいこんで、オケに賭けてくれているのが痛いほどわかって


彼女に感謝したい気持ちでいっぱいだった。




自分の背中をトントンと叩かれた気がして振り返る。


妻の里香だった。



「・・・よかったね。」



里香は演奏家から身を引いたあとは、志藤の紹介でクラシック専門誌の仕事をしている。


関係者のネックストラップをした彼女は舞台袖までやってきた。



「・・うん、」



玉田は小さな声で頷いたあと、やっぱり涙が出てきてしまった。



「もう。 すぐ泣くから、」


里香はコソっと言って笑ってハンカチを手渡した。



詳しいことは話してくれなかったけど


彼がオケの正式な責任者になって、たくさん悩んで大変な思いをしていることはわかっていた。


いつもよりも疲れた表情で家に帰ってくることが多くなり


娘の香音が起きている時間には帰れなくなり



それでも黙って何かを一生懸命に堪えるように頑張っていることが痛いほどわかって。



いつもニコニコして、優しくて。


つきあいはじめてから、ケンカなんか一度もなく


わがままを言って困らせても、絶対に怒ったりしなくて。




里香はそっと玉田の手をとった。




ほんと


よかった・・・・。





アンコールの『ハンガリー狂詩曲』を終えると、大きな拍手が巻き起こった。




玉田も夢中で拍手をした。



すると頭にズンと何かが乗ってきた。



「な・・・」


振り返ると真尋が大きな手で頭をひっつかんでいる。


「ま、真尋さん!」


「よかったじゃーん。 うん、よかった! タマちゃん、おめでと!」


いつものように豪快に笑った。


また明日から八神とウイーンに戻る彼はこっそりやってきていた。



「・・真尋さん、」


胸が熱くなった。



「あ、おれ出てかなくてもいい? 気ィきかせて来てみたんだけど?」


それもいつもの調子だったので、玉田も涙を忘れて里香と目を合わせて笑ってしまった。



もう拍手がいつまでも心地よくて。



玉田はふわふわと天にも昇っていくような気持ちだった。




タマちゃん、頑張りました。 みんなが応援していてくれます。(‐^▽^‐)


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