「舞いあがれ！」 第100回
第21週「新たな出発」
ちょっとぐらいはみ出してもええねん
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舞） 町工場って、何作ってんのか、
どんな人が働いてるのか、外から
見ても、分かりにくいですよね。
町の人からしたら、それって、
不安やと思うんです。
オープンファクトリーで、工場の
こと知ってもらったら、町の人との
関係も、よくなるんちゃうかなって。
せやから、
この、オープンファクトリー、
一緒にやりませんか？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
的場） こないだ、騒音のことで、
市役所にお世話になったんです
けどね、その担当者が、えらい
熱い人で…。
舞） 何て方ですか？
的場） 安川さんです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞） あっ、これ…。
もしかして…
ターミガン号ですか？
安川） （激しく頷く）
舞） 私、
なにわバードマンにいました！
安川） えっ！ ほなら、岩倉…さん？
舞） あ…はい！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜IWAKURA・会議室＞
安川） 「町の人と、工場の間にある
心の壁を壊したい」。
舞） はい。町の人に、工場のことを
よ～く知ってもらえるようなコミュニ
ケーションを取りたいと、考えました。
安川） よう分かりました。
的場君も、おんなじ考えか？
的場） はい！ IWAKURAさんに、
協力したいと思っています。
安川） せやけど、２社でオープンファ
クトリーは難しいんとちゃうかな。
舞） はい。ほかの工場の皆さんに
もお声がけしたんですが、人手が
要ることと、金銭的な負担が大きい
ことが、ネックになってしまって…。
安川さん、お力、貸していただけま
せんでしょうか。
安川） 東大阪も、前例ないからな…。
オープンファクトリー。
舞） はい。
安川） 補助金が出るかどうか…。
スワン号。
舞） え？
安川） 渥美君、知ってるよな？
舞） はい、１期先輩です。
今年から、浪速大学の准教授に
なったって聞きました。
安川） せやねん。
都市ブランディングが専門や。
舞） 都市ブランディングですか？
安川） うん。ほかの町にはない、
その都市ならではの魅力を見つ
けて広げていくっていう活動や。
彼とOB会で会うた時、浪速大学
と東大阪で、協力して何かでき
ひんかなっていう話になってな。
オープンファクトリー、興味ないか、
渥美君に聞いてみよか。
舞） よろしくお願いします！
的場） ありがとうございます！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜IWAKURA・事務所＞
舞） ただいま戻りました。
山田） お帰り。
舞） 行ってきます。
山田） は～い。ん？
ちょ…ちょ…ちょ…ちょっと待って。
今帰ってきたとこやんか。
舞） ああ。
山田） どこ行くん？
舞） 営業です。
山田） はあ…
ちょっとは休みて。な？
舞） これが本業なんで。
行ってきます。
山田） 行ってらっしゃい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜デラシネ＞
北條） そろそろ、
第２歌集の準備しようか。
貴司） え？
北條） 今出したら絶対に
売れるから。ね？
歌、バンバン作ってよ。
貴司） やりたいこと、
見つかったんです。
北條） おお…何何何何何？
貴司） 短歌教室です。子供向けの。
（ちゃぶ台に頭を突く北條）
貴司） え？
北條） そんなこと？
また…地味だねぇ。
貴司） けど…教えんの楽しくて。
北條） いくら取んのよ、授業料。
貴司） お金はもらいません。
北條） はあ？ 待てよ。
いいわ。梅津さんが、子供に
教えてるとこ、絵になるわ…。
よし分かった。
短歌教室やればいいよ。
貴司） ホンマですか？
北條） うん。取材陣呼ぶからさ、
記事にしてもらって、知名度と
好感度、一気に上げようじゃな
いのよ。そういうことは早く言い
なさいよっつうの。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜岩倉家・２階＞
舞） はあ…。
（パソコンに向かった舞）
（舞を見る貴司）
舞） ん？
貴司） イベントってどうやって
企画するんかなって。近い
うち短歌教室やりたくて。
舞） そうなんや。
貴司） うん。
舞） ほんなら、まず、何を
教えたいか決めなな。
貴司） 短歌は楽しいでって、
ことかな。
舞） それええやん。ほんなら次は、
何年生を対象にするか決めるやろ、
ほんで、大体の人数決めたら、
いつやるんか、どこでやるんかも、
決まってくるんちゃう？
貴司） なるほどな。
ありがとう。
舞） うん。
なあ貴司君。
貴司） ん？
舞） ここやねんけどな、もっと、
ええ表現ないかなって…。
舞） う～ん…。
貴司） 「町工場がスクラムを組む」、は？
舞） ああ…ええな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜会議室＞
渥美） 「町工場がスクラムを組む、
東大阪町工場フェスタ」か。
うん、乗った！
舞） ホンマですか！？
渥美） うん。うちのゼミ生にとっても、
まちづくりに直接関われるチャンス
やわ。こちらこそ、一緒にやらして
ほしい！
舞） よろしくお願いします！
渥美） 準備から、オープンファクトリ
ー当日まで、学生らが参加したら、
人手は足りるやろ。
的場） それ聞いたら、ほかの町工場
も参加したいて言うかもしれません。
舞） そうですね！
安川） 規模が大きなったら、市から
資金の援助もしやすい。
舞） ありがとうございます！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜うめづ＞
舞） え～皆さん、
今回のオープンファクトリーに、浪速
大学の学生の皆さんにも、参加して
いただけることになりました。
一同） お～。
舞） そして、東大阪市から、金銭的
な援助も受けられるそうです！
曽根） ほな、工場の負担は、
そないにかからんてことか。
舞） はい！ 是非、参加して
いただけませんか？
曽根） するする！ のう？
この「スクラム」っていうのが
ええやんか。
古田） せやなぁ。
みんなでスクラム組んで、
でっかいことやってみたいなぁ。
山本） うちも、手伝うで。
舞） ありがとうございます。
よろしくお願いします。
的場） 後は、何を作るかやな。
舞） ですね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
オープンファクトリーでは、
工場見学と合わせて、
希望者にものづくりを
体験してもらいます。
舞） ほな、お客さんと、一緒に作る
ものを決めたいと思います。
曽根） どんなもんがええんやろ？
舞） 作ってて、ワクワクするもんが
いいですよね。
男性） ワクワクするもんなぁ…。
渥美） そら飛行機でしょ。
舞） 渥美さん。お疲れさんです。
学生） 失礼します。
学生） 失礼します。
渥美） うちのゼミの学生たちです。
一同） よろしくお願いします。
舞） あっ、どうぞ、お座りください。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞） はい。
先日の、皆さんのアイデアを
基に、デザインしてみました。
いかがでしょうか？
安川） まあ可愛いけど、
形状がちょっと単純かな…。
舞） そうなんですよね…。
渥美） そしたら…
ちょっと描いていいか？
舞） あっ、お願いします。
（模型飛行機のイラストに
書き込む渥美）
渥美） この辺を…。
シュッとさせてみたらどやろ？
一同） お～！
古田） かっこよなった！
舞） いいですね！
安川） そしたら、翼も１個足した
方がええんちゃうか。
渥美） 翼？
安川） ここ…こうして…こうして…。
一同） お～！
舞） あ～！ かっこいいですね！
安川） こんなん子供好きやろ？
男性） 好きやわ！
男性） そうですね。
男性） ２枚の方が絶対好きやわ。
舞） はい、かっこいいです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜数日後＞
舞） オープンファクトリーのものづくり
体験で、この飛行機を作る予定です。
めぐみ） どうやって？
舞） まず、パーツ一つ一つを、
町工場で分担して作ります。
うちが担当するのは、ねじです。
この車輪もねじなんです。
男性） へえ～。
舞） 当日は、パーツを、お客さん
に組み立ててもらって、飛行機
に仕上げます。
章） うん、むっちゃええと思うね
けど、ちょっと難しないか？
舞） 大丈夫です。職人さんにそばに
ついてもらって、教えて頂きます。
宮坂） なるほど…えっ、職人て？
舞） 私、笠巻さんがええなって、
思ってます。
宮坂） 何でや？
舞） 笠巻さんの娘さんと、お孫さんに
も、遊びに来てもらえたらなぁて…。
章） そらええな。
宮坂） ああ。
舞） 笠巻さんに聞いてみます。
めぐみ） うん。
工場見学はこっちでやるから、
飛行機作りの方、頼むわな。
舞） はい！
めぐみ） フフフフフ。
舞） ほな、よろしくお願いします！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
４月、オープンファクトリーに先立ち、
貴司君の短歌教室が開かれました。
（青空のもと、公園でノートを
広げた子供たち）
舞） ちょっとよしてな。ありがとう。
はい、好きなこと書いて。
貴司） あんな、自分が見つけた面白
いもんを、ほかの人に教えるように、
短歌にすんねんで。
子供たち） 分かった！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
御園） はいチーズ！
（シャッター音）
男子） 先生、最後が、どうしても
８個になんねんけど。
貴司） 見せて。
（「下向いて じ～っと見てた
アリたちが おれたちよりも
ならぶんきれいで」）
貴司） これでええやん。
ちょっとぐらいはみ出しても
ええねん。
男子） ホンマ？
貴司） うん。
気にせんと好きなこと書いて。
男子） やった～！
（写真を撮る記者の横に北條）
北條） どうです？ 今の名場面、
撮れました？ 撮れました？
見して見して見して…。
女性記者） もう…ちょっと
黙っとってもらえます？
北條） はい。
貴司） それ短歌にしてみたら？
子供） うん、してみる。
（公園の外に、一人の女の子）
舞） こんにちは。
よかったら、参加せえへん？
女子） お金持ってへん。
舞） お金要らんで。
一緒にやってみる？
女子） うん。
舞） うん。ほな行こか。
（女の子を案内する舞）
舞） ここ座り。お邪魔します。
貴司） どうぞ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（「木にのぼり
ピースした子は キズいっぱい
わたげはもっと 上までいくよ」）
貴司） 「わたげ」って、タンポポの？
女子） そう。
貴司） それ見た時、
どんな気持ちになった？
女子） どこまでもどこまでも、
飛んでいきそうな気ぃした。
貴司） それを、イメージして、
短歌にしてみたら？ うん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞） ああよかった。
ありがとう。またな。
男子） ちょっと待ってて。
先生。
貴司） ん？
男子） 短歌、おもろかったわ。
貴司） よかったわ。
男子） また教えてな。
貴司） うん、気ぃ付けてな。
男子） さよなら。
貴司） またな。
御園） さよなら。
舞） ありがとうございました。
御園） オープンファクトリーも、こん
なふうに喜んでもらえるといいね。
舞） はい。
女子） フワフワかな？
貴司） フワフワ？ ええなぁ。
それ、書こか。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
安川先輩の所作が、いかにもなにわバー
ドマンOBらしくってめっちゃ良き。大学時
代の様子も、容易に想像できる。熱い人
だったんだろうなあ。そして、今もOB会で
熱く語る人なんだろうなあと。OBつながり
で渥美先輩とつながるのも良き。学生時
代目立たない立ち位置の人がこうして活
躍するのも良き。意外だけど、リアルよね。
そして、なんだかんだ言って貴司愛が溢
れでるリュー北條がどんどん好きになる。
短歌教室と聞いて、地味と言いながらも、
すぐに貴司のイメージアップ、売り上げア
ップになると思いつくところはかなり優秀。
うんうん、確かに絵になるよ。良き良き♪
ちょっとぐらいはみ出してもええねん。
そう言ってあげられるようになったんだね
え～。五島で、ばんばの言葉に救われた
あの貴司君がね…。よかった、よかった。
貴司君も、
周りに合わせんでよか。
自分のことば知っちょる人間が
一番強かけん。
変わりもんや変わりもんで、
堂々と生きたらよか。
そして、あの時、貴司はこうも言っていた。
ホンマの自分のまま、
生きていける場所が
どっかにあるかもしれへん。
世界はこんなに広いんやから。
うん、あったね。舞と一緒にいる貴司君は、
とても自然で彼らしい。互いの得意な分野
で、足りないところを、ごく自然に補い合う、
本当に理想的なカップル。２人のシーンは
見ているだけで心が癒やされて…良き～。
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