「舞いあがれ！」 第53回
第11週「笑顔のフライト」
今でも岩倉は、俺たちのパイロットやけん
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最終審査まであと５日
舞） 中澤さん、離婚届出して
しもたんですかね。
（靴を磨く舞）
倫子） さあね。
舞） せめて、もっぺん、奥さんと
話できたらええんですけどね…。
倫子） 今の中澤じゃ
うまくいきっこないよ。
（ため息）
（机に向かい勉強をしている倫子）
舞） 倫子さん。
中澤さんに、何か、言いたいこと
あるんとちゃいます？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（部屋から中澤が出てくる）
（廊下に倫子と舞）
（中澤の手に封筒）
倫子） それ、出しに行くんだ。
舞） あの…外、雨降ってますし、
出すの、後からにしませんか？
倫子） それまでちょっと話そうよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜中澤と吉田の部屋＞
（封筒を前に向き合って
座った中澤と倫子）
中澤） 話そうったって、俺の心はもう
決まってる。最終審査の前にこれ
以上余計なことは考えたくない。
倫子） 余計なことじゃないでしょ。
どうしたら美幸さんが話をして
くれるか考えなさいよ。
中澤） 向こうに話をする気がないん
だからしかたないだろ。
倫子） 私だってあんたがそれ出して
スッキリするなら文句言わないよ。
でもどうせ出したところで、
またモヤモヤするんでしょ。
中澤） そりゃ集中できないよ。
できるわけないだろ！
だって愛してるんだから。
舞） 中澤さん落ち着いてください。
吉田） 自暴自棄が一番駄目ですよ。
（封筒を握り潰す中澤）
中澤） 何で俺が離婚しなきゃいけな
いんだ。パイロットになって、家族
養って、一体何が不満なんだよ。
美幸もそれでいいって納得してくれ
たはずなのに…。
倫子） 中澤は、美幸さんの夢、
聞いた事あるの？
中澤） 夢？ 何だよ急に。
倫子） いいから。
中澤） あいつの夢は、
俺の夢を支えることとか？
倫子） 本気でそう思ってる？
中澤） いや…。
俺がパイロットになるの
諦めればいいのか？
倫子） それも違うでしょ。
中澤） 何だよさっきから。矢野は
俺に、何が言いたいんだよ！
倫子） あんたはまず。最初に理解
しないといけないことがある。
中澤） おう何だよ。
倫子） 中澤が夢を追いかけられる
のは、中澤が男だからだよ。もし、
子供を持つ女性が、突然パイロット
になるなんて言いだしたら、誰が応
援してくれる？ きっと止められる。
母親なのにって。それに…。
パイロットなんて男の職業でしょ、
なんて言われて…。女性の機長だ
って、日本にはまだいないじゃない。
中澤はその意味を全然分かってな
いんだよ。
中澤） 別に、俺がそうしたわけじゃ
ない。男が稼いで女が家庭を守る。
そう決めたのは世の中だろ。
（中澤にコップのお茶をかける倫子）
倫子） だから私は変えたいの！
変えるためにここに来たの。
自分の人生を、世の中に決められ
たくない。男も、女も、関係ない。
（顔をそらし涙をぬぐう倫子）
（倫子を見ている舞たち）
倫子） 私がパイロットになりたいって
思ったように、美幸さんもやりたいこ
とがあるかもしれない。中澤はこれ
まで、そういう話を聞いてこなかった
んじゃないの？ 中澤だって気付い
てるんでしょ。美幸さんの気持ちか
ら、目を背けてたってこと。逃げずに、
美幸さんと向き合うべきだと思う。
中澤ならできるよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（部屋を出る倫子と舞）
倫子） はあ…。
言い過ぎちゃったかな…。
（首を横に振る舞）
倫子） かっこ悪い。
舞） かっこよかったです。
倫子さん、あんな強い思いで、
この学校来たんですね。
私も見習わな。
（舞と腕を組む倫子）
倫子） 戻ろ。勉強しないとね。
舞） そうですね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（くしゃくしゃの封筒を手にした中澤）
（後片付けをする吉田）
中澤） すまん。こんな大事な
時期に、迷惑をかけて。
吉田） エヘヘ。迷惑なんて思うわけ
ないじゃないですか。矢野さんも、
きっとそう思ってます。だからここ
に来たんですよ。
中澤） 吉田…。
（封筒をゴミ箱に捨てる中澤）
中澤） なあ、レターセットを
貸してくれないか？
俺、手紙書いてみる。
吉田） はい。
数日後、美幸さんから返事が来て、
２人で話し合うことになったそうです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（一人、机に向かった舞）
舞） 航空交通管制区、classE。
進入管制区、classE。
交通管制区…。
（携帯電話の呼び出し音）
電・舞） もしもし、鶴田先輩？
電・鶴田） おお岩倉、元気か？
電・舞） はい！
どないしたんですか？
電・鶴田） テレビ見たか？
イカロスコンテスト。
電・舞） 見ました。
電・鶴田） 今年のなにわバード
マンも大活躍やったな。
電・舞） ホンマにすごかったです。
電・鶴田） ああ、ちょっと待ってな。
電・刈谷） 岩倉、元気にやっとうとや。
電・舞） 刈谷先輩…？
電・刈谷） おう、久しぶりやね。
電・舞） お久しぶりです。
電・刈谷） テレビ見とったら、岩倉が
飛んだ、スワン号思いだしたとよ。
俺は忘れんけん。岩倉があん時、
みんなを連れて飛んだこと。
（回想）
舞） ３、２、１、ゴー！
鶴田） 息合わせてひも離せ！
玉本） せ～の…。
舞） 空飛んでる…。
電・舞） 懐かしいですね。
電・刈谷） あん時の岩倉は、
スワン号を飛ばすんだって、
しつこく俺を連れ戻しに来てな。
おかげで俺は、設計図の描き
直し。玉本たちも、毎晩徹夜。
そんで鶴田は、号泣ったい。
（笑い声）
電・刈谷） で、岩倉は、今、
飛んどうとや。
電・舞） はい。
電・刈谷） う～ん。それやったら、
スワン号の奇跡は、まだ続いと
るってことたい。今でも岩倉は、
俺たちのパイロットやけん。
なにわバードマンの魂、
忘れちゃいかんよ！
電・舞） はい。
電・刈谷） じゃあまた。
電・鶴田） ほなな。
電・舞） 失礼します。
（部屋に飾った
なにわバードマンの写真）
（回想）
大河内） なぜパイロットに
なりたいか、思い出したか？
目指すべきものは、
そこにあるはずだ。
倫子） 舞。何見てるの？
舞） 人力飛行機の、
パイロットした時の写真です。
あの時、みんなの期待背負って、
それにちゃんと応えたくて、
とにかく必死でした。
けど、空飛んでみたら、ホンマに、
プレッシャーなんか忘れるぐらい
楽しくって…。空ってこんな景色な
んや。こんな楽しいんやって…。
みんなで一緒に飛んでるから、
どこまでも行けるんやなって。
ホンマにうれしなったんです。
今も、倫子さんがおって、柏木さん
がおって、吉田君も、中澤さんも…
水島さんもおって、みんなで一緒に
飛んでるから、私は強くなれてるん
やなって、思うんです。倫子さん。
最終審査、一緒に頑張りましょ。
倫子） うん。
空への思いを新たに、
最終審査に臨みます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
倫子の気持ちはよ～く分かる。少しずつマシに
なってはきているものの、世の中は急には変わ
ってくれないからね。少しずつ、そういう気付き
を促すドラマが増えてきてくれてはいるけれど。
中澤） 別に、俺がそうしたわけじゃ
ない。男が稼いで女が家庭を守る。
そう決めたのは世の中だろ。
倫子） だから私は変えたいの！
変えるためにここに来たの。
自分の人生を、世の中に決められ
たくない。男も、女も、関係ない。
世の中って…本当に何だろうね。何とな～くそ
ういうものって空気の正体は、何なんだろうね。
本気で立ちはだかる壁もあるけれど、世の中
のせいにして、思考停止、になっているだけの
人も多いのかもしれない。自分で自分の可能
性を潰してはいないか？ できないと思い込ん
でいないか？ 見直すことも必要かもしれない。
それよりなにより、今日の一番はなにわバード
マン、鶴田先輩と刈谷先輩の再登場。いや～
あの先輩後輩の空気感、スワン号を語る熱量、
昨日のことのように、もう何度も語り合ってきた
だろう、懐かしい青春の日々感。すんごく良き。
それやったら、スワン号の奇跡は、
まだ続いとるってことたい。今でも
岩倉は、俺たちのパイロットやけん。
なにわバードマンの魂、
忘れちゃいかんよ！
あ～もう～ロマンチスト刈谷先輩ったらもう～。
♪あなたは私の 青春そのもの～
（ｂｙ 荒井由実「卒業写真」）
スワン号は…なにわバードマンは…みんなの、
いや、視聴者にとっても青春そのものだったよ。
勝手に同じ気持ちで懐かしめるわ～。良き～。
なぜパイロットになりたいと思ったかを、やっと
思い出した舞ちゃん。うんうん、待ってたよ～！
なにわバードマン魂、もう忘れちゃ駄目だよ～。
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