「なつぞら」 第146回
第25週 「なつよ、千遥よ、咲太郎よ」
千遥の天丼でやっと母を思い出すなつの巻
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土曜日、なつと咲太郎は、
そこに向かいました。
信さん、光子さん、
明美ちゃんも、同行しました。
(店に入る咲太郎)
(戸が開く音)
女性の声) いらっしゃいませ。
**********
<料理屋「杉の子」>
孝子) いらっしゃいませ。
咲太郎) 予約した奥原です。
孝子) お待ちしておりました。
(料理をしている着物に割烹着姿の千遥)
(回想)
千遥) お兄ちゃん!
咲太郎) 千遥。
千遥) いらっしゃいませ。
咲太郎) あの、カウンターでもいいですか?
千遥) どうぞ。
孝子) ご注文は?
咲太郎) とりあえず、ビールで。
孝子) かしこまりました。
咲太郎) 料理はお任せします。
千遥) はい。
咲太郎) あの…お若いですが、
女将さんですか?
千遥) はい。
咲太郎) 女将さんが、料理を作るんですか?
千遥) 私は料理人ですから。
咲太郎) そうなんですか…。
千遥) 何かお好みはございますか?
咲太郎) あ、それなら…
最後に、天丼が食べたいです。
お願いできますか?
千遥) 天丼ですか?
咲太郎) それが、どうしても食べたくて…。
お願いします。
千遥) 天丼…。
はい、できます。分かりました。
(料理を作る千遥の姿をじっと見つめるなつたち)
千遥) 前菜になります。
一同) 頂きます。
なつ) おいしい! とてもおいしいです!
千遥) ありがとうございます。
咲太郎) 本当にうまい…うまいよ女将さん!
千遥) どうも。
上田) 皆さん、お友達ですか?
咲太郎) いえ、私たちは、
こう見えて家族なんですよ。
上田) ご家族ですか?
咲太郎) 彼女は、私の妻です。
光子) 光子と申します。
千遥) どうも。
咲太郎) それから…。
なつ) 私は、妹です。
明美) 私はその下の妹です。
最近まで北海道にいたんですが、
東京に転勤になって。
(回想)
千遥) 明美ちゃんに似てるね。
明美) 千遥ちゃんにも似てるよ。
(カウンター席の明美に小さく会釈をする千遥)
信哉) 僕は彼女の上司ですが、ここにいる
みんなとは、昔から、きょうだいのように
つきあってるんです。
上田) なるほど、いいですね。
あたりお願いします。
(出汁の味見をする千遥)
**********
信哉) そこにいる咲太郎という男は、
こう見えて社長なんですよ。
上田) 社長さんですか?
咲太郎) いや、
それほどのもんじゃないですよ。
信哉) テレビの外国映画や、テレビ漫画
に声を吹き込む俳優がいるでしょう?
そういった俳優のプロダクションを
経営してるんです。
上田) へえ~芸能関係ですか。
それはご立派な。
信哉) だからこんな素敵な方とも、
結婚できるんです。
上田) 全く羨ましい限りで。
咲太郎) いや、それほどのもんじゃ…。
光子) そこはあなたが謙遜しなくてもいいの。
咲太郎) あ…いや、実際、
俺には過ぎた女房なんです。
光子) ちょっと咲ちゃん、何言ってるの?
咲太郎) よく俺なんかと、
結婚してくれたと思いますよ。
とても、心が広くて、優しいんです。
光子) ちょっと…。
千遥) いいですね。
咲太郎) はい。
上田) お願いします。
明美) そちらもご夫婦で料理人なんて
素敵じゃないですか。
上田) あっ、いえ、私はただの板前ですよ。
明美) あ…違うんですか?
千遥) 主人は店には出ていないんです。
明美) そうですか。
**********
(奥の部屋で一人ソラの絵を描いている千夏)
**********
<店>
千遥) 焼き物です。
なつ) まさか、女将さんが…女の人が料理
をされているとは思いませんでした。本当
に一生懸命修行されたんでしょうね。
だからここまで…。本当にすごいです。
千遥) いえ…親方に恵まれただけです。
なつ) 親方? そうですか…。私も同じです。
人生で、いろんな師匠に恵まれました。
おかげで、こうして生きてます。
(なつと千遥の脳裏に浮かぶ泰樹の姿)
(なつから目をそらす千遥)
千遥) そうですか…。
**********
(天ぷらを揚げている板前の上田)
(器に入れたご飯にタレをかける千遥)
(揚がった天ぷらをタレにくぐらせ、
ご飯の上に盛り付ける千遥)
千遥) お待たせしました。天丼です。
(手を合わせる咲太郎)
一同) 頂きます。
なつ) おいしい…。
信哉) うん、本当においしい…。
明美) おいしいです!
光子) こんなにおいしい天丼は、
初めて食べたわ。
千遥) ありがとうございます。
光子) ちょっと、どうしたの?
咲太郎) これだ…。これだよ…。
千遥) 何か、ございましたか?
咲太郎) いや…戦死した父が、
昔作ってくれた天丼と同じ味なんです。
間違いなく…この味だ。
俺の…俺たちの父親も、
料理人だったんです。
千遥) そうなんですか?
なつ) 私も幼い時の記憶しかないですけど…。
咲太郎) その父親が昔、
天丼を作ってくれたんです。
その味が忘れられなくて…。
食べたくて…。
どうして女将には、
それが作れたんでしょうかね…。
不思議だ…。本当に不思議だよ…。
(なつの記憶がよみがえる)
(天ぷらを揚げる父の背中)
(側で器に天ぷらを盛り付ける割烹着姿の母)
なつ) 違う…。
咲太郎) えっ?
なつ) ねえ違う…思い出した。
咲太郎) 何を?
なつ) お母さんだよ…。
空襲で死んだお母さんが…
いつも作ってくれてたんだよ天丼は…!
お父さんが揚げた天ぷらを、いつも横で
働いてたお母さんが、ダシをとって、タレ
を作って…。
(回想)
母) はい、お待ち遠さま。
なつ) 思い出した…。
どうしてだろう今頃…。女将さんが、
それを作ってた母に似てたから…。
それで思い出したのかもしれません。
咲太郎) そうか…。(涙)
そうかもしれない…。
なつ) うん…。
(天ぷらを頬張るなつ)
なつよ、咲太郎よ…
父さんと、母さんはずっと、
この時を、待っていたんだ。
**********
天丼の味…いや、タレの味は母の味だった~!
味を知らないはずの千遥が、母親の味を再現…
なんという奇跡! DNA恐るべし!すごいね~!
…と素直に思えたらよかったんだけど…。このた
めに、ず~っと母親は忘れられていたんかいっ!
としか思えなかったよ。そもそも母親の話が全く
出てこないのが不自然すぎて。空襲で亡くなった
というのだから、咲太郎もなつも、母親のことを
覚えていないはずはなく、母親を恋しがってもお
かしくはないんだよね。なのにそういう描写はな
くて。血の繋がらない関係を強調したかったのだ
ろうけど、あまりにも不自然すぎた。実母と義母、
それぞれへの愛情が存在していいはずなのに。
もっともっと、深い話にできただろうと思うのに…。
やっとやっとなつと咲太郎に思い出してもらえた
お母さん…。天丼以外も思い出してあげて~!
ところで…お父さんの背中は本物だったようで。
ウッチャン、後ろ姿だけでも朝ドラに出られてよ
かった!というべきところなのだろうか…微妙w
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