「私らしく、がんと歩む」ピンクリボンシンポジウム2018東京 | ポポ山に祈りを込めて

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(ピンクリボンシンポジウム講演会・2018有楽町朝日ホール  
乳がんの最新治療と心のケア パンフレットより)


「乳がん 敵を知り己を知らば百戦危うからず」


中村清吾先生  昭和大学医学部乳腺外科教授
日本乳癌学会監事


東京オリンピックが開催された1964年頃、乳がん罹患数は、欧米に比べて極めて少なく、人種差があるかの如く言われることもあった。

しかしながら、高度経済成長と共に食生活が豊かになると、乳がん罹患数は顕著に増加し、昨年は推定9万人/年と、女性の癌腫別罹患数のトップである。

わが国では、2004年に40歳からの2年に1回のマンモグラフィー検診が厚労省により推奨された。

しかしながら、検診受診率の低さが問題となり、2007年に40歳以降5歳刻みに、毎年マンモグラフィーの無料クーポンが配られることとなった。

これにより、乳がん検診受診率は徐々に増加したが、未だ政策目標とした50%に届いていない。

一方、先行してきた欧米では、乳腺が発達していて脂肪の少ない、いわゆる高濃度乳房では、小腫瘤を見逃す可能性が高いことが指摘され、国際的にはマンモグラフィー検診の開始年齢が40代後半から50歳代へと引き上げられる傾向にある。

また、遺伝性乳がん卵巣がんの原因となるBRCA1/2に病的異変を有するハイリスクの方は、一般の方に比べ、約10倍程度乳がんを発症しやすく、また10〜15歳若く発症することが知られており、高濃度乳房対策を兼ねて、25歳からのMRI検診が勧められている。

こうした中、2016年に、わが国よりJ-STARTという大規模臨床試験の結果が報告され、40歳代女性に対してマンモグラフィー検診に超音波検診を加えると約1.5倍の乳がんが見つかることが示された。

未だ死亡率減少効果は示されていないものの、欧米に比べ、高濃度乳房の占める割合が多いわが国において、超音波検査やMRIを検診手段として如何に取り入れていくかは、大変重要な課題となっている。

最後に、遺伝子レベルの臨床研究が急速に進歩し、がんの個性を正確に診断し、それに応じた薬剤選択や再発予防策を構ずることが可能となってきた。

「敵を知り己を知らば百戦危うからず」は、乳がんに対する戦略としても一脈相通ずる言葉である。

以上、
ピンクリボンシンポジウム2018東京パンフレットより

中村先生の講演の詳しいお話は後日記事にする予定です。