「舞いあがれ！」 第121回
第25週「未来を信じて」
第121回～どっだけ一緒におっても、
分からんことやあるとよ
※無断転載対策のため、不本意ですが、
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＜二階・リビング＞
舞） どないしたん？
貴司） あんな、舞ちゃん。
舞） うん。
貴司） 短歌、やめようって思う。
舞） 何で？
貴司） 書かれへんねん。どうしても。
もうしんどい。離れたい。今は、
舞ちゃんと歩がおって幸せ。
それで十分やと思う。
舞） 少し、時間置いてみたら？
貴司） もう十分考えてん。
舞） ごめん、私…。
貴司） 舞ちゃんは悪くないよ。
僕一人の問題やから。
ごめん、最低やな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜一階・リビング＞
（一人座った舞）
祥子） ああ…。
舞） ああ…ごめん。
祥子） また、仕事ね。
舞） ううん。
ちょっと、寝られへんねん。
祥子） 貴司や、
今日はデラシネやろか。
舞） うん。
祥子） 何か、あったとね？
このところず～っと仕事ん、
うまくいっちょらんようやったけん。
舞） ばんば、気付いてたんや。
祥子） およ。
優しか子やけん、見せんように
しちょったばってん。
舞） 貴司君な…。
短歌、やめんねんて。
しんどそやった。
私、ず～っと一緒におんのに、
何もでけへんかってん。
祥子） どっだけ一緒におっても、
分からんことやあるとよ。
つらかね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜デラシネ＞
（ランプを灯し、
貴司が絵葉書を見ている）
（回想）
貴司） おっちゃん。
詩ぃ書くのて、楽しい？
八木） しんどい。
こないしんどいことあれへんな。
貴司） ほな、何で書くん。
八木） 生きていくいうのはな、
大勢で、船へ乗って、
旅するようなもんや。みんなが、
船の上でパーティーしてる時、
おっちゃんは、息、苦しなる。
それで、冷たい海飛び込んで、
底へ底へ潜っていって、
そこに咲いてる花、必死でつかみ
取って、船の上へ戻ってくる。
そしたらしばらくは、息できんねん。
その花が、詩ぃや。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜朝・岩倉家＞
（おにぎりを作っている舞）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（包みを手に、デラシネに向かう舞）
（縁側に座った貴司の背中が見える）
（店に入る舞）
舞） 貴司君。おはよう。
貴司） おはよう。
舞） おなか減ってるかなって…。
お握り、置いとくな。
貴司） ありがとう。
舞） ほな。
貴司） 舞ちゃん。
昨日は、ごめんな。
舞） ううん。
貴司） ずっと、考えてて…。
何でやろ…。何で歌が、
出てけえへんのやろって。
けど、やっぱり歌は、
やめたくないって思ってまう。
（机の上に、絵葉書）
（手に取る舞）
舞） これ…。
貴司） 八木のおっちゃんから。
今、パリにおんねんて。
おっちゃんに会いたいな…。
舞） 会うてきたら？
貴司） けど、行かれへん。
舞） 行ったらええやん。
おっちゃんにしか言われ
へんことがあるんやろ？
会うたら、何か、
変わるかもしれへんやん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜数日後＞
雪乃） あんた何言うてんねんな。
貴司） ごめん。
雪乃） 歩かてまだちいちゃいし、
舞ちゃんかて忙しい時にやな。
梅津） 親の責任ちゅうもん考え。
舞） 貴司君は、これまで、家族を支えて
くれました。私が忙しい時も、自分の
時間割いて、歩の面倒見てくれて…。
私は、行かせてあげたいです。
めぐみ） ２人で、話し合うて
決めてんやったら、ええよ。
貴司） ホンマに、申し訳ありません。
（頭を下げる貴司）
雪乃） 舞ちゃんホンマごめんやで。
（雪乃も頭を下げる）
祥子） 貴司、デラシネの店番ば、
任せてくれんね。
めぐみ） 母ちゃん、そいや無理よ。
祥子） なんのそん。家に、籠もりきり
やったら、足も動かんようになるけん。
（祥子に向き直る貴司）
貴司） お願いします。
祥子） およ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
2020年1月
（玄関を出る貴司）
（貴司を見送る舞と歩）
貴司） じゃあ。
舞） うん。待ってるな。
貴司） うん。
（歩の頭をなでる。
貴司） 行ってくるね。
歩） 行ってらっしゃい。
貴司） 行ってきます。
舞） 行ってらっしゃい。
（雪のちらつく道を行く貴司）
（振り向かず、
角を曲がっていく貴司）
貴司君は、パリへと
旅立っていきました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜ABIKILU＞
空飛ぶクルマの開発は、
新たなエンジニアを加え、
次なる段階へと進んでいました。
刈谷） 堂島風間。
あと１時間でピッチ調整
終わらせられそうや？
堂島） 風間さんがもう少し
効率的にしてくれたら。
風間） 何やの、足引っ張って
んのはあんたやろ。
玉本） お前らケンカばっかりやな。
風間） 玉本さんらには言われ
たくないんですけどね。
刈谷） 分かった分かった。
安全にしいよ。
堂島・風間） はい。
刈谷） どうや？
玉本） 完了。
堂島） 締めてください。
風間） はい。
堂島） ズレました。
風間） 何してんのよ！
舞） お疲れさんです。
西浦） お邪魔します。
玉本） おう、来てくれたか！
刈谷） 久しぶりやねえ！
西浦） おお…もうここまで
進んでんのか。
刈谷） ああ。
日下部） 随分遅くなりました。
すいません。
舞） お二人とも、
神戸から来てくれはりました。
渥美） 僕と同じ週末手伝い組ですよ。
玉本） どんどん増えてくんなぁ。
こらうれしいで！ なあ刈谷。
刈谷） ああ。ありがとうみんな。
西浦） ひとまずスペックの
説明お願いします。
日下部） ああ僕も！
玉本） ちょ…待て待て。
まず再会の喜びに浸らせてえや。
舞） あ…たこ焼き、買ってきました！
みんなで食べましょ。
堂島・風間） ありがとうございます。
刈谷） ありがとう。
玉本） ありがとう。
男性） 最高！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
子供の頃聞いた、八木のおっちゃんの言葉を、
自分のこととして感じられる日がきたんだねぇ。
生きていくいうのはな、
大勢で、船へ乗って、
旅するようなもんや。みんなが、
船の上でパーティーしてる時、
おっちゃんは、息、苦しなる。
それで、冷たい海飛び込んで、
底へ底へ潜っていって、
そこに咲いてる花、必死でつかみ
取って、船の上へ戻ってくる。
そしたらしばらくは、息できんねん。
その花が、詩ぃや。
第２歌集からなかなか次の歌集が出ないこと
をおっちゃんも気に掛けていたんだろうね。そ
れにしても…パリ！ おっちゃんは資産家か？
どっだけ一緒におっても、
分からんことやあるとよ。
そうなんだよね～。互いに、大人だし。相手を
尊重すれば、過度に心配させるのも、心配し
すぎるのもね…。自分でなんとかするしかな
い問題は、本人が、SOSを申告してくれること
がベスト（心の病気の場合はまた別のお話）。
貴司が舞に、ちゃんと「しんどい」と言えたこと
が大事というか…悪くない関係なのだと思う。
おっちゃんにしか言われ
へんことがあるんやろ？
そうそう。適材適所というか…。内容によって
話しやすい人、分かってくれる人は違うから。
そういうことを分かってもらえるのもいいよね。
2020年1月…パリに行ったら帰れなくなりそう
な時期だよね…。♪「会えない時間が愛育て
るのさ」ふたたび、となるのか～！？ 最終週
は、懐かしい顔が目白押しになりそうな予感。
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