大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」第42回~東京流れ者 | 日々のダダ漏れ

日々のダダ漏れ

日々想ったこと、感じたこと。日々、見たもの、聞いたもの、食べたものetc 日々のいろんな気持ちや体験を、ありあまる好奇心の赴くままに、自由に、ゆる~く、感じたままに、好き勝手に書いていこうかと思っています♪

大河ドラマ 
「いだてん~東京オリムピック噺~
 



第42回~東京流れ者

 

 

※無断転載対策のため、不本意ですが、

しばらく、注意喚起させていただきます。

 

こちらの記事は、「日々のダダ漏れ」 の

記事です。ご覧になっているブログ名が

「日々のダダ漏れ」、以外のブログ名は、

記事を無断転載しているブログです!!

↓ オリジナルのブログはこちらです♪

「日々のダダ漏れ」

 

 

政治) あんたら選手のこと何にも分かってないね!

 俺のオリンピック持ってこい。

川島) 貴様のオリンピックではない!

政治) はあ?

川島) これは、日本のオリンピックだ。

 「国民の」と言ってもいい。

 変わるんだよ日本は。このオリンピックで。

 

え~この頃の日本は、高度経済成長ってやつで、暮らし

ぶりも随分変わりました。しかし、いいことばかりじゃない

んですね。特に、車の渋滞には困ったもんだ。こりゃ道路

とは呼べない。細長い駐車場みてえなもんで…

 

**********

 

昭和36年6月 1961

 

(渋滞の中を走る足袋)

森西) また渋滞…いつ出来んだよ空中道路! 建設省さんよ!

 はあ…すいませんねお客さん。どっかでUターンします。

(タクシーを追い越す四三)

森西) あのジジイ…。

四三) スッスッハッハッ、スッスッハッハッ。

丹下) アテネから東京まで、聖火リレーやるそうだね。

亀倉) はあ~全く正気の沙汰じゃないですよ。シルク

 ロードはほとんど砂漠だから無理ですって言っても

 譲らなくて。調査隊派遣するそうですよ。ジープで

 走るんですってジープで。ハハハハ。

丹下) そんなの誰が行くんだよ。

亀倉) ねえ?

森西) 俺じゃ駄目っすかね? ヘッ、すいませんもう…

 後ろでオリンピックの話なんかしてるからもう、心躍っ

 ちゃって。いや、行きますよ俺! 走りますよ!

亀倉) しかし走行距離2万kmですよ?

森西) でも混んでないでしょう? シルクロード。もうね、

 うんざりなんですよ渋滞! 毎日ね、マラソンのジジイ

 にも追い抜かれて、もう自尊心ズタズタなんですよ。

 行きます行きます。誰に言えばいいんですか?

 

**********

 

森西栄一さんは、タクシー運転手を辞め、聖火リレー

踏査隊の一員に。これが、嘘のような本当の話。

 

政治) 暑いから帽子かぶっていきな。

森西) はい!

政治) よし。

 

聖火を、アテネから日本まで運べるのか。まーちゃん

たっての希望で、アテネから2万km、13カ国にわたる

道のりを、たった2台の車で横断。いや~執念ですな。

 

男性) 田畑さん、始まりますよ。

政治) うん?

テレビ) 「レシーブ トス アタック…」。

政治) 何だ? 女子バレーか?

男性) あ~いいね~。

テレビ) 「昨年の世界選手権決勝。強敵ソ連に

 負けを喫した、日紡貝塚女子バレー」。

政治) ああああああああ…またやってるよ大松が。痛い…。

 

**********

 

(機関銃のようにボールを投げる大松)

大松) おい! 立てお前~。ウマ立て!

(ボールが顔面を直撃)

 

え~いきなりで驚いたでしょうが、これは、虐待ではありません。

 

大松) 何や? その目は。

河西) ああ~!

大松) 何やお前!

(大松に馬乗りになる河西昌枝)

河西) 頭突きやめえお前…。

 

**********

 

大松) 「敗因は大松監督の采配ミス」。

 お前らこんなこと言われて悔しないんか! 

 痛っ…。んっ!

河西) はい! 悔しいです!

大松) 俺も悔しいです。今度こそ優勝してもらいます

 よってにな。あと2年やぞ? 次の世界選手権まで。

 悔しさだけでやれんのか? なあ? 仕事終わって

 8時間練習やぞ? 盆と正月以外休みなしやぞ?

 なあ? ほんまについてくるんか?

一同) はい!

大松) ほんまに俺についてくるんか!?

一同) はい!

 

**********

 

<河西昌枝の家(山梨)>

大松) こう言うてますんで、こいつを2年間、私に貸して下さい。

河西栄一) いや、貸せと言われても…。

大松) こいつは最初、何にもできませんでした。トスさせても

 ミスする。攻めさせても守らせてもミスする。「こいつはカカシ

 や。こつにボール回すな」言うたら、こいつも、こいつなりに、

 頑張り…。あっ、すいません。お父さんの前で、「こいつ」は

 失でしたね。

栄一) あっ、いえいえ…そんな。

大松) ウマは、よくチームをまとめてくれます。中には私より

 も、ウマの方が厳しいと言う選手もいる。なあウマ?

 ウマどないしたんや? おとなしいなウマ。

河西) お父さん…お母さん…このとおりです。

(両手をつき、頭を下げる河西)

河西) やらせて下さい。

栄一) よく分かりました。昌枝が望むなら…貸しましょう。

 ただ監督さん、昌枝の花嫁姿だけは、どうしても見たい。

 それだけは、お願いします。女として2年間を、棒に振る

 んですから。それだけは、なんとかして下さい。

大松) もちろんです。必ずお返しします!

(ひれ伏す大松)

 

このように、鬼の大松は、全選手の親元を訪ね歩き、

親御さんの了承を得ました。だから、虐待ではないのです。

 

**********

 

大松) 女捨てろ~! えっ?

 

セッターに転向した、「ウマ」、こと河西選手は、

右でも左でも攻撃できるよう、日常生活でも、

右手の使用を禁じられたそうです。

 

大松) ウマは今日から左利きや!

河西) はい!

 

**********

 

五りん) おっと、右が使えないって言やあ、うちの師匠、

 古今亭志ん生ですよ。ようやく稽古を始めたんですが、

 脳出血の後遺症で、右半身に麻痺が残っちゃった。

 

(針仕事をしながら縁側の志ん生を見ているりん)

(右手に扇子を持ち、キセルを吸う仕草をする志ん生)

(扇子が落ちる)

(目をそらすりん)

りん) 痛っ!

志ん生) 今松!

今松) あっ、はい。

志ん生) 散歩行くぞ。

 

五りん) 河西選手を見習って、

 日暮里の老人も特訓中でございます。

 

りん) 大丈夫?

今松) 大丈夫です。

りん) よっ、よっ…いくよ。

今松) せ~の!

りん) よっ!

今松) ちょっと待って下さい。

(志ん生を背負おうとする今松)

 

**********

 

選手村の場所は、朝霞にほぼ決まりかけていましたが、

まーちゃんは、諦めませんでした。

 

政治) ここ、代々木ワシントンハイツ返還を、

 アメリカ側に要求する。

平沢) なぜそこまで代々木にこだわるんですか?

政治) スタジアムの興奮が、覚めない距離でないと駄目

 なんだ。先進国、途上国、黒人白人黄色人種、ぐっちゃ

 ぐちゃに混ざり合ってさ、スポーツだけで勝負するんだ。

 終わったら、選手村でたたえ合うんだよ! あくまで俺は、

 代々木にこだわる。代々木でなきゃ駄目なんだ!

平沢) 私に考えがあります。

政治) おっ、何だね?

平沢) 今この時期、軍の施設を日本に返還し、オリン

 ピックの選手村を建てる。その、アメリカ側のメリット

 とは何でしょう?

政治) 何だ偉そうに。授業か?

岩田) あっ、はい。

平沢) はい岩田さん。

岩田) 日本人の、反米感情を緩和する?

平沢) はい正解。岩田さん正解。

政治) クイズ? えっ、何これ。

平沢) 日米安全保障条約により、米軍は引き続き国内

 に駐留することになった。それが日本国民の反感を買

 ったわけです。連日のデモ行進。アメリカはこれ以上、

 日本との関係を悪化させたくない。

岩田) なるほど。

 

**********

 

<アメリカ大使館>

岩田) ア~ドクター ライシャワー ナイス トゥ シー ユー。

ライシャワー) ナイス トゥ シー ユー トゥ。

平沢) (英)米軍施設を返還するなら、代々木でしょう。

 都心を返してこその、アピールです。そうすれば、

 安保闘争による反米感情も、じき収束するでしょう。

ライシャワー) タシカニ ソレハ イチリ アルネ。

平沢) でしょ?

 

**********

 

東) アメリカにとって得だと吹き込んだわけね、

 ライシャワー大使に。こっちに何の相談もなく!

政治) うん? おい、誰だ! ここにおいなりさん置いたの。

岩田) あっ、すいません、空いてたんで。

政治) 空いてない。ここは、選手村が建つんだバカ野郎め。

東) 頼むから勝手に動かないでくれよまーちゃん! 朝霞

 で進めてるんだよもう。政府と建設省と東京都と埼玉県

 の承認を得て、道路工事も始まってる! 笹目通りなんて、

 埼玉県民はオリンピック道路って呼んでるよ。

 今さら代々木? そんなの埼玉県民が納得しない!

政治) えっ? 埼玉県知事でしたっけ? 

東) 都知事だよ! 誰がした都知事に? まーちゃんだよ!

政治) それはまあ、ごめんなさいしますけど、でも…。

津島) 60億、要求してきたそうだよ。

政治) えっ?

津島) 60億。なあ?

東) してやられたよ~。ワシントンハイツの立ち退き料

 60億払うなら返還するとアメリカは言ってきた。現在

 暮らしてる兵士の家族800世帯分の住居、新たな土

 地を見つけて建設することが条件だと。

岩田) ここが、60億…。

津島) 大変なことしてくれたね~。

政治) そう…みたいですね。

津島) どうするんだい? 60億。

政治) ええ…ええええ…考えてますよ。少なくともあんたよりは。

東) まーちゃん。

政治) 安くあげたいだけの、小役人はすっこんでろってんだよ。

 いいか! これは、道路整備するためのオリンピックじゃないよ。

 選手第一! 選手たちが、日本の印象を外国に持ち帰って、

 日本の評判を上げるんだよ!

治五郎の声) そこだよそこ!

(声に振り向く政治)

(壁に治五郎の肖像画)

東) とにかく…国の財政に頼るしかありませんね。

津島) 池田君、紹介しようか?

東) そっか。津島さんは池田総理と古いつきあいでしたね。

津島) 私の秘書をしてたからね。まっ、多少は顔が利くと思うよ。

東) つないでもらっていいですか?

津島) ああああもちろん。

東) あっ、すいません。

津島) あっ…大島君、池田君とこに電話してくれ。

東) 早急に頼むよ。

大島) 分かりました!

 

**********

 

<首相官邸>

津島) おっ。ハハハ…。

池田勇人) やあ、これはこれは津島先生、わざわざ

 ご足労頂いて。オリンピックをやってるそうですね。

津島) そうなんだよ~。

池田) お座り下さい。

対馬) おっ! 大平君、元気そうじゃないか、ハハハ。

 

時の総理大臣は、池田勇人。「経済のことは、池田に

お任せ下さい」と宣言し…所得倍増計画を打ち出し、

日本の高度成長期を牽引した首相です。

 

池田) ハハハハ…。60億は出せんよ君。

 ほっとけば代々木は5、6年で空き地になるんだろ? 

 それもタダで。ねえ、先生。

津島) ハハハハ…。

政治) 総理、これは、必要な出費なんです。ねっ? ねっ?

(目をそらす津島)

政治) オリンピックは3年後です。今じゃなきゃ駄目なん

 ですよ。見て下さい総理。これ…。スタジアムを中心に、

 体育館、プール、選手村が、全て歩いて行けるんですよ。

池田) 全部朝霞へ持ってけば済む問題じゃないのかね?

政治) 全部? これを全部ですか? 

池田) 体育館もプールも朝霞に作る。朝霞なら立ち退き

 料はかからんからな。それが嫌なら、他に金のかからん

 土地を探すんだな。

政治) 津島さん…。

津島) 終わった?

 

**********

 

<バー・ローズ>

政治) 「終わった?」じゃねえよ! 顔が利くっていうから

 連れてったのに、ひと言もしゃべらねえ。役立たずめ。

岩田) まあ津島さんは朝霞が大のお気に入りですから。

政治) 朝霞でやったら、埼玉オリンピックだろうが。

 

**********

 

<料亭>

川島) 朝霞でいいじゃないか。何もたもたしてるんだね?

東) すいません。

川島) フフッ…会ったそうだね、総理に。田畑と津島が。

東) ええ。しかし、金は出せんと…。

川島) 当たり前だよ。えっ? たかが選手の宿舎に60億?

 まったく…津島はボンクラ、田畑はスタンドプレー。

 あの2人にオリンピックは任せられんな。どうした?

 あの2人にオリンピックは任せられんなと言ってる

 んだよ僕は。君の意見はどうなんだね?

 

**********

 

<バー・ローズ>

マリー) あの…お話し中悪いんだけど、

 これ、いつからカラーになるの?

テレビ) 「聖火を運ぶのにらくだを使ったらという案が出ました」。

岩田) おっ、聖火リレー踏査隊。

マリー) もう本当しゃくに障るわ。あの、カラー放送って…

 「カラー」っていう文字、ほら、いつまでたっても

 白黒なのよ。もう…壊れてんのかしら?

(テレビをたたくマリー)

岩田) ママ、カラーテレビ買わなきゃ

 カラー放送は見れませんよ。

マリー) そうなの?

政治) そんなことより、選手村! ねっ?

岩田) 朝霞はタダ、代々木は60億ですもんね~。

マリー) えっ? オリンピックの予算って、

 国が出すもんじゃないの?

岩田) う~ん…スタジアムやプールのように、あとに

 残るものに限って、都と国が折半するんです。

政治) じゃ何かい? えっ? オリンピックが終わった

 あとも、国のために使えればいいのかい? えっ?

 上等じゃんね~。俺のオリンピック!

岩田) えっ、置いてきましたよ。

政治) じゃ、俺が行くわ。

岩田) えっ!? いやいや、田畑さんちょっと…。

 

**********

 

<事務局>

政治) オリンピック終わったあとも使えるもの…。

 終わったあとも使えるもの…。国立競技場…国立

 体育館…プール…え~っと、あと何だ? 国立の…

 国立…国立の…。

治五郎の声) やってるな、田畑。

政治) やってますよ、誰もやんないから。

(秒針の音)

政治) うん?

治五郎の声) いよいよだもんな、田畑。私は今、いくつだ?

政治) え~っと…あっ…。この間墓参りに行った時に、

 亡くなられて22年かって話になったんで、え~っと…。

治五郎の声) 100歳か!

政治) ああっ! えっ…?

治五郎の声) そうか…案外早く来たな、

 2回目の東京オリンピック。

政治) 2回目?

治五郎の声) お前ならやってくれると信じて託した

 んだよ、ストップウォッチを。どうだった? 1回目は。

政治) いや…。

治五郎の声) 私の愛する柔道は、正式種目になったかね?

政治) やってません。

治五郎の声) やってない?

政治) はい。(肖像画を見上げ)1回目は、返上しました。

治五郎の声) 返上?

政治) ええ…返上です。すいません。

治五郎の声) またまた~ハハハハハ!

政治) 本当なんですよ。先生が、亡くなられた直後に…。

治五郎の声) 何だと!?

政治) ああっ! あっ!

(肖像画が落ちる)

政治) すいません! 本当すいません! 

 あ~大丈夫ですか? あっ…。

(肖像画を抱き起こす政治)

治五郎の声) オリンピックを返上? なんと愚かな。田畑! 

 命懸けで持ち帰ったんだぞ、カイロから。氷川丸で!

政治) うるせえ。

岩田) 田畑さん?

政治) えっ? お~岩ちんどうした?

岩田) いや…大丈夫ですか?

政治) あっ…ちょっと、ねえ…あっ、いや…

 酔っ払っちゃったみたいだな。

岩田) ああ…。

政治) 落ちてきたから。

岩田) 落ちた?

政治) すぐ戻るから、タクシー呼んどいて。

岩田) はい、タクシー。

政治) ねえ…。

(立ち去る岩田)

政治) しゃべんないね。

(脚立に上がり、肖像画を掛け直す)

治五郎の声) 返上してどこでやったんだ? オリンピック。

政治) えっ?

治五郎の声) 田畑!

政治) やってません。

治五郎の声) やってない? 何をやってるんだね君たちは!

政治) しょうがないでしょうよ! 

 それどころじゃなかったんだよ。

岩田) 田畑さん?

政治) 何でもないよ。大丈夫だよ。行け早く。

岩田) タクシー来てる。

政治) 行け!

岩田) 待ってますから。

政治) うん。

治五郎の声) 情けない。政治とスポーツは別物と

 繰り返し口を酸っぱくして言ったろ! 

(肖像画に背を向け、歩き出す政治)

治五郎の声) そりゃそうと、田畑…。

政治) しゃべるね、ベラベラと。いいけど? 付き合うけどこの際。

治五郎の声) 今度のオリンピック、どこで見ればいいのかね?

政治) 知らねえよ

治五郎の声) 私じゃない。国民がだよ。

政治) 国立競技場は、8万人収容できるように改装しました

 けど、あ~あとは、それ以外の人はアレじゃないですか、

 テレビで見るんじゃないですか?

治五郎の声) 駄目だよ。テレビってあれだろ? ベルリンの選

 手村にあった…。でかいだけで全然映らなかったじゃないか。

(選手村の模型を見る政治)

政治) だいぶ小さくなって…。今じゃカラーテレビの時代

 ですよ。ハハハハハ。あるじゃんね~。オリンピック終わ

 ったあとも使えるもの!

 

**********

 

<首相官邸>

(楊子を刺した、赤いタコ型のウィンナーを模型に立てる)

池田) それは何だね?

政治) 放送局です。すいません。家内が作りました。

 アンテナのつもりです。

池田) つまりNHKだね。ワシントンハイツを米軍から

 買って放送局を建てると。いいことあるかね?

政治) はい。カラーテレビが売れます。メイン会場のそば

 に放送局があれば、鮮明な放送を確実にお茶の間にお

 届けできます。そうなると…白黒よりはカラーテレビです

 わな。皇太子ご成婚の際に、白黒テレビがバカ売れして、

 莫大な、経済効果を生んだ。「今度は、オリンピックが来

 るそうよ、あなた。カラーテレビ、欲しいわ~」。「そうだな

 ~。ボーナスも出るし、買い替えるか」。ねっ?またバカ

 売れだ。「ねえあなた。お隣さん、カラーテレビに買い替

 えたそうよ。うちも欲しいわ、カラーテレビ」。「う~ん、よ

 し! お父さん、頑張って、働くぞ」。はい、所得倍増!

池田) フッ…うまいね君。乗せられそうだよ。

政治) だって欲しいですもん、カラーテレビ。

 高いんだ~。1台、60万円もするんですよ。

池田) 60万?

政治) 1万台で?

池田) 60億。

政治) そう、60億! たった1万台で元が取れちゃう!

 ねえ、放送局…あれ? 食べちゃった。

(ウィンナーを食べる池田)

池田) うまいね。

政治) 買うなら今です! だって、オリンピック終わった

 あと、放送局造っても、意味がないですからな。

 どうです? そんな代々木ワシントンハイツ、

 今なら、たったの60億ですよ。

 

**********

 

(俺のオリンピック模型を事務局に持ち帰る政治)

政治) ああ…はあ…よし。

岩田) どうぞ。

政治) ああ…。直談判は、これを最後にしたいもんだね。

岩田) 田畑さん…。

政治) 代々木に決まった。

(拍手と歓声)

(東都知事の前に立つ政治)

政治) すまんね東龍さん。いろいろ迷惑かけるけど。

東) 仕方ないよ。まーちゃんのオリンピックだもんね~。

(拍手)

政治) ありがとう!

 

**********

 

テレビ) 「朝霞で進められていた選手村が、代々木に

 変更されました。東京都が予定していた、道路建設

 の見直しなど、混乱が予想されます」。

 

五りん) っていうわけで、今は代々木の方で大工事や

 ってます。果たして間に合うのか間に合わねえのか。

 まーちゃんの夢のオリンピックが近づいてきています。

 

(急ピッチで進む解体と建設)

 

**********

 

<境内>

志ん生) え~長屋に住む、たいこもちの久蔵は、

 人間はまじ…真面目…駄目だなこれ。

(一人縁台に座り稽古をしている志ん生)

 

**********

 

児童たち) 「オリンピック、オリンピック。こう聞いただけ

 でも、私たちの心は躍ります。全世界から、スポーツの

 選手が、それぞれの国旗をかざして集まるのです」。

 

大松) はよせえよアチャコ! アホ、何しとんねん…。

 

児童たち) 「全ての選手が、同じ規則に従い、同じ条件

 のもとに、力を競うのです。遠く離れた国の人々が、勝

 利を争いながら、仲よく親しみ合うのです。オリンピック

 こそは、まことに世界最大の平和の祭典と言うことがで

 きるでしょう」。

 

**********

 

男性) さあ金栗四三先生、出版記念会です!

 

徐々に高まるオリンピック熱。

大塚でも、ちょっとした事件がありました。

 

(自叙伝、「走れ25万キロ」のサイン会)

円谷幸吉) 円谷幸吉です。

四三) つぶらや? どぎゃん書きます?

円谷) マルの「円」に、山谷の「谷」です。

四三)  マルの「円」に、山谷の「谷」。

円谷) こうきちは海の幸山の幸の「幸」に、

 大吉中吉の「吉」です。

知恵) 「円谷さん」でいいでしょう? 後ろがつかえてんのよ。

円谷) あっ、すいません…。

四三) 円谷さん。はい…がまだせ。

円谷) ありがとうございます。

知恵) はい次次。はい終わり終わり。ねえねえねえねえ、

 彼見たことない? 「てれび寄席」で、「オリムピック噺」

 っていうのやってるの。

(五りんを見る四三)

知恵) アッハハハハ…

 テレビ見ないか。おじいちゃんだもんね。

四三) アハハ…すみまっせん。お名前は?

知恵) あっ、古今亭…。

五りん) あっ。小松金治です。

四三) 小松金治。

五りん) はい。

四三) 小松、金治。

(書いたばかりの文字を見る四三)

四三) 小松…? こ…小松…。ばばばばば~!

五りん) ええっ…。

(椅子から転げ落ちる四三)

四三) ばばっ…。

五りん) あっ…。父が、お世話になりました。

四三) あっ…。

 

**********

 

<境内>

五りん) スッスッハッハッ、スッスッハッハッ…。

(金栗足袋で走ってきた五りんが足を止める)

(背中を丸め、縁台に座っている志ん生)

五りん) 師匠!

志ん生) よっ。

五りん) 遅くなりました。

志ん生) うん。

 

**********

 

五りん) あいてっ。

(志ん生を背負う五りん)

五りん) あっ…よっ! よっ! あっ、大丈夫ですか? 

 師匠。もう少し上がれます? あっ…。

志ん生) あったかくなってきたな。

五りん) ええ。桜も、散っちゃいましたからね。

志ん生) 梅雨が来て、セミが鳴きだして、

 じきに、秋が来る。紅葉の季節だ。

五りん) ですね。

志ん生) オリンピックが来るまでに、私は、高座に、

 上がれるかな? 上がれないような気がするな…。

 ここんとこ、まるきり駄目だから。諦めた方がいいかな?

五りん) 師匠いきますよ…せ~の、よっと! 

 「え~浅草の三軒町の、長屋に住んでいる、たいこもち

 の久蔵さんは、人間は真面目だが、大酒飲みが玉に」。

志ん生) ヘヘッ、「富久」か?

五りん) 「火事だ~火事だ火事だ! 邪魔だ邪魔だ!

 ってほかにいねえな邪魔なやつは。えっ? いや~

 さみい~! ううっ、黙ってたらもう、寒くてしかたねえ

 や! もうコンチクショー!」。俺だって、こんぐらいで

 きるんですから、大丈夫ですよ。何でも、「志ん生の

 『富久』は」…。

 

**********

 

(縁側に置かれた本)

美津子) 「走れ、25万キロ」。お母ちゃん、この本どうしたの?

りん) あっそれ? 五りんが買ってきたのよ。

 おとうちゃん退屈するだろうって。

美津子) え~?

 

**********

 

<サイン会>

五りん) 父が、お世話になりました。

四三) あっ…。

五りん) あの、もしよかったら、ひと言、

 添えて頂いてもいいですか?

四三) ああっ…あっ…。

五りん) あの、ひと言、欲しいんですけど。

四三) ばばば…。

(五りんを抱き締める四三)

四三) ああっ!

五りん) 何でも、「志ん生の『富久』は、絶品」だそうですよ。

(サインの横に「志ん生の富久は絶品」の文字)

 

**********

 

志ん生) 圓生じゃねえのか?

五りん) いやいや…。

 

**********

 

昭和37年春 1962

 

1962年、ポスター第2弾が完成しました。

 

政治) これだよ亀ちゃんこれ! 見たまえこの、勢い!

 ねっ? これは、復興へののろしだよ。

 

短距離走者のスタートダッシュを見事に捉えたそのポスター

は大評判となり、いよいよオリンピックムードは盛り上が…

 

政治) 盛り上がってないんだよ!

松澤) あ~。

政治) 何なんだ日本人。ここまで無関心とは、あっぱれだな。

松澤) 大丈夫まーちゃん。まだ2年ある。

政治) 2年だよね? 床屋行ったら言うんだよおねえちゃんが。

 「いよいよ、あと2か月ですね、ジャカルタオリンピック」って。

 ジャカルタはアジア大会じゃんね? びっくりしたよ。びっくりし

 て飛び上がったら、いつもより刈り上がっちゃった。

岩田) アハハ、大丈夫です。大して変わってないですから。

政治) やかましいっつうの。何かないの?

 若者の、無関心ムードを一掃するアイデアは。

森西) お話し中すいません。

政治) 誰だ? きったねえな。

岩田) いやいや、聖火リレー踏査隊の森西さんですよ。

森西) 汚えとは何だ汚えとは! 走ったんだぞ!

 アテネからシンガポールまで2万kmだよ~!

政治) 運ちゃんか? あっ、忘れてた。

森西) 忘れてた!? うそだろう?

政治) どうだった?

森西) どうもこうもないよ! どうもこうもねえよな!? ねえよな!?

 大丈夫じゃねえよおい。本当に…。砂ぼこりと熱気で、全然前に

 進めねえよ! タクラマカン砂漠、車で半年かかったよ!

 あとこれお土産。サソリの死骸だほら。

岩田) うわ~!

森西) こんなのがウヨウヨいるぞ。ウヨウヨいるんだよ。

 あんなとこで、たいまつなんか持って走ってごらんな

 さいよ。ミイラになっちゃうよ!

松澤) え~聖火はアテネから、シルクロードを通り抜け…

森西) 通り抜けられません! 無理だ無理だ無理だ無理だ!

 バカなこと言ってんじゃないよ! タクラマカンってどういう意

 味か知ってます? ウイグル語で、「帰れない場所」、または、

 「死」、だってよ。先に言えよこの野郎! あああ…ううっ…。

政治) よしよし、よしよし…! 分かった。よく帰ってきた。

 よし。今日は飲もう! なっ? 岩ちん、酒買ってこいお前は。

岩田) はい。

森西) 疲れた…疲れたよ…。

 

事務総長、まーちゃんの音頭で酒盛りが始まるってえと、

役員から若いボランティアまで、みんな、こぞって参加した

そうです。払いは毎回、まーちゃんのポケットマネーから。

 

松澤) 皆様の健闘を祝して歌いましょう!

(歓声)

松澤) さんはい!

一同) ♪走れ 大地を 力の限り 泳げ正々 

 しぶきをあげて 君らの腕は 君らの脚は

(料理長の村上が料理を運んでくる)

岩田) えっ、うまそっ! えっ、これ何です?

村上) まずこちらは、ケバブです。中東の肉料理。スープ

 はタイのトムヤムクン。こちらは、ケニアのカランガ。

男性) いや美味しそうですけどこれ、盛り付けは? これ。

村上) それはご自分でお願いします。

 皆さ~ん、ビュッフェですよ~!

 好きなメニューを好きなだけ取るんです。

(歓声)

政治) 食べろ食べろ。

村上) たくさんあるんでどうぞどうぞ。はいはい、たくさん…。

政治) 手で食え手で。ほらほら。手でいいんだよ手で。

男性) うわ~おいしそう!

松澤) 全部いいの? どうしよう、加減が分からない!

女性) おいしそう!

森西) くれくれくれくれ…。

岩田) あっ、津島さん。

政治) うん? あっ、津島さん! たまにどうです? 一緒に。

  あっ…あ~そうですか。

(立ち去る津島)

 

**********

 

<首相官邸>

川島) オリンピックは経済成長の起爆剤ですよ総理。

 政府がこれを利用しない手はないでしょ。

池田) しかし川島さん、政治は不介入が基本ですからな。

川島) 今のままでは、スポーツ界の連中だけのバカ騒ぎ

 で終わってしまいます。それがもったいない。国際舞台

 で、日本の株をあげる。そのためにもしっかりと政府が

 舵を取るべきだと思うんだよな~僕は。

 

**********

 

この時、オリンピック担当大臣が初めて作られ、

川島正次郎氏が、任命されました。

 

川島) まあ早い話、トトカルチョの代わりですよ、僕は。

 ねっ? 金が集められないから政府に泣きついてきた

 わけでしょ? 

政治) そっちが勝手に首突っ込んできたじゃんね~。

川島) 200億かかるんですよ、東京オリンピック。道路

 を造るのは建設大臣、旅客を運ぶのは、運輸大臣、

 選手強化は文部大臣、それらを総合的にまとめるの

 は誰ですか? 僕です。ねえ? まあ乗りかかった船

 ですから、やるからには立派なものにしますよ。

(拍手)

川島) ちょちょ…ほらこういう時はね、みんなでこう握手

 しながら…。ほらほら都知事も。笑顔の写真を頼むよ。

 そうそう、笑って笑って。何枚も撮って。ハハハ…。

(ニコリともしない政治)

川島) どう? 撮れてる?

 

**********

 

<廊下>

川島) しかし君も苦労するね。

政治) えっ? 私が何です?

川島) 鈍いね…。津島さんだよ。君あれが会長じゃ

 やりづらいんじゃないかと言ってるんだよ。切れ者

 だった、かつての神通力はもうない。何をするにも

 優柔不断で後手後手じゃないか。大体、彼がもた

 もたしてるから、選手村の…。

政治) いえいえ!

川島) アメリカのいいようにされてしまったじゃないか。

政治) それは違います。体面上、アメリカの要求をの

 んだように見せかけ、こちらの希望を通したのです。

 確かに、津島さんとは、足並みがそろわぬこともあ

 るが、大した問題じゃないですよ。

川島) 大した期待しとらんからだろう君が。僕も弱っ

 てるんだよ。何しろ、河野一郎君はじめ、政府要人

 が口をそろえて、津島さんではオリンピックはやり

 遂げられんだろうって言うんでね。

政治) 河野が?

川島) うん。総理も同意見だよ。

 何しろ、金を出したら口を出すのが、政府でしょ?

 

**********

 

<都庁・知事室>

東) 総理が言うんじゃよっぽどだな。

政治) 全く、「寝耳に水」だよ。

 政治家ってのは、恐ろしいことを考える。

東) 俺ん時は持って回った言い方じゃなかった。

 

(回想)

川島) どうした? あの2人にオリンピックは任せられんな

 と言ってるんだよ僕は。君の意見はどうなんだね?

東) あっ、いや…。田畑は、時に常軌を逸することもあり

 ますが、オリンピック運営の中枢といいますか…。

 

東) 「まーちゃんは欠かせない」と答えたら、ニヤッと笑って…。

 

(回想)

川島) 「田畑は要る」と。津島はどうだね?

東) あっ、いや…。

 

東) 背筋が凍ったよ。

 これが寝業師、川島正次郎の正体かってね。

政治) 寝業師?

東) とにかく池田首相まで反対とあっちゃ無視できん。津島

 さんには悪いが、どうにか傷つけずに退いて頂くほか…。

政治) いや…津島さんは、俺が守るよ。

東) まーちゃん。

政治) 川島のいいなりになどならん。断固立ち向かうよ。

 

**********

 

(事務局でテレビを見る政治)
テレビ・川島) 謹んでお受けしました。つつがなく
 やってまいりますが、まあ早い話、トトカルチョの
 代わりですよ、僕は」。
岩田) さっき喫茶店にいい子がいたんですよ。
大島) 女の話? もう~。
岩田) いやいや大事ですからね。
 田畑さん? あの、灰が…。あの…田畑さん?
政治) 熱っ! 熱っ…。
岩田) ほら…ほらみろ。すいません。
 もっと早く言えばよかったですね。
テレビ・五りん) 「ホップ ステップ ジャンプ~!」。
政治) 誰だ? テレビつけたの。
岩田) いや、ついてましたよ。
政治) 消すな!
テレビ・五りん) ええ…え~アムステルダム…」。
政治) 見つけたぞ岩ちん。
岩田) 見つけた? 「テレビ寄席」…。
テレビ・五りん) 「続きまして1932年、ロサンゼルスオリンピックで、
 これまたね、三段跳びの選手でございますからね。大島鎌吉」。
大島) えっ、呼んだ?
テレビ・五りん) 「ホップ ステップ ジャンプ…いてっ」。
政治) いるじゃないかよ…無関心じゃない若者がここに!
テレビ・五りん) 「興奮して選手の名前を

 言い間違える河西アナウンサー」。

岩田) 何だこいつ…何でこんなオリンピック詳しいんだ?

政治) 河西っておい…好きだろ絶対。

 オリンピック絶対好きだろこいつ!

岩田) こりゃ相当なオリンピックバカだ。

テレビ・五りん) 「あっ、ゲネルゲンも出てきました!」。

政治) 「ゲネルゲン」出たよ、おい。岩ちん。

岩田) はい。

政治) こいつをオリンピックの広告塔にしよう。

岩田) すぐ調べます。

政治) ああ。すごいぞこいつは。

 

**********

 

(高座に五りん)

五りん) 今日は疲れました…本当にもう…。

岩田) いた! 待って! ごめんなさい、ごめんなさい…。

今松) ちょっとちょっといや…ちょっとお客さん、やめ…。

岩田) いいから!

今松) すんげえ力だ!

岩田) 見つけた!

五りん) えっ、誰?

 

**********

 

NHKが渋谷にある理由はこういうことだったのか~!

うんうん、ここじゃなきゃ駄目じゃんね~! 代々木に

こだわったまーちゃん偉し。いい場所だと思うよホント。

川島が憎ったらしくて…いい役もらったね、中の人!

知らないってもったいない。いだてん、マジありがとう。



●「いだてん~東京オリムピック噺~」HP

「いだてん~東京オリムピック噺~」関連ブログリスト
NHK(大河/時代劇/スペシャル・その他)ドラマ関連ブログリスト


ランキングに参加しています。
ポチっとしていただけると、嬉しいです♪
にほんブログ村 テレビブログ テレビドラマへ
にほんブログ村
にほんブログ村 テレビブログへ
にほんブログ村