「ブギウギ」 第121回
第25週「ズキズキするわ」
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タケシ） 許せない・・・。
ちょっとスズ子さん、
見てくださいよこれ。
（「女の決闘！ 福来スズ子対
水城アユミ」と書かれた記事」）
タケシ） 何が意地を見せるだ！ あの
鮫野郎！ 完全に見下しやがって！
スズ子） ええがな。
これがあの人のお仕事や。
面白おかしく書かなあかんのや。
大野） それにしても、決闘だなんて。
愛子） マミーも決闘するん？
スズ子） そやなあ・・・
まあ、決闘いうか・・・。
大野） 決闘なんかじゃありません！
タケシ） 出版社に圧力かけて、
あの野郎干してやりますか。
愛子） 負けたらあかんで。ホンマ
悔しいで。私まだ悔しいもん。
せやけど負けたら、私がマミーを
ぎょうさん励ましたるからな。
スズ子） ありがとうな。愛子にそう
言うてもらえるだけで、もう、負け
てもええわ。
タケシ） いやいやいや、負けないで
くださいよ。負けるわけないけど、
練習はしてるんですか？
スズ子） そらお稽古はしてます
がな。ワテは、はよ歌いたあて、
しゃあない気分や。
（でっかいメザシにかぶりつくスズ子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
昭和31年（1956） 大晦日
スズ子） ほな、行ってくるわな。
大野） 後で愛ちゃんと
見に行ぎますがら。
小田島） 私どもはここで留守番し
ながらテレビで拝見いたします。
一） チェッ！ 俺も行きたかったな。
三橋満男の歌、聴きたかったよ。
スズ子） ほなら、三橋さんの
サイン、もろてきてあげる。
一） 本当！？
やったぜこんちくしょう！
小田島） ありがとう！
タケシ） よし。いざ、出陣だ～！
（笑い声）
マミー） 頑張ってな。
負けたらあかんで。
スズ子） ありがとう。
マミー、楽しんでくるで！
スズ子） 行てきます！
愛子） 行ってらっしゃい！
大野） 行ってらっしゃい！
小田島） 行ってらっしゃい！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（楽屋でメイク）
スズ子） よろしくお願いします。
メイク） お願いします。
スズ子） 大変ですなあ。
大晦日もお仕事で。
メイク） それはスズ子さんも
同じじゃないですか。
スズ子） そらそうか。
（笑い声）
（ノック）
タケシ） はい、誰？
股野） 股野です。
スズ子） ああ、どうぞ！
股野） 失礼します。
スズ子） おはようさんです。
股野） おはようございます。
ちょっと、お礼を言わせて
もらいたくて。
スズ子） お礼？
股野） アユミ！
アユミ） おはようございます。
タケシ） 何？ 敵情視察ですか。
スズ子） ター坊！
どないしはったん？
アユミ） 福来先生、今日は、
「ラッパと娘」を歌わせて頂いて、
本当にありがとうございます。
心から感謝します。
（頭を下げるアユミ）
股野） ホンマにありがとうござい
ます。わがまま聞いてもらって。
スズ子） お礼やなんてよろしい
ですわ。ワテも、水城さんがど
んなふうに歌わはるかと思うと、
楽しみでしゃあないです。
頑張ってくださいね。
アユミ） ありがとうございます。
福来先生に負けないように、
精いっぱい歌います。
タケシ） ちょっと君、「負けない
ように」って何言ってんの？
人の歌勝手に歌っといて・・・！
スズ子） はい！
いっちょやったりましょね！
（小さく微笑むアユミ）
股野） ほならアユミ。
アユミ） 失礼します。
タケシ） フン！ 100年早いって
ことが分かりますよ！
スズ子） ええがな。お祭りやで。
楽しも！ほな、お願いします。
メイク） はい。
（鏡の前に座り直すスズ子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
木村・宮崎） 「第7回、
オールスター、男女、歌合戦」！
（拍手）
「オールスター男女歌合戦」は、
総勢30名の流行歌手が次々と
歌う、年末の一大イベントです。
（拍手）
（客席に、愛子と大野）
木村） 今年も間もなく終わろうとし
ていますが、ろくなことがなかった
という方は、たっぷりと歌を聴いて、
是非来年はいい年にしていただき
たいですね、宮崎さん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜スズ子の家＞
ﾃﾚﾋﾞ・宮崎） 「木村さんはろくなこと
がなかったんですか？ 私は大好き
な仰木彬選手のいる西鉄ライオン
ズが優勝して、最高の年でした！」
（テレビの前に、一と小田島）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜羽鳥家＞
ﾃﾚﾋﾞ・宮崎） 「今年よかった皆さんは、
来年、引き続きよい年になりますよ
うに、たくさんの名曲を聴いて、更に
景気づけましょう」。
ﾃﾚﾋﾞ・木村） 「それでは早速まいりま
しょう。トップバッターは、坂本としろ
うさん。歌は、『自転車行楽』です。
どうぞ！」。
（拍手）
（静かに画面を見つめる善一）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
流行歌手の歌唱が続き、番組も、
いよいよ佳境に入ってきました。
木村） いや～どうですか？
若手の有望株、三橋満男君。
僕は大スターになると思うな。
あのコブシ。
宮崎） 女性陣だって、次は若手の
ホープですわよ。日本歌謡界に
さっそうと現れた、期待の新星、
次代のエース、水城アユミさん
の登場です！
（拍手）
宮崎） 曲はなんと、
尊敬する福来スズ子さんの歌
から、「ラッパと娘」を歌います。
張り切ってどうぞ！
（拍手）
（舞台袖から見ているスズ子）
（アユミが真っ赤なドレスで登場）
アユミ） ♪「楽しいお方も
悲しいお方も 誰でも好きな
その歌は バドジズ デジドダー
トラムペット鳴らして
スイングだして あふれば
すてきに 愉快な甘いメロディ
ラゝゝゝゝゝ
ダドジパジドドダー
ドジダジ デジドダー
歌おうよ楽し この歌を
バドジズ デジドダー」
（男性ダンサーと激しく踊るアユミ）
アユミ） ♪「あの街でも この街でも
みんな歌うは みんな歌うは
この歌 この歌 すてきなこの歌
すてきなこの歌 バドダドジデジ
エジエジドダー バドダドジデジ
エジドダー バドダドジデジ
エジエジドダー バドバドジデジ
エジドダー バン バン バン バン
バンバンバンバン
バンバンバンバン ババババン
歌おうよ 歌おうよ 歌おうよ
歌おうよ バンジ バンジ バンジ
バンジ バンジ バンジ
バドダドダド ダドダド」
（拍手と大歓声）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（楽屋に戻るスズ子）
スズ子） えっ、茨田さん！
どないしはったんでっか！？
りつ子） あなたの様子を
見に来てあげたのよ。
水城アユミに、おじけづいて
やしないかって。
スズ子） いや～すごいですわ。
あれはホンマもんでっせ。
歌がうまいだけちゃうわ。お客の
心をつかむ、何かを持ってはる。
りつ子） ・・・のようね。
スズ子） 茨田さんも、いつか
聴きはったらよろしいわ。
ええ刺激になりまっせ。
りつ子） 私はああいうの趣味じゃ
ないって知ってるでしょ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜羽鳥家＞
ﾃﾚﾋﾞ・宮崎） 「水城アユミさん、
新しい時代を感じさせる、
はつらつとした歌唱でした」。
（テレビを見ている善一）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜楽屋＞
（スズ子を見ているりつ子）
スズ子） ほなワテ、行きます。
茨田さん、聴いとってくださいね。
ワテ、もう・・・爆発しそうや。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
女性） スズ子さん！
頑張ってください！
スズ子） おおきに！
ありがとう！ ありがとう！
（拍手）
木村） 伊藤豊さん、
どうもありがとうございました。
（拍手）
タケシ） やったりましょう。
（袖に立つスズ子）
宮崎） さあ、皆さん。
ついに、大トリです！
一年を締めくくってくださるのは、
この方しかいません。
「笑う門には福来る」。
福来スズ子さん、大いに歌って
盛り上げてもらいましょう！
どうぞ！
（拍手）
スズ子） よっしゃ～！
タケシ） よっしゃ～！
（ステージに出るスズ子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（拍手と大歓声）
スズ子） え～ホンマに、ワテが
大トリということなんでっけどねえ、
これまでの皆さん、えらいすごか
ったですねえ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ﾃﾚﾋﾞ・スズ子） 「ワテ、全部袖で
見てたんでっけど、もう、一人で
えらい興奮してまいましたわ」。
（ニコリともせず、
テレビを見ている善一）
ﾃﾚﾋﾞ・スズ子） 「特に水城アユミさん。
ねえ、何や、若い頃のワテにそっくり
で、特に、あの、かわいいお顔」。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜スズ子の家＞
（テレビを見ている一と小田島）
小田島） はっはっはっは。
（拍手）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
スズ子） もう一発でファンになって
まいましたけど、まだまだ、ワテも
負けてられまへん！
（拍手）
スズ子） それでは、お聴きください。
「ヘイヘイブギー」。
（拍手と歓声）
スズ子） ♪「あなたがほほえむ時は
私も楽し あなたが笑えば 私も笑う
ヘイヘイ 二人で笑って暮らせば
ラッキーカムカム
センチな唄など 皆（みん）な忘れて
ワッハッハッハッハッハッハ
ワッハッハッハッハッハッハ
エヘヘ ウフフ オホホ イヒヒ
ラランララララ
昔から笑う門には ラッキーカムカム
あなたも私も 笑って暮そよ
ヘイヘイ（ヘイヘイ）
ヘイヘイ（ヘイヘイ）
ヘイヘイ（ヘイヘイ）
ランラララララララララ」
（歌手たちが、ステージに登場）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（袖に立ったままのアユミ）
りつ子） ほら、行くわよ。
（りつ子に続くアユミ）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
スズ子） ♪「昔から笑う門には
ラッキーカムカム
あなたも私も 笑って暮そよ
ヘイヘイ（ヘイヘイ）
ヘイヘイ（ヘイヘイ）
ヘイヘイ（ヘイヘイ）
ラップダドダド ダドダダ」
（拍手と大歓声）
（拍手をしながらスズ子の
背中を見つめるアユミ）
（微笑むりつ子）
（袖から拍手を送る股野）
愛子） マミー最高や！
（手を振る愛子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（テレビを見つめ、頷く善一）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（笑顔で手を振るスズ子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
水城アユミの「ラッパと娘」。うん、歌も踊り
も上手い。はつらつとした若さに溢れてる。
「見て！ 最高でしょ？」って声が聞こえる。
でも、違うんだな。やっぱりスズ子がいい。
大トリにふさわしい貫禄。包み込むような
歌声。いや～何だろ、自然に・・・涙が出た。
やっと聞けた「ヘイヘイブギー」。なるほど、
これはスズ子の歌。愛子とスズ子の歌だ。
♪笑う門にはラッキーカムカム
あなたも私も 笑って暮そよ
福来スズ子の名前に、ピッタリの歌。彼女
が歌えば福が来る。幸せな気持ちになる。
「ラッパと娘」も「東京ブギ」も、かっけえし、
大好きだけど、「ヘイヘイブギー」はまさに
スズ子なんだね。スズ子～最高だよ～！
華奢なスズ子の、大きな背中を見つめる
アユミ。うん、あなたはこれから！ その昔、
スズ子が、大和礼子に憧れ、その背中を
追ったように、いつかあなたもその背中を
後輩に見せる時が来る。繋がっているん
だよね、なにもかも。♪「昔から 笑う門に
はラッキーカムカム」ってすぐ歌えるのが
すごい。服部良一先生、マジリスペクト！
いや～ホント、よくここまで頑張ったよ、ス
ズ子の中の人。歌が苦手だったなんて思
えない。どれだけ努力してきたことか・・・。
素晴らしいステージを本当にありがとう！
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