大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」第5回~雨ニモマケズ | 日々のダダ漏れ

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大河ドラマ 
「いだてん~東京オリムピック噺~
 



第5回~雨ニモマケズ

 

 

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志ん生) 日本橋に魚河岸が来る前は、芝の

 浜にですね、魚河岸がございまして…。

美津子) 「芝浜」だねえ。

 珍しいね、暮れでもないのに。

志ん生) そこを通り越して、

 南へ下りますと、品川の宿(しゅく)。

美津子) 「芝浜」じゃないね…。

志ん生) 更に南へ行きますと、羽田。

美津子) 羽田行っちゃったよ。

志ん生) そこであの、日本で初めてのオリン

 ピックの、予選大会が開かれたという…。

 

**********

 

<記者会見場>

治五郎) 場所は…羽田運動場。

 この地にて、我が国未曽有の、

 一大運動会を、開催せんとす。

 

**********

 

時は明治44年11月19日。

羽田の空は、鉛色。

初めてのマラソンに挑む、金栗四三。

え~迷子になってるようで。

 

競技場では、

100m走の予選が始まりました。

早稲田、慶応、帝大など、

全国の学生が健脚を競い合う中、

審判員として高みの見物を

決め込んでいた、三島君。

本人いわく、生来の好戦癖は

ムクムクと沸き上がり…

 

弥彦) ちょっと待った~!

(コースへ飛び出す弥彦)

(上着を脱いで投げる弥彦)

女学生) キャ~!

女学生) いけ~三島様~!

 

**********

 

弥彦) いっちょやりますか~?

(歓声)

 

**********

 

中沢) 支度して。よござんすか?

(号砲)

(一位でゴールする弥彦)

吉岡) なんと、12秒~!

弥彦) ありがとう、ありがとう!

 

**********

 

永井) あいつ…最初っから走る気

 だったんじゃないのか?

可児) ですよね。

 スパイク履いてましたもんね。

治五郎) スパイクを?

永井・可児) ええ。

 

**********

 

(弥彦の首にメダルが3個)

弥彦) 取ったぞ~!

 

100m、400m、800m走でぶっちぎりの

優勝をもぎ取った、三島君。

 

**********

 

ところで、

すっかりおなじみになったこの写真。

(ストックホルムオリンピック入場式の写真)

国旗を持った男の顔が見えませんが、

視点を変えますと…。

そう、痛快男子、三島弥彦でございます。

これ、同じ時に違うカメラで撮った写真。

彼もまた、短距離走で、日本初のオリン

ピック選手だったのです。って、さっきから

あたしばっかりしゃべってますが…。

 

(高座で居眠りしている志ん生)

客) いいよ。寝かしといてやんなよ。

(拍手と笑い声)

志ん生) (いびき)

 

**********

 

<マラソン競技(10里/25マイル)>

永井) 決して無理はするな!

 体に変調が起きた場合、無理せずその場

 で救護班を待て。歩いてもいい。休んでも

 いい…生きて帰ってきてくれたまえ!

 

マラソン競技には、北海道の佐々木、慶応

の井手など、いずれ劣らぬ健脚が19名。

名門早稲田からも、有望な選手が出場。

 

**********

 

(スタートラインに立つ四三)

四三) 10里…。

 

やれるか…?

いや、やってみんと分からんばい!

(号砲)

 

**********

 

(目を覚ます志ん生)

志ん生) あっ…何だ? スタート…

 何だ? 始まったのか?

 

**********

 

最終種目、マラソン競技、

決戦の火蓋が今、切られました。

実況は私、美濃部孝蔵で、

お送りいたします。

 

まず首位に躍り出たのは、

佐々木政清選手。

北海道小樽水産の健脚です。

2位につけるのは、慶応の井手伊吉。

浅草のマラソン大会の覇者です。

スタートと同時に、

激しい雨が降ってまいりました。

 

おっ? おっ、おい、おい…清公!

俺のダチの清公が3位!

こりゃ大健闘です!

ゼッケンに、「早せ田」と書いてますが、

小学校しか出ておりません。

手の形を見りゃ一目瞭然ですが、

普段は、車夫、車引いてます。

頑張れ、清公! おい、浅草の星!

 

ところで、我らが韋駄天、

東京高師金栗四三は…。

あ~4位…いや、うん? 5位? うん? 

6位か? 最下位です。同じく高師徒歩

部の野口、橋本を両脇に従え、たった

今スタジアムを出て行きました。

 

それではコースを説明いたします。

競技場から穴守稲荷の参道を抜け、

多摩川沿いに土手を走り、六郷橋を

渡ると川崎です。そこから東海道を

南へ下って鶴見川を渡り、東神奈川

で折り返す。10里、25マイルという

長距離に、皆、初めて挑みます。

 

**********

 

<2km地点の穴守稲荷>

四三) 飛ばすな。飛ばすな。焦らず。

(野口と橋本に声をかける四三)

四三) 焦らず。

 

**********

 

志ん生) 「参道はお前、

 横殴りの雨でしょうがねえな。

 ヒューヒュー鳴りやがって、

 視界もままならねえ」。

美津子) 何?これ。お父ちゃん

 いつの間にこんなの稽古したの?

志ん生) 「何か落ちてるぞ…財布か?

 ヘヘッ、財布ならいいのいにな」。

今松) ほら、やっぱり「芝浜」ですよ。

五りん) しばはま?

 

「芝浜」。浜辺で財布を拾ったが、酒を

飲んだせいで夢になってしまう魚屋の噺。

 

志ん生) 「ひと、ふた…足袋だこれ!」。

美津子) 「芝浜」じゃないねえ。

 

**********

 

<4.8km地点、多摩川土手>

 

あれ? あら、おい、今の清公じゃねえのか?

 

吉岡) お~いお前!

 早稲田の青春はどうした!? お~い!

四三) ゆっくり行くばい。

 

東京高師、序盤はわざとゆっくりした

ペースで、レースを進めます。

 

**********

 

<8.2km地点、六郷橋>

 

雨があがり、青空広がる六郷橋。

先頭は小樽の佐々木。追いかける

慶応の井手と、首位を争っております。

 

**********

 

<5.5km地点、多摩川土手>

 

え~一方こちら5km地点。

強い日差しに落伍者が出始め、

金栗四三は着実に順位を上げています。

 

志ん生) 「あっ、また倒れた、おい。

 こっちでも…。何だ何だ? おい。

 まるで地獄絵図じゃねえか。よし…」。

 大きな野心がムクムクと沸き上がって

 くる。「こうなったら、一人でも余計に

 抜いてやろうじゃねえか」。

 

四三) 野口君、お先に!

 

**********

 

<9.6km地点、川崎>

(人だかり)

沿道は、マラソンなんざ初めて

見たってんで、このありさま。

 

**********

 

<13km地点、鶴見川>

(前だけを見て走る四三)

 

**********

 

<ゴール地点・羽田運動場>

治五郎) これはあれかね? 永井君。

 待ってるしかないのかね?

永井) はい?

治五郎) せっかくスタジアムを造ったんだ。

 みんなが出ていっちゃったら、

 見られんじゃないか。

永井) いやしかし…そういうもんですから。

可児) 西洋人もこうして、

 待ってるんですかね?

永井) だから、そういうもんなんだよ。

治五郎) つまらんな~。

 なんとかならんもんかね?

中沢) あっ、ちょっと…。

永井) じゃあ何かやりますか!?

 将棋でも、指しますかな?

男性の声) 伝令~!

治五郎) どうした!?

男性) 先頭の佐々木、

 折り返し地点をまもなく通過です。

治五郎) おう、おう…。

永井) 落伍者は?

男性) 現在8名です!

 

**********

 

<東神奈川・折り返し地点>

 

え~こちら折り返し地点、折り返し地点です。

現在金栗、なんと4位につけております。

 

志ん生) おい、佐々木か? 今のおい。

 2位の井手が、折り返しやがった。

 何だ、フラフラじゃねえか。

四三) 失敬!

(3位の白井を抜く四三)

 

志ん生) 「おい、3等だよ3等!

 あと2人抜きゃ1等賞だよ!

 これひょっとしたら、

 勝てるんじゃねえか? おい。ええ?」。

 

四三) しめた!

(道端で水をかぶっている井手)

井手) えっ、来た~!

男性) 3位が2位の慶応に、

 追いつこうとしています!

 3…3位は…51番、金栗四三!

 東京高師、51番金栗四三、

 東京高師です。

四三) 失敬します!

(井手を追い抜き、2位になる四三)

 

志ん生) 「ハッハッ…よし!」。

 雨風はますます強くなってくるけど、

 四三は向かい風に向かって、

 頭から突っ込むように走った!

 

平田) 金栗君! あと、4里だぞ!

四三) 4里?

平田) うん!

四三) 4里?

平田) 頑張れ~!

 

これまで、最高6里しか走ったことの

ない四三君にとって、ここから先は

未知の領域です。

 

吉岡) 先頭は佐々木。

 500~600m先だ!追い越せるぞ~! 

平田) 追い越せるぞ!

四三) がまだせ!

平田) 野口君だ、野口君。大丈夫かい?

野口) 腹が…。

平田) 痛いのかい?

野口) 減った!

平田) えっ? 野口君!?

(駄菓子屋の蒸パンを勝手に食べる野口)

平田) 野口君!

店主) あっちょっと! あんた何してんだよ!

野口) あいすいません! 

 金は、必ず返しますあとで。

店主) 学生さん、名前は? 名前!

野口) 東京高師の、野口です!

店主) の、の、の…野口?

 

空腹に耐えかねた野口君、

これはルール違反だ。

 

野口) うお~!

 

**********

 

(六郷橋にさしかかる四三)

 

トップを走る佐々木、2位の四三、

その距離僅か50m!

 

清さん) おいにいちゃん、

 足袋が脱げそうだぞ!

四三) 何ですか!?

 

志ん生) 「『何ですか!?』って足袋だよ

 足袋! ペッタンペッタンいってるからお前、

 足袋で餅ついてるみたいなんだよバカ野郎。

 ハァハァ…さすがに、この辺の辺りが苦しく

 なってきたなチキショー。コンチキショー。

 目が痛えや本当。ええっ、何だ!?これは。

 目…目が真っ赤じゃねえかおい。おい、血で

 真っ赤だよこれ! どうなってんだ?おい」。

 

沿道のおっさん) どうした? にいちゃん。

 誰にやられた!? あいつか! よし、

 俺がとっ捕まえてやらあ。

清さん) そうじゃねえそうじゃねえ。

 こいつはマラソンだよ。

 

志ん生) 「マラソン?」。

 「ストックホルモンの予選だよ」。

 

おっさん) よっしゃ、マラソンだ!

 おい、マラソンだよ。マラソンだってよ!

 お~い、マラソンだ~! お~い!

 

志ん生) 「ハァハァ…佐々木!

 待て佐々木! 佐々木!

 待ちやがれこの野郎。コンチクショー」。

 するってえと、信じられねえことに…。

 

(佐々木が立ち止まり、四三を振り返る)

 

志ん生) 「お…おいおい…何だよお前。

 や…やるのか? この野郎、やるのか?

 驚いたなお前。待てって言ったらお前、

 なにも本当に待つことはねえじゃねえ

 かお前。こ…怖いよお前の顔は…。

 底光りして…気味が悪いや目が。

 目付きが怖いってんだよこの野郎」。

 奇妙なにらみ合いが、10秒ほど続きまして。

 「お…おい!おい! 今のは何だったんだよ。

 

(佐々木を追いかける四三)

 

**********

 

(金森稲荷に戻ってくる佐々木と四三)

 

**********

 

<競技場>

永井) 責任問題ですよ。

 これは、羽田の悲劇ですよ!

(立ち上がる治五郎)

治五郎) うん?

永井) 何ですか?

(双眼鏡をのぞく治五郎)

治五郎) 来た! 誰か来た!

永井) 伝令係でしょう。

治五郎) 違う! 韋駄天だ!

永井) 血まみれじゃないか!

 頭でも打ったのか!?

平田) あれは、雨で、帽子の色が、

 顔にたれてきただけです。

永井) あ~なるほど。

弥彦) 誰だ?

可児) 高師だ! 東京高師の…。

(双眼鏡をのぞく可児)

可児) 51番…あっ!

 金栗です! 金栗四三です!

治五郎) いたぞ~!

 可児君、永井君、韋駄天だ、見ろ!

 彼こそが韋駄天だ!

可児) おお~!

治五郎) 世界記録は!?

大森) 2時間59分45秒です。

治五郎) 2時間32分!

可児) おおっ!

治五郎) 世界記録更新だ!

可児) うお~先生!

四三) 治五郎…先生!

(走りながら足袋を脱ぎ飛ばす四三)

(雨の中、大きく手を振り、ゴール前で

 四三を待ち構える治五郎)

治五郎) お~い! お~い!

(ゴールした四三に

 ストップウォッチを見せる治五郎)

治五郎) 見ろ!

 2時間32分45秒…世界記録だぞ!

(歓声)

(治五郎に抱きとめられるフラフラの四三)

治五郎) 金栗君、

 君こそ世界に通用する、韋駄天だ!

 

(回想)

スマ) 嘉納しぇんしぇーに抱っこして

 もろたら、丈夫な子に育つばい!

信彦) 嘉納先生に抱っこばして

 もろたけん、もう大丈夫たい。

四三) ごめん! 俺は、本当は、嘉納

 治五郎先生に抱っこばしてもらえん

 だったけんが…。

実次) 抱っこばしてもらいに…

 東京に行くとか?

 

まさか、こんな形で夢がかなうとは。

 

四三) ありがとうございます。

 

**********

 

永井) とにかく無事でよかった。

可児) 大丈夫か?

永井) よくやったぞ、かなぐり君!

四三) あっ…かな…くりです。

永井) かな…くり君。

 さあ、喉が渇いただろう。誰か水を!

可児) ほら、ほら…。

四三) あっ…。

(コップを口に近づける四三)

四三) いや…結構です。

 

志ん生) 「どうしてだい?」。

 「世界記録が、また夢になるといけねえ」。

(拍手)

今松) あらら、サゲだけ「芝浜」だ。

五りん) えっ? 今のどういう…?

知恵) 私に聞かないでよ。

 

**********

 

今松) 駄目ですよ師匠。

 古典をあんなふうにいじっちゃ。

志ん生) 何だお前、ウケてるからいいじゃ

 ねえかおい。ええ? 何だったらお前、

 「芝浜」頭からやったろか?

今松) いや…。

美津子) そうじゃなくて、お父ちゃんあんな

 話してくれたことなかったじゃないの。

 オリンピックがどうとか。新作? でたらめ?

志ん生) でたらめじゃねえよ。

 清公に昔教えてもらったんだよ。

五りん) 車夫の友達、ですよね?

今松) 何…ちょっと…。

志ん生) 羽田のな、運動会に出るっていうん

 で、今日1日だけ俺が代わってやったんだよ。

 

**********

 

ええ、そうなんです。あの運動会の日、

あたしはあたしでなかなか

ドラマチックな一日でして。

 

(居眠り中の孝蔵)

円喬) おい…。

孝蔵) 何だおめえ、やってねえ…!

円喬) 人形町までやっておくれ。

孝蔵) はいよ! はい…。

 

**********

 

(足が止まっている孝蔵)

円喬) 俥屋さん…俥屋さん。

孝蔵) あっ、へい。

円喬) さっきから前へ進んでないようだが。

孝蔵) あっ…すいません。

 いや~どうもつい、聞き入っちまって。

円喬) 東海道は岩淵へ流す鰍沢の流れ。

 4、5日雪も降り続いたと見えまして水かさ

 も増して…。ザァ~ザザザザ…ザァザァ…。

孝蔵) あっ、すいやせん。

 雨降ってきちまったんで。ほろを掛け…。

(空には太陽)

孝蔵) あっ…。

円喬) (せきばらい)

孝蔵) すいません。よっ…。

 

何のことはない。師匠が、十八番の「鰍沢」

の稽古をしてた。川下りの場面、その語り

口があんまり見事なんで、私は雨が降って

きたと勘違いしたんです。まあ…羽田は、

どしゃ降りだったんですが。

 

**********

 

<羽田>

永井) これで途中棄権者が13名。

 完走は金栗佐々木、井手野口、

 橋本、能登の6名だ。

大森) 金栗君の2時間32分45秒は、ロンドン

 オリンピックの記録よりも、22分も速いのか。

永井) 20…?

大森) えっ、22分?

治五郎) 何かの間違いじゃないのかね?

 距離か、時計かどちらか。

中沢) 距離は合ってます。

 何度測っても25マイルです。

治五郎) 時間は間違えてないよ。

 私はずっと見てたから。

本庄) いかにも疑わしいわ!

永井) 何だ? 君は。

中沢) 本庄君。ここ記者は立ち入り禁止だよ。

本庄) 金栗選手に抜かれた佐々木君は田ん

 ぼの水を飲みに行ったというし。3位の井手

 君は、さながら夢遊病者のようだった。

治五郎) 見たのか? 君。

 どこでどうやって見た?

本庄) ただでさえ大雨で道が滑りやすい

 悪条件で、金栗選手に至っては22分も

 速いだなんて。

永井) かなくりではない。かなぐりだ。

可児) いやいや、かなくりです。

治五郎) いや…

 距離も時間も間違いないだろう。

 

**********

 

寄宿舎に帰ると、

仲間が、祝勝会を開いてくれました。

 

永井) 可児君…。

可児) えっ?

永井) 生徒の前で醜態をさらすのは

 いかがなものかね?

可児) やかましい! 黙れ、永井道明!

 肋木に、つかまれ! ハハハハ…。

一同) おお~!

永井) ハハハハハ…。

可児) 「歩いてもいい、休んでもいい…

 生きて帰ってきてくれたまえ」。

(拍手)

永井) ハハハハハ…。

(優勝カップで酒を飲む可児)

一同) おお~!

可児) あ~。

(拍手)

四三) 美川君。

(猫を抱き、井戸端に座っている美川)

美川) すまない。僕の方から祝福に行くべき

 だったんだが…。すっかり臆してしまって。

四三) そぎゃ~ん、美川君もう、水くさか~。

美川) ハハ…一躍時の人じゃないか。

 どうだい? 金栗氏、気分は。

四三) うれしさ半分…痛さと、

 疲れ半分で、プラスマイナスゼロばい。

美川) はあ…嫌みなほどに、謙虚だね。

四三) どぎゃん? 

 もうすぐ、学期末の試験じゃなかつね?

美川) あ~試験のことなど思い出させて

 しまって申し訳ない。あ~饅頭は結構。

 漱石ばかり読んでいたら、胃の調子が…。 

平田) 金栗君!

四三) あ~…。

美川) あっ、どうぞどうぞ。

四三) うん。

(食堂に戻る四三)

平田) 静粛に! 静粛に!

 ここで徒歩部の星、金栗君からひと言!

(拍手と歓声)

四三) いやいやいやいや…。

(拍手と歓声)

(井戸端で小さく手を叩く美川)

 

**********

 

人間、体力を使い切ると、

かえって眠れないものです。

 

手紙・四三) 「拝啓、兄上様。

 

(回想)

実次) お前は何か、思い違いをしておる。

 学生の本分を忘れ、かけっこにうつつを

 抜かすとは」。

 

(手紙を破る四三)

(ノートを出し、

 表紙に「勝つために」と書く四三)

 

えっ!? 勝ったのに?

四三君世界記録出したのに、

まだご不満ですか?

 

勝つために、今日の勝因を、

自分なりに、分析するばい。

 

どうぞご自由に。

 

この経験を生かし、

新しい日本マラソンの道を開拓せん。

 

**********

 

中沢) 来年もやりましょうね、嘉納さん!

一同) お~!

治五郎) 来年? オリンピックは4年に1回だ。

吉岡) 俺は、嘉納天狗に競走を申し込む!

(拍手と歓声) 

治五郎) 何~? 吉岡天狗、望むところだ!

(歓声)

(たいまつを掲げる治五郎)

治五郎) よ~し! てんぐ、てんぐ! 

一同) てんてんぐ~!

 

**********

 

(ランプを灯し、ノートに向かっている四三)

 

排便ヨシ。

食事は到着が遅れ、満足にとれず。

ばってん、これがよかった。まさに適量。

少なけりゃ、野口君のようになっとった。

 

**********

 

(たいまつを手に、走る治五郎)

 

**********

 

服装について。

厚手の冬シャツと、帽子ば着用。

薄着の選手も少なからずおったが、

もし痩せ我慢して、

あぎゃん薄着で走っとったら…。

ああ…危なかったばい。

 

**********

 

(たいまつを掲げ、ゴールする治五郎)

 

**********

 

課題もある。(「足袋」と書く)

最後までもたず、

結局、はだしで走ることになった。

破れん足袋ば作ること、それが課題。

 

四三) ばっ! ああ…。

(外が明るい)

四三) 一睡もできんかったばい…。

 

今日は休もうか。

さすがの韋駄天もくたびれ果て、

そんな考えが頭をよぎりましたが…

 

実次) 体の弱いお前を東京へ行かせた

 のは、勉強をさせるためだ。かけっこに

 熱中しろと言った覚えはなかぞ!

(美川のベッドに実次の幻影)

四三) 分かっとるばい!

美川) な…何が? 何…何を?

四三) 分かっとる!

美川) 何が…何が!?

四三) 分かっとる!

美川) 「分かっとる」って何が…?

 何が? 怖い…。

 

**********

 

<播磨屋>

(「天晴レ金栗君 當店ノ足袋ニテ

 十里走破!」と書かれた貼り紙)

四三) 「天晴レ金栗君 

 當店ノ足袋ニテ、十里」…。

(店に入る松葉杖の四三)

四三) あの~ごめんください。

辛作) はいよ~。お~君か! 

 ハハハハハ…。いや~やってくれたな

 世界記録! ハハハ…いや~大儀だっ

 た。ああっ、座んな、座んなよ。

四三) はい。おかげさまで、完走できました。

辛作) ハハハ…。

四三) ばってん…

辛作) いやいやいや…いいんだよお礼なんか。

 いやかしこまるなって。アハハ。おい、ちょう、

 勝蔵! 世界の金栗君だ、金栗君!

ちょう) あら…まあ! まあまあまあ。

 この度はよくぞ播磨屋の足袋で大記録を。

四三) はい、完走しました! ばってん…。

辛作) お~勝蔵、抱っこしてもらえ。

(四三に飛びつく勝蔵)

四三) あああ…。

ちょう) 勝っちゃんも、ゆくゆくは韋駄天ね。

辛作) ああ、俺も鼻が高えぜ~。

 でどうだい? うちの足袋は。

四三) 走りづらかです。

辛作) そうかい。

四三) 特に、砂利道には向かんです。

辛作) …だろね。ハハハ。

 座敷で履くもんだからね。

四三) あっ、はい。底の布ば、頑丈にせんと、

 1里ももたんです。雨が降って、水ば吸うて、

 もう、足にまとわりついて難儀しました。

ちょう) 勝っちゃん、こっちおいで。

四三) おまけに、途中で、コハゼん取れて

 もう、踏んだり蹴ったり。ほら。もう、邪魔

 で邪魔で…脱ぎました。おかげで、

 血まめん潰れて、こんありさまです。

(足の裏を突き出す四三)

辛作) 帰れ~!

四三) えっ?

辛作) 何だてめえは。礼の一つでも

 言うかと思って黙って聞いてりゃ図

 に乗りやがって。ああ!?

四三) あっ…おおお…俺はただ、今後の

 ために、いいい…いくつかの改良ば…。

辛作) するか改良なんかバカ野郎。

 いいか!? 播磨屋はな、創業以来日本

 足袋だけをこさえてきたんだ。それをて

 めえが勝手に外に持ち出して「走りづれ

 え」だ!? まるで足袋のせいで怪我した

 みたいに言いやがってよ~! おまけに、

 「底の布を頑丈にしろ」だ? 帰れ帰れ!

 この田舎もんが!

四三) あっあっ…ば…ばってん!

辛作) あ~その「ばってん」が気に入らねえ。

 今度来てみろ、その口縫い付けてやる!

 勝蔵、塩持って来い!

(四三に塩を投げつける勝蔵)

勝蔵) やっ!

四三) あっ、ひゃあ~! ばあ~!

勝蔵) べえ~だ。

 

**********

 

シマ) 奥様といい弥太郎様といい、

 この家はどうかしてます!

弥彦) そう腹を立てるな。

シマ) いいえ言わせて下さい。

 日本一ですよ。

 新聞にお名前が載ったんですよ!?

 写真つきで。なぜ触れないのです?

 なぜひと言、よくやったと、ねぎらいの

 言葉をかけてあげないのです?

弥彦) 母上は字が読めんのだから。

シマ) これほど世間が騒いでいるんです。

 耳に入らないわけがない。弥太郎さんに

 至っては、ひっくり返して経済面。

 昼も経済夜も経済!

 ああ…なんと憐れな経済バカ!

弥彦) シマ…。それが、三島家の定めさ。

 僕が有名になろうが、日本一になろうが、

 学生の道楽に変わりはない。

 シマは、スポーツが好きか?

シマ) はい。でも…おなごは運動選手には

 なれませぬゆえ。

弥彦) 分からんぞ。日本もいずれ西洋のよう

 に、女子のスポーツが盛んになるかもしれん。

シマ) 女子のスポーツ?

弥彦) うん。世の中が変わればな。

 

**********

 

<写真館>

カメラマン) はいじゃあ、世界を意識してね。

四三) いや、そんな…。

カメラマン) はい、まいります。

四三) はい。

 

**********

 

<人形町>

孝蔵) あっ…。

(土下座する孝蔵)

孝蔵) 弟子にして下さい!

 師匠の芸に惚れました!

 どうぞ、よろしく頼んます!

円喬) あっそう? じゃあ…明日も

 浅草から人形町まで頼むよ。

孝蔵) へ…へい!

 じゃあ、また明日、十二階の前で!

 

**********

 

スヤ) 四三さん! 

 笑った顔が四三さんだもん!

(新聞記事の写真を見るスヤ)

スヤ) こぎゃん立派になって…。

 お父さん、はさみで切ってよかね?

春野) うん、よかばってん、そぎゃんもん、

 これから嫁に行くっちゅう娘が…。

スヤ) そうか…そぎゃんたいね。

 

**********

 

<写真館>

カメラマン) そうそう…もっと見て。

 もっと見て。そう…。

四三) はい。

カメラマン) 世界を意識して。

四三) はい。

カメラマン) まいります。

 

ストックホルムオリンピックまで、

あと半年。

 

**********

 

いよいよマラソン当日の様子が、志ん生の

実況も含めて描写され…いや~野口が店

のパンを食べたり、橋の上で謎のにらみ合

いがあったりが史実だっていうんだから…。

大体、こんなことある?ってことが史実って

ことが多いのよね。思いもよらないことをす

るのが人間ってやつで、そんな面白さを丁

寧に拾って描くのが上手くて得意なクドカン。

 

歓喜する大人たちの中で一人冷静な四三。

播磨屋でのやり取りも、写真撮影も微笑ま

しい。出てくる人物みんなが愛おしくなって

くる脚本は、クドカンの真骨頂。こんな楽し

いドラマを1年間も見られるなんて…ワオ!

視聴率なんて気にしない。このままGo~!



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