「虎に翼」 第29回
第６週「女の一念、岩をも通す？」
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昭和13年度、高等試験、
筆記試験当日となりました。
（おなかに手をあてた優三）
（回想）
寅子） 緊張したら、今の私
の顔、思い出してください。
優三） ハハハハ･･･。
（目を剥き、口は「ホ！」の形）
男性） 始め！
（黙々とペンを動かす、寅子、
よね、轟、中山、優三）
去っていった仲間と、
女子部の未来のため、
今年こそ、
必ず合格してみせる。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（帰宅する2人）
優三） 梅子さん、結局最後
まで来ませんでしたね。
はる） 遅い！
（封筒を突き出すはる）
それは、
梅子からの手紙でした。
手紙・梅子） 「トラちゃん、
心配かけてごめんなさい。試験
会場に行けなくてごめんなさい。
私、光三郞を連れて、家を出ま
した。夫に離婚届を渡されまし
た。若い女と再婚するそうです。
（回想）
梅子） 長男はもう無理かもしれ
ない。でもせめて、次男とこの
子は、絶対に夫のような人間に
したくないの。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（岩場でヤドカリを捕まえ、
梅子に見せる光三郞）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
手紙・梅子） 「もっと早くこう
すべきだった。そうすれば、長
男や次男も助けられたかもしれ
ない。自業自得です」。
（寅子の顔が歪む）
手紙・梅子） 「トラちゃんたち
ならば、立派な弁護士になれる
と信じています。どうか私のよ
うな立場の女性たちを、守って
あげてください」。
（廊下から、そっと見ているはる）
手紙・梅子） 「みんなによろし
くお伝えください。ごめんなさ
い。さようなら」。
（手で涙を払って、
勉強の準備をする寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
昭和十三（1938）年・九月
（届いた官報を広げる）
寅子） あった･･･あった。
あった？ あった？
優三） あっ！ あった！
寅子） あった！ あった！
あった！ あった！
優三） ありました！
直言） あった？ どこ･･･。
優三） これ。
はる） あ～！
寅子と優三、そして、
よね、轟、中山は、
筆記試験を通過しました。
おめでとう、万歳！
直言） よしやった！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
口述試験までは、1か月。昨年
筆記試験を通過した久保田も、
一緒に試験に臨みます。
よね） 破産宣告、または破産
債権者として、破産手続きに
参加しうる者を言う。
中山） よねさんは、もう少し
優しいお顔で答えた方がいい
んじゃないかしら？
よね） 必要なのは
法知識の正確さだ。
久保田） いや、意外と必要
なことかもしれない。
よね） はっ？
久保田） 尋ねられたんだ。
「今後、結婚の予定はある
のか」と。
寅子） はて？
久保田） その質問は、試験に
関係ないのでは？」と答えて
しまった。
（眉間に皺を寄せた寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
何か解せない。
去年の筆記試験の時も･･･。
寅子） 自信があったんです、
筆記試験。受けた5人全員が
かなりの手応えを感じてい
たはずなのに･･･。
桂場） まだそんな甘っちょ
ろいことを言っているのか。
寅子） 桂場さん･･･。
桂場） 同じ成績の男と女がい
れば、男を取る。それは至極
まっとうなことだ。かなりの
手応えなんて言っているうち
は受かりはしない！ 誰をも凌
駕する成績を残さなければな。
（とぼけた顔で去っていく桂場）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
優三） そろそろ、明日に
備えて寝ましょうか。
寅子） えっ、でも･･･。
優三） 疲れてる顔をしてるよ。
ここまで頑張ってきたんだ。
お互い、自分を、俺は、
自分の、胃腸を信じるよ。
フフッ。
寅子） おなか、痛くなら
ないといいですね。
優三） 緊張しても、トラちゃん
のあの顔を思い出して耐えるよ。
（笑い声）
寅子） じゃあ、また明日。
優三） また明日。
（優三の部屋を出る寅子）
（足が止まる）
寅子） うそ･･･何で？
優三） トラちゃん？
いつもより、６日も早く月経
がやって来てしまいました。
寅子） ありがとう。
優三） 会場まで、
僕が付き添いますから。
直言） あっ、頼むね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（口述試験の順番を待つ寅子）
（足首のツボを押す）
（そっと寅子を見る、
隣に並んだよね）
（どんよりした顔の寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（部屋に、３人の試験委員）
寅子） よろしく
お願いいたします。
（一礼し、勧められた
椅子に座る寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜猪爪家＞
（戸の開閉音）
（料理の手を止め、こっそり
玄関を見るはると花江）
（階段を上がる音）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（部屋に駆け込む寅子）
寅子） （泣）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（階段を下りる音）
（涙と共に、全てを出し切った
寅子が、シオシオと、台所へ）
はる） おなかすいたでしょ。
何か食べる？
寅子） うん。
具合は悪かったけれど、
やりきりました。
悔いはありません。
ありがとうございました。
（頭を下げる）
はる） うそおっしゃい。
きちんと家にお金を入れて、
自分で働いたお金で何をしよ
うと、私は何にも言いません
よ。また頑張りなさい。
寅子） うん。
（１人居間に座る寅子）
（どうしようもなく泣けてくる）
（台所で夕飯を作っているはる）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
昭和十三（1938）年・十一月
そして、一か月後。
（官報が届く）
寅子） あった。
猪爪寅子、合格。
（優三も目をこらす）
轟、中山、久保田も
見事合格。日本初の、
女性弁護士が誕生したのです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（開店前のカフェーで、
官報を見るよね）
（官報を押しのけ、
一点を見据える）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（寅子に微笑む優三）
優三） おめでとう、
トラちゃん。
（笑えない寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（直言とはるの前に優三）
優三） もう、これで
終わりにします。
直言） なぜだい？
来年は口述だけだろ？
せっかくここまで来たのに
やめるだなんてもったいな
いじゃないか。
はる） あなた、優三さんが
お決めになることよ。
優三） １回目の試験から、毎回
緊張で腹が痛くなり、頭も働か
ず、悔しい思いばかりしてきま
した。でも、今年は違った。
寅子さんのおかげです。
（畳に正座した寅子）
優三） 今年は寅子さんのおかげ
で勉強もはかどった。腹も下さ
ず、全力を出し切った。
（涙を堪え、真っ直ぐ
座っている寅子）
直言） やっぱり惜しいよ。
あとちょっとじゃないか。
ここまで来てやめるだなんて！
優三） ここが潮時です。
はる） そうですか。
長い間、ご苦労さまでした。
（頭を下げるはる）
はる） よくここまで、
頑張りましたね。
（優三に微笑む）
優三） ありがとうございます！
（涙を堪えるはる）
優三） トラちゃんのお祝い、
盛大にしましょう！
（涙を拭う直言）
直言） ああ。今日は、帰ったら、
パ～っとやろう。先に出るよ。
（玄関へ行く直言、続くはる）
優三） トラちゃんもそんな顔し
ないで！ すごいことを成し遂げ
たんだから。もっと喜ぼうよ！
ねっ！ トラちゃん。
（涙がこぼれそうな虎子）
寅子） うん。
（頑張って笑う寅子）
優三） 僕も、行ってきます。
働きながら、
１年間死ぬ気で勉強して、
友と別れ、月経の痛みも
乗り越えて、やっと勝ち
取った景色は･･･。
（笑顔の消えた寅子）
思っていたものと、
全然違っていました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
超簡単感想で♪
寅子！ そして久保田先輩、中山先輩、
轟君も合格おめでとう。よく頑張った！
残念ながら･･･優三とよねは不合格に。
厳しいね。今も昔も･･･現実は、厳しい。
それでも･･･とりあえず、おめでとう～。
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