「舞いあがれ！」 第70回
第15週「決断の時」
私が、経営を引き継ぎます
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舞） お父ちゃんが元気やった
頃みたいやな。
めぐみ） 舞。お母ちゃん、間違うてた。
舞） え？
めぐみ） 会社…。潰せへん。
続ける。
舞） うん。私も手伝う。
こん包の仕事だけやなくて、
事務でも経理でも何でもやる。
お母ちゃんと一緒に頑張る。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
めぐみ） IWAKURA、続けたいて思て
ます。私が、社長になります。
支店長） 経営っちゅうのは、付け焼き刃
の知識でできるようなもんやありません。
はっきり申し上げて、無謀ですわ。
大西） あの…。
僕は、奥さんやったら、社長が
務まるんやないかと思います。
支店長） 大西。
大西） ずっと岩倉社長のそばで経営を
見てきはりましたし…。
支店長） それだけではね。
大西） 技術については詳しくなくても、
笠巻さんら職人さんらが、きっと助け
てくれはると思います。
支店長） 当面の運転資金はどうされ
るんです？ 当金庫ではこれ以上、
融資の返済を待つことはできません。
資金の当てはあるんでしょうか？
（書類を出すめぐみ）
めぐみ） 主人の、生命保険のお金を、
充てるつもりです。
支店長） そこまでの覚悟が、
おありですか…。
めぐみ） はい。
支店長） 拝見します。
それでは、社長になられるにあたって、
お願いがあります。一刻も早く、給与
削減、人員整理等に取り組んで頂き、
経営計画を提出してください。
めぐみ） 分かりました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜会議室＞
垣内） そやけど何やろな、大事な話て。
尾藤） IWAKURAの、
身売り先が決まったとか？
小森） そんなはよ見つかるかい。
尾藤） そうですけど…。
めぐみ） おはようございます。
一同） おはようございます。
めぐみ） 皆さんに、ご報告があります。
IWAKURAの身売りは、やめました。
一同） え…。
めぐみ） 私が、経営を引き継ぎます。
男性） いや…。
男性） 何で、奥さんが？
めぐみ） 主人が、皆さんと一緒に、
大きしてきたこの工場、なくした
ないからです。
宮坂） 気持ちは分かりますけど、
奥さんが経営て…そらむちゃやわ。
相良） これ以上、赤字が膨らんだら、
リストラされる人出てくんのとちゃい
ますの？
宮坂） 奥さん。
社長はな、リストラだけはせえへんて、
頑張ってきはったんやで。
相良） そうですよ。社長の遺志は
どないなるんですか。
（ざわめき）
笠巻） ちょ…みんなええか。
あの…確かに社長は、リストラせんか
て済むように頑張りはった。でも頑張
って頑張って、俺らのこと守ろとして
無理重ねて、亡くなってしまいはった
んや。めぐみさんは、覚悟を決めて
ここに立ってはる。俺らも覚悟を決め
る時とちゃうか。
一同） ………。
めぐみ） ご協力、
よろしくお願いいたします。
（頭を下げるめぐみ）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜商品こん包課＞
めぐみ） お疲れさん。
舞） ああ、お疲れさん。
めぐみ） ごはん、行けへん？
舞） うん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜うめづ＞
雪乃） はいこれサービス。
めぐみ） すんません。
舞） ありがとう。
めぐみ） すんません。
舞） リストラ、すんねんな…。
めぐみ） うん。
けど、それは、最後の手段や。
今な、新しい仕事、もらわれへんか、
あちこち当たってみてるとこやねん。
舞） そっか。
めぐみ） まだ、
一件ももらえてへんねけどな。
舞） お母ちゃん。一人で抱え込まんと、
何でも、相談してな。
めぐみ） ありがとう。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
山田） ここに、
商品の本数を打ち込んで。
舞） こうですか？
山田） そうそう。
ほなあとは、よろしくお願いします。
舞） ありがとうございます。
お疲れさんでした。
山田） お疲れさまです。
藤沢） ただいま、帰りました。
めぐみ） お帰り。
舞） お疲れさんです。
めぐみ） どないかしたん？
藤沢） 安永工業さんが、来月で
取り引き終了したいて…。
めぐみ） 何で、急に…。理由は？
藤沢君、何て言われたん？
藤沢） 奥さんが社長になって、
先行きが不安やからて…。
めぐみ） 行こ、藤沢君。
藤沢） どこにですか。
めぐみ） 安永さんとこ。
藤沢） はい！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夜＞
（部屋で考える舞）
（回想）
舞） お母ちゃんが社長になるんや
ったら、会社、手伝いたい思てる。
悠人） お前なぁ、あんなちっちゃい
工場のためにパイロットやめると
か、アホなんか？
（携帯電話を手に取る舞）
（柏木の番号を見つめる）
（携帯を閉じる舞）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜リビング＞
（テーブルに６人分の履歴書を
並べためぐみ）
めぐみ） （ため息）
舞） まだ寝えへんの？
めぐみ） ん？
新規受注どころか、お得意さん、
一件なくしてしもたしな…。最低
でも、３人、リストラせんとあかん。
舞） うん。
めぐみ） 辞めてもらう３人には、
ちゃんと、再就職先も、探してな。
舞） 私も、一緒に探す。
めぐみ） ありがとう。
舞） うん。
めぐみ） 品質を守るか、
現場の稼働率を守るか…。
舞） え？
めぐみ） それによって、どの部署の、
誰に辞めてもらうかが、決まる。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜明るくなったリビング＞
（３人分の履歴書を手に取るめぐみ）
舞） おはよう。
めぐみ） おはよう。
舞） 徹夜したん？
めぐみ） うん。
舞） 体、壊さんといてな。
めぐみ） 時間、かかってしもたけど…
決めたわ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夕方＞
（めぐみと舞の前に、一人の従業員）
めぐみ） これは、強制ではありませんが、
稲本さんに、退職していただきたいと
思てます。本当に、申し訳ありません。
（頭を下げるめぐみと舞）
稲本） そうですか…。
めぐみ） 再就職先は、一緒に探します。
何か、ご質問はありませんか？
（首を横に振り、出ていく稲本）
（頭を下げるめぐみと舞）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
砂川） 何で、俺なんですか？
めぐみ） 生産管理から１名、辞めて
いただく必要が、あんのです。
砂川） 若手と違て、給料高いし、かと
いうて、いてへんようになって困るほ
どの、ベテランでもないてとこですか。
めぐみ） そんなこと…。
砂川） ええよ、分かりました。
お世話になった会社、
困らしたないしな。
めぐみ） 申し訳ありません。
砂川） ほな、近いうちに、
退職届出しますわ。
めぐみ） よろしくお願いいたします。
舞） あの、再就職先、探すお手伝い、
させてください。
砂川） お嬢ちゃんも、こんなこと
手伝うて、大変やなぁ。
（頭を下げるめぐみと舞）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
小森） 嫌です。退職勧奨ってことは、
断る自由もあるってことですよね？
ほな断ります。俺、辞めません。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
いやいやいや…めぐみの気持ちは痛いほどわか
るけれども！ 笠巻さん以外、不安しかないでしょ。
笠巻さんは多分、一緒に沈む覚悟もあるだろうし。
工場や機械をきれいにしたのは高く売るためなん
やで～奥さん！と、声を大にして言いたくなるわ。
やっとリストラする気になってくれたのはいいけど、
そこに舞が同席してるのって…社員にとっては何
の罰ゲームかと思うよね。昔からの人事担当者な
らまだしも。何でお嬢ちゃんがこの場に？って思う
よ。そう、社員にとっては、社長のお嬢ちゃん…な
んだと思う。再就職のお手伝いさせてくださいと言
われてもね～。探してもらえる気がしないと思うw
もう嫌になるほど段階を踏んでいるので、いよい
よ、本気の覚悟をする時も近づいているのだろう
けれど…。いつか、いつか、舞がパイロットになる
日が来ることを、あきらめないぞ～と心に誓う私。
（最後の最後まで期待するのは自由だからね～）
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