「舞いあがれ！」 第52回
第11週「笑顔のフライト」
不測の事態は必ず起こる
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大河内） 「01TC、
帯広空港への着陸は諦める。
釧路空港へ変更だ」。
舞） 「一人で、釧路空港ですか？」。
大河内） 「そうだ」。
舞） 「いや…。
了解しました」。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（海岸線上空を飛ぶ舞の訓練機）
舞の心の声） 燃料はある。
大丈夫。けど、もし…釧路も風が
強くて、降りられへんかったら…。
大河内） 「岩倉学生聞こえるか？」
舞） 「はい」。
大河内） 「右を見ろ」。
（顔を右に向ける）
（もう一機の訓練機が現れる）
大河内） 「釧路まで私が誘導する」。
舞） 「大河内教官…。はい」。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
大河内教官の誘導で、
釧路空港が近づいてきました。
舞の心の声） 「よし、着陸や」。
管制官） 「（英語）風向きは南東、
風速15ノット、滑走路17に着陸
することを許可します」。
舞） 「（英語）滑走路17に着陸します」。
舞の心の声） いつもより強い風。
（高度を下げていく）
大河内） 「岩倉学生」
舞） 「はい」。
大河内） 「自信を持て。
落ち着いてやれば、できる」。
舞） 「はい」。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（上空から舞の訓練機を見つめる大河内）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞） Threshold 19.
Power idle！
（迫る滑走路）
（回想）
大河内） エアスピードが速く、
パスも高すぎた。
大河内） いつも設置前の高い
位置で失速しようになる。
大河内） 沈みに応じて返せ。
大河内） 駄目だ。
着陸は体感しかないんだ。
舞の心の声） 風向きに合わせて、
機軸を直して…。
沈みを感じたら…引く。
（滑走路のセンターライン上を行く
舞の訓練機）
舞） できた…。
（機体が止まる）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（上空の大河内）
大河内） 「よくやった。
これまでで一番の着陸だった」。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（舞の目に涙があふれる）
舞） （泣）
「ありがとうございます」。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（ヘッドホン越しに舞の声を聞き
ながら、空を見据える大河内）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞） 「ありがとうございます」。（涙）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（地上で向き合った２人）
舞） 正直、すごく、怖かったです。
やるべきことは分かっていても、
いざとなったら、手震えてしまって…。
大河内） 不測の事態は必ず起きる。
それでも冷静でいなければならない
のがパイロットだ。
舞） 冷静になれたのは、教官に、
声をかけてもらったおかげです。
大河内） やり遂げたのは、君自身だ。
舞） ………教官。
大河内） 何だ？
舞） この前、教官がおっしゃったこと。
（回想）
大河内） 努力をしても、パイロットに
なれない学生はいる。私がここに
いるのはそういう学生を落とすため
でもあるんだ。
舞） あの言葉、教官の本心ですか？
大河内） 本心だ。パイロットの適性の
ない学生をいち早く見極め、落とす
ことも、私の仕事だ。水島には、その
適性がなかった。だが、パイロットに
なれなくても、彼の人生が終わった
わけではない。大切なのは、彼が
これからどう生きるかだ。
（回想）
（最後の日、大河内に向かい頭を
下げた晴れやかな顔の水島）
大河内） 彼はまた、
別の道を歩んでいける。
岩倉学生。審査や訓練ばかりに
とらわれて、大事なことを見失うな。
なぜパイロットになりたいか、
思い出したか？
目指すべきものは、
そこにあるはずだ。
（立ち去る大河内）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜帯広＞
（訓練機から降りた舞）
柏木） 岩倉…。
（舞に向かっていく柏木）
舞） 柏木さん。ごしん…。
（舞を抱きしめる柏木）
柏木） 心配した。
（２人を見ながら通り過ぎていく整備士）
（離れる舞）
柏木） あ…。ごめん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
柏木） 教官がそんなことを…。
舞） はい。
大河内教官、水島さんのこと、
ちゃんと、見てくれてはったん
やと思います。学生に興味な
いとか、そんなことないです。
私、大河内教官のもとで、最後
まで、訓練頑張りたいです。
柏木） （頷く）
舞） （頷く）
倫子） 舞！
舞） 倫子さん。
倫子） ねえ～もう心配したよ。
吉田） 岩倉さん、本当によかった。
中澤） 心配したぞ岩倉。
舞） 吉田君、中澤さんも…すいません。
柏木） いやお前らノックしてから入れよ。
倫子） あ…。
吉田） あ…。
中澤） すまん。
舞） ホンマに、心配かけて、
すいませんでした。
中澤） よし！ じゃあ、
気合いの円陣、やるか！
舞） 円陣？
中澤） うん。
舞） 何でですか？
中澤） 最終審査に向けてだよ。
なあ柏木。
よし、じゃあ、掛け声頼む。
倫子） やんの？
吉田） やりますか。
柏木） 最終審査、突破するぞ～！
一同） お～！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（山下教官のもと、
訓練機を操縦する中澤）
山下） ここでは92ノットをキープする
のが大事。1ノットもずらさない気持
ちで、姿勢を安定させるんだ。
中澤） イエッサー！
山下） 後ろの２人もアンダースタンド？
倫子・吉田） はい。
山下） ア リトル…ピッチ上げて。ナイス。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
大河内） この状況で前方に
雲があったらどうする？
柏木） 左から、風が来ているので、
左側に回避します。
大河内） よし。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞） Next course briefing.
ネクスト、清水から中札内。
高度3500フィート。マグコース162…。
こうして、舞ちゃんたちの訓練は
順調に進み、最終審査が近づい
てきました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
2007年9月
吉田） T3の手前で、完全停止が、
計算上できることが確認されました。
山下） 問題ないね。
倫子） はい。
山下） よし、じゃあ、中澤学生、
航空情報を。中澤学生？
倫子） ちょっと中澤。
中澤） あっ、すいません。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜学生寮・廊下＞
柏木） なんとか、
遅れは取り戻したな。
舞） はい。
皆さんのおかげです。
（談話室に入る2人）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜談話室＞
吉田） え～！
中澤） うん。
舞） どないしたん？
中澤） 実はさ、俺…
離婚することにしたんだ。
柏木） え…。
舞） え…。
中澤） 今日、離婚届にサインをした。
すまん。こんな大事な時に、
変なこと言って。
吉田） もう、出したんですか？
中澤） 次の休みに、出しに行く。
倫子） あんた、ちゃんと奥さんと
話してないんでしょ。
中澤） 電話に、出てくれないんだ。
倫子） それでも、手紙書くとか、会いに
行くとか、いくらでも方法はあるでしょ。
中澤） 電話に出ないってことは、
会いたくないってことだろ？
それで無理に会いに行くのも、
違うだろ。
倫子） 情けない。
自分の中で勝手に自己完結して、
そういうところが…。
愛想尽かされる原因でしょ。
（出て行く倫子）
最終審査まで、
残り１週間を切りました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
教官の誘導で、無事に釧路空港に着陸できた
舞ちゃん。しかも、今までで一番の着陸だった
と褒めてもらえたよ～！ やればできる子です
からね、うちの舞は。ホント、よかったよかった。
大河内） 不測の事態は必ず起きる。
それでも冷静でいなければならない
のがパイロットだ。
舞） 冷静になれたのは、教官に、
声をかけてもらったおかげです。
大河内） やり遂げたのは、君自身だ。
不測の事態は必ず起きる。空でも、地上でも。
大河内教官が駆けつけてくれて、声をかけて
くれた効果は、絶大だったと思うけれど…やり
遂げることができたのは、舞自身の力。これ
が水島学生だったら、どうなっていただろうか。
水島には、その適性がなかった。
だが、パイロットになれなくても、
彼の人生が終わったわけではない。
大切なのは、
彼がこれからどう生きるかだ。
適性を無視して訓練を続けて、命を失うよう
なことになってしまったら、パイロットどころか、
可能性に満ちた人生もなくなってしまうのだ。
彼はまた、別の道を歩んでいける。
岩倉学生。審査や訓練ばかりに
とらわれて、大事なことを見失うな。
なぜパイロットになりたいか、
思い出したか？
目指すべきものは、そこにあるはずだ。
そうそう。空を飛びたかった気持ちを思い出し
て～！ とりあえず、柏木は忘れていいからｗ
みんなも、最終試験だけに集中しておくれ～。
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