Rainy blue(1) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

初めてのコンサートを終えた茜には


公演のオファーがいくつかやって来た。



「うん、予想以上だな。」


斯波もいつもの怖い顔を緩めながら玉田に言った。



「ほんと。 昨日の彼女は素晴らしかったので。」


玉田は微笑んだ。



「暮の定期公演は千堂茜のヴァイオリンコンチェルトでもやってみるか、」


自分の願望を斯波が口にしてくれたので、玉田はぱあっと明るい顔になり


「はい、」


と、嬉しそうに頷いた。




そんな事業部とはうらはらに。



茜は浮かない顔だった。



「もう! 何ボーっとしてるの? 出だしちょっと遅れたわよ。」


定期公演の練習中、コンミスの麗子からダメだしをされてしまった。



「す・・すみません、」


「いくら忙しいからってねえ、オケの方をいいかげんにやってもらったら困るわよ、」


麗子の厳しい言葉に茜はまた


「すみません、」


と謝った。




「厳しいよな~。 麗子さん。 ほんと敵意むき出しって感じでさあ、」


「そりゃおもしろくないって。 いちおう彼女はセカンドだし。 それなのにあんなに公演が評判になっちゃさあ、」


「麗子さんも腕は確かだけど。 けっこうヒステリーだし、」



楽団員たちは麗子が茜をやっかんでつらく当たっていると噂をしていた。




「いえ、ここはバンと盛り上げたいところですから。」


「でも、ここを控えめにすることによって次のフレーズが生きるんじゃないのかな、」


「澤田さんは私の意見に賛同して下さっています。 いくら玉田さんでもそこまで口出ししてもらうのは・・迷惑です。」




麗子は玉田との打ち合わせでも

臆すことなく自分の意見をバンバン言った。




元々、優しい性格の玉田は頭ごなしに言うのが苦手で

自分がこうした方がいいと思うことも、強引に押し切られると引っ込めてしまう。



斯波が責任者をしていた時は、

その圧倒的な存在感と音楽に熟知した絶対の意見を持っていて。



楽団員はおろか、指揮者やプロデューサーも口出しはできなかった。



彼が退き、玉田がその後釜におさまると

今まで鬱屈していた気持ちを麗子はどんどんぶつけてきた。



結局

玉田はそれ以上は言うことができなかった。




麗子は自分を差し置いて、まだまだ新人の茜を売り出そうとしている事業部のやり方が気に入らなかった。



コンミスという地位を与えられながらも

不満が少しずつ少しずつ溜まってゆく。




「・・ほんと。 あたしの立場なんか全然考えてくれないんだから、」


麗子はカウンターに座りながら結城にそうこぼした。


「玉田さんは・・やさしいからねえ。」


結城はバーボンのロックを少し口にした。



「確かに玉田さんも元演奏家だし。 クラシックのこともすごく勉強はしてるけど。 いつも煮え切らないし。 楽曲を決める時も、斯波さんの時の3倍の時間はかかる。 プロデューサーの藤堂さんと指揮者の澤田さんの意見がぶつかっても仲裁できないし。」


麗子は玉田への不満を口にした。



「だから。 きみみたいにはっきりとものを言う人をコンマスにしたんじゃない?」


結城はちょと笑った。



「あ~~。 もうイヤになっちゃた。 ほんと・・。 海外に行きたい、」


麗子はふっとため息をついて宙を見た。



「だから。 やめとけって。」


結城はグラスをそっと置いた。


「なんでそんなに反対するの?」


麗子は彼の顔を覗き込んだ。



「きみは。 北都フィルの『華』だって言ったじゃない、」



頬づえをつきながら

優しい視線を彼女に送りながらそう言った。



のらりくらりと彼女の話をかわす結城でしたが・・・

このいい加減な対応が今後たいへんなことになっていきます・・



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