「ブギウギ」 第70回
第15週「ワテらはもう自由や」
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（拍手）
スズ子） 皆さん、
お待たせいたしました！
福来スズ子でございます！
（拍手）
スズ子） ホンマに、
お待たせいたしました。
観客） 待ってました！
スズ子） あはは！
ワテも、ず～っと、この日ぃを
待っておりました！
観客） 頑張れ！
観客） 頑張って！
観客） スズちゃん頑張ってえや！
待ってたよ！
スズ子） もう我慢でけへん！
歌います！
（拍手と歓声）
（客席に愛助）
スズ子） スリー トゥ ワン！
♪（演奏）
スズ子） ♪「楽しいお方も
悲しいお方も
誰でも好きな その歌は
バドジズ デジドダー
この歌 歌えば なぜかひとりでに
誰でも みんなうかれだす
バドジズ デジドダー
トラムペット鳴らして
スイングだして あふれば
すてきに 愉快な甘いメロディ
ラゝゝゝゝゝ
ダドジパジドドダー
ドジダジ デジドダー
歌おうよ楽し この歌を
バドジズ デジドダー」
（スポットライトの中で、
トランペットを奏でる一井）
スズ子） ♪「吹けトラムペット
調子を上げて
デジデジドダー デジドダー
バドダジデドダー
吹けトラムペット
調子を上げて
デジデジドダー デジドダー
バドダジデドダー
あの街でも この街でも
みんな歌うは みんな歌うは
この歌 この歌 すてきなこの歌
すてきなこの歌
バドダドジデジ エジエジドダー
バドダドジデジ エジドダー
バン バン バン バン
バン バン バン バン
バンバンバンバン ババババン
歌おうよ 歌おうよ
歌おうよ 歌おうよ
バァーンズィー バァーンズィー
バァーンズィー バァーンズィー
バァーンズィー バァーンズィー
ダドゥドゥダドゥダドゥダドゥダドゥ
ダッダー」
（拍手と大歓声）
（袖で微笑むりつ子）
（立ち上がり、力いっぱい
拍手を送る愛助）
スズ子） お～！
一同） お～！
（拍手と大歓声）
（総立ちの客席の中で、
涙を流している、笑顔の善一）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜楽屋＞
小夜） お疲れさまでした
スズ子さん！
い～やすてきだった～！
スズ子） 小夜ちゃん、
お水ちょうだい。
小夜） 用意してあります。
スズ子） おおきに。
ふう～！
りつ子） 使い果たした・・・みたいね。
スズ子） 途中で2～3度死ぬか
思いましたわ。三途の川を
行ったり来たり。これあかん！
久しぶりで体がもたん。
せやけど、最高やった。
「ただいま～！」って気分や！
りつ子） そうね。
スズ子） はあ！
善一） ただいま。
スズ子） 先生！
善一） 茨田君福来君
久しぶりだね～。
りつ子） 羽鳥先生、
よくぞご無事で・・・。
善一） 運よく帰ることができたよ。
スズ子） 上海では、
どないされてたんでっか？
善一） 大変だった。
拘束されて3か月・・・。
運よく解放されて、引き揚げ船に
潜り込むことができた。何か歯車
が一つ違ってたら、日本の土を
踏めなかったかもしれない。
本当についてたよ。
スズ子） 先生。
麻里さんやお子さんらは？
おうちには帰らはったんですよね？
善一) ああ。
日本に帰って真っ先にね。
（回想）
善一） ただいま！
（戸をたたく音）
善一） 誰かいないか！？ おい！
（戸をたたく音）
善一） カツオ！
カツオ） 父ちゃま父ちゃまお帰り。
善一） イネコ！ ただいまただいま！
カツオ） 母ちゃま！
父ちゃまが帰ってきた！
善一） 麻里、ただいま。
麻里） ご無事で・・・お帰りなさい。
（麻里の背中に赤ん坊）
善一） 生まれたのか？
麻里） 女の子です。
善一） そうか・・・！
生きて会えてよかったよ！
僕にもしものことがあったら、
化けて出るしかないからね。
麻里） 笑い事じゃありません！ もう！
善一） 会えてよかったよ～！（泣）
善一） あんまり遅くなると、
また麻里にどやされる。
僕はこの辺で失礼するよ。
りつ子） そんな、やっと
お会いできたのに・・・。
善一） 茨田君福来君、今日は最高
のステージを見せてもらったよ。
あの頃と同じ・・・いや、あの頃以上
の素晴らしいステージだった。
りつ子） 先生・・・。
スズ子） ありがとうございます！
善一） 負けてはいられない。
僕も上海で手に入れたんだ。
新しい音楽の可能性をね。
楽譜は全て没収されてしまったが、
何てことはない。ここに残ってる。
帰ってピアノに向かうことにするよ。
（りつ子とスズ子の手を取る善一）
善一） また僕の音楽ができる。
頼むよ。
スズ子） はい。
りつ子） はい。
スズ子） 行ってもた・・・。
りつ子） さすが、羽鳥先生。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
スズ子） 明日からも、
またよろしくな。
小夜） はい。
スズ子） ほな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
スズ子） ただいま・・・。
（玄関に正座した愛助）
スズ子） 愛助さん？
えっ、えっ・・・どないしたん？
愛助） やっぱり福来スズ子は
最高の歌手や・・・。
スズ子） い・・・いきなりやな・・・。
愛助） なにが「前みたいに
やれるか不安」や！
それ以上やないか！
いや、僕がずっと待ってたから
そう感じただけかもしれへん。
いや、そないなことはない！
やっぱり今日の福来スズ子は
最高やった！ 歌も踊りも福来
スズ子史上最高の福来スズ・・・。
スズ子） ちょ・・・落ち着いて。
（スズ子の手を握る愛助）
愛助） スズ子さん、おおきに。
生きててよかった。僕は今日の
福来スズ子を一生忘れへん。
それくらい今日のステージは
素晴らしかった。
スズ子） もうこれからは、誰に何を
言われようと、自分の好きに歌う。
愛助） ほなら、この先もずっと、
福来スズ子追っかけなあかんな。
スズ子） 楽しみにしててや。
愛助） 当たり前や。
スズ子） うふふ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜庭の畑＞
（ジャガイモを掘るスズ子たち）
スズ子） あっ！ あっ、ああっ！
大きいのあったよ！
小夜） あ～大きい！
スズ子） 大きいよ、これ！
小夜） お～スズ子さんのでけえ！
スズ子） 何これ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
スズ子） お待たせしました～！
（ふかしジャガイモ）
3人） 頂きます。
愛助） あつっ・・・！
スズ子） あっ、あつ・・・・！
小夜） あつあつあつあつ！
スズ子） お芋ちゃん、
最後の抵抗しよる。
あつ！ あつ！
小夜） 観念しろ、この～！
（芋にかぶりつく）
3人） うんまあ・・・。
スズ子） 幸せや・・・。
愛助） 待ったかいあったやろ？
小夜） 気が遠くなるほど、
長かった・・・。でも、うめえ！
スズ子） 次はサツマイモやな。
小夜） 焼き芋げ？
スズ子） うん。
愛助） ふふふ・・・。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（カラになったお皿）
愛助） ああ～。
（時計の時報）
小夜） あっ、そろそろだ。
スズ子） そやそや！
愛助） どうしたん？
スズ子） 今日宝くじの
当選発表やねん。
愛助） おお～！
そうかそうか。
（ラジオをつけるスズ子）
ラジオ） 「全国の皆さん、こんにちは。
ただいまより、ここ東京・日本橋、
四越本店より、第1回宝くじの抽選
が、行われようとしております。
♪（ファンファーレ）」
スズ子） 当たりますように。
ラジオ） 「3等の、当選番号の発表
です。11まん、9せん、4ひゃく、
2じゅう、8番。それでは、1等の、
当選番号の、発表です。
♪（ドラムロール）
13まん、7せん、8ぴゃく、
4じゅう、2番」。
スズ子） あかん。全然あかんわ。
ははっ！ ははは！
愛助） 小夜ちゃん？
スズ子） あんた、
もしかして、当たった・・・。
小夜） ハズれだ～！
スズ子） 何や、当たったんか
思てびっくりしたわ。
小夜） へそくり全部はたいたのに・・・。
愛助） そらそうやって。
そないに簡単に当たるわけない。
小夜） んっ！
販売員） 当たったかい？
小夜） 当たるわけあんめ！
販売員） そらあ残念だったね。
じゃあ、ハズレ券4枚で・・・
はい、タバコ10本！
小夜） こんなんもらったって
大損だわ。バカバカしい。
販売員） なんてこと言うの。
タバコはね、貴重品だよ？
小夜） オレはタバコやんねえの！
販売員） どうかした？
小夜） いつもこの辺にいるアメリカ
さん、今日は来てねえのげ？
ほれあの、ガキめらにチョコレート
配ってる。
販売員） ああ、いつもはこの時間だ
けど、今日は来てないみたいだね。
小夜） これやっかど思ってたのに・・・。
ま、いっか。バッド ラック！
（ノシノシ去って行く小夜）
米兵） ヘイ ガール！
小夜） おお、アメリカ～！
サム） アメリカじゃない。サムです。
マイ ネーム イズ サム。
小夜） マイ ネーム イズ サヨ。
そんじゃサム、プレゼント、どうぞ。
（タバコを差し出す）
サム） ありがとう。
小夜） 宝くじのお礼だ。
ハズれちったけど。バッド ラック！
グッバイ！
サム） ウェイ ウェイ ウェイ ウェイ・・・。
プリーズ レット ミー サンキュー
フォー ギビング ミー ジーズ。
小夜） 何ゐってんだ？ あ～・・・。
これは、お返しだ。
宝くじの、お返し。
サム） 食べる、どうですか？
小夜） 食べる？
おごってくれんのけ・・・？
サム） イエス。
小夜） オ～・・・イエス！
オフコスー！
販売員） おっ？
（ウキウキ、
サムについていく小夜）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
圧巻のステージを見せるスズ子。ブラボー！
毎回違う「ラッパと娘」、みんな違ってみんな
いい。歌は生き物。ライブは「今」なんだなぁ。
茨田りつ子の見守る視線も限りなくやさしい。
やっと、戦争が終わったと実感したステージ。
庭に植えた芋を収穫し、お腹いっぱい食べ
る3人。少しずつ日常が戻ってきそうな予感。
小夜ちゃんの宝くじは・・・やっぱりハズレた
けれど、宝くじが結んだ縁？が残りそうだね。
最初は食い意地だろうけど、お腹が満たさ
れば、恋も夢も、考えられるようになるから。
羽鳥先生も無事に帰れてよかったよかった。
楽譜は没収されても、彼の中にある音楽は、
誰にも奪えない。スズ子＆りつ子同様、これ
から爆発するだろう彼の音楽熱が楽しみ～。
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