「ひよっこ」 第125回
第21週 「ミニスカートの風が吹く」
もうちょっと自分の気持ちを
大切にしてみたらどうかな
秀俊） あのさ、みね子。
気になるんじゃないの？
みね子） あっ、いや、でも…。
秀俊） みね子のさ、そういうとこさ、自分
の気持ちじゃなくて、こうしたらあの人
はどう思うかなとか、どう感じるかな、
嫌かな、喜ぶかなって思ってしまうと
ころ、俺はいいなと思うんだ。でも、い
っつもそればっかりになってるのは、
どうかなと思うな。いいところだとは思
うけど。今もそうなんじゃない？ あの
人に対して、どういう気持ちなのか俺
には分からないけど…。気になるん
だろ？ みね子はあの人のこと嫌いな
わけじゃない。でも、お母さんやお父
さんに悪いと思うから、声がかけられ
ない。たまにはやめてみたら？ もうち
ょっと、自分の気持ちを大切にしてみ
たらどうかな。顔も見たくない。気にな
んかならないなら、帰ろう。じゃなかっ
たら、戻ったら？
みね子） えっ？
秀俊） えっ？
みね子） あ…いや…あの…。
ありがとうございます。
行ってきます。
秀俊） そう。
みね子） はい！
秀俊） じゃ、先帰ってる。みね子は
サボってパチンコ行きましたって
言っとくわ。
みね子） えっ？ え～！？
ちょっと、そんな！
（笑い声）
秀俊） じゃ、お店で待ってるね。
みね子） はい。
お父さん…。何かヒデさん、
ちょっと、変わりましたよね…。
私も、思い切ってみることにしました。
何だかいろんなところに、
新しい風が吹いてますね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
愛子） 膝…膝上…。
ここにも、
吹いてるみたいです。
愛子） ５センチ？
５センチ？ 10センチ？ う～ん…。
（丈を詰めてミニスカートに作り直す愛子）
愛子） どうかな～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜テレビ局＞
みね子） こんにちは。
（みね子を見て思わず立ち上がる世津子）
（メイク室に入るみね子）
世津子） あ…。またコマーシャル？
みね子） あっ、違います。
出前です。出前…ヘヘヘ！
世津子） あぁ、そうか…。
みね子） あの…座ってもいいですか？
世津子） えっ？ あ…いや…どうぞ。
みね子） 失礼します。
世津子） はい。
みね子） あの、
お父ちゃんのことなんですけど。
世津子） えっ？
みね子） あっ、聞きたいですか？
聞きたぐないですか？
（回想）
世津子） もう二度とお会いすることは
ないと思います。谷田部さん。
世津子） あ…えっと…。
難しい質問だな、それは。
みね子） じゃ、言いますね。
奥茨城に帰って、元気でやってます。
思い出したりはしてないけど、自分
を取り戻そうとして、元気でやって
ます。
世津子） そう…。
みね子） すみません。一方的に言って。
「難しい質問だな」というこどは、聞
きたぐないわげではないなと思った
ので。すみません。
世津子） あっ、いや…どうも…。
みね子） はい。
世津子） あれ？
みね子） はい？
世津子） そんなにはっきり物言う
女の子だったっけ？
みね子） えっ？ そうですよ、はい。
世津子） あっ、そう…うん…。
みね子） なので、
お父ちゃんは大丈夫です。
世津子） うん…。ありがとう。
みね子） 世津子さんは、大丈夫ですか？
世津子） えっ？
みね子） いや、大スターの心配を私なんか
がすんのはあれなんですけど…。
でもやっぱしちょっとは…。
世津子） ありがとう。
みね子） いいえ。
世津子） 大丈夫。…にするしかないから。
みね子） 大丈夫にするしかないか…。
わがります。
世津子） そう？
みね子） いや、世津子さんの気持ぢは
わがんないけど、大丈夫にするし
かないっていうのは、わがります。
世津子） へぇ。
みね子） フフフ…。フフフ…。
（テーブルの上に、辞書と漢字に
ふりがなを振ってある台本）
世津子） あ…ハハハ。小学校ろくに行って
いないから、いまだに漢字とか苦手で。
そういえば、世津子さんの手紙、
平仮名が多かったのを思い出しました。
世津子） へへ…恥ずかしい。
みね子） ううん。世津子さんって、
ツイッギー、好きですか？
世津子） えっ？
（壁にツイッギーのポスター）
世津子） あっ、かわいいよねえ。
みね子） ですよね。
世津子） まぁこれと同じようにはね、
できないけどね。年齢的にもねぇ。
それにスタイルも違うし。
みね子） そうですか？
世津子） まぁね。
みね子ちゃんは、はくの？
みね子） 一着だけ、
買ってみたんですけど…。まだ外
にははいてなくて。でも、何かうれ
しかったです。
世津子） へぇ…。うん、何か、分かる。
みね子） そうですか？
世津子） うん。私も、試着だけした。
みね子） 本当？
世津子） うん。試着して…。試着室の鏡で
自分を見て、「おぉ～！」と思って。
でも買わなかった。
（笑い声）
世津子） でもね、自分の持ってるスカート
の丈をね、短くしてみたりしたよ。
みね子） え～そんなこどすんですか？
世津子） でも…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
愛子） う～ん、何か違うなあ…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
世津子） 何か違うんだよね。長かった
ものを短くしたものと、もともとミニ
スカートとしてデザインされたもの
とは、何かが違うんだよね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
愛子） うん。よし、これにしよう！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
世津子） 人間で言うと、
性格が違う感じがするんだよね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
愛子） わお！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
世津子） 分かる？
みね子） 何かわがる気がします。
世津子） フフフ！ そう？
何か、ミニスカート業界の回し者
みたいになってるね、私。
詰めるんじゃなくて
ちゃんと買って下さいって。
みね子） でも、時子のためにうれしいな
って思ってて。ミニスカートブーム。
世津子） 時子ちゃん…あぁ…。
あの子スラッとしてるもんね。
みね子） はい。
（回想）
時子） あの！
世津子） はい？
時子） 私、助川時子といいます！
みね子） 背高いじゃないですか。
素敵なんだけど、目立つっつうか。
女の子で背が高いと、結構気にし
てた時期もあるし。高校んとぎも、
ほかの高校の男の子に、「でかい」
とが言われでからかわれたこどが
あって。そんとぎ、三男っていう幼
なじみがいんですけど。三男、大し
て強くもねえのに、しかも向ごうは、
何人もいんのに、向かってって、
喧嘩して。
世津子） へぇ…。
みね子） そん時ね、
三男、言ったんですよ。
「時子、下向ぐな。堂々としろ！
女優になりてえんだっぺ？
だったら自分に自信持でよ。
下向いでる女優なんていねえど。
下ばっかり向いてっと、背中曲が
っちまってきれいじゃなくなっと！」
って。
世津子） アハハ！
へぇ、何かいいね。
みね子） そうですか？
世津子） うん…。同級生か…。
何かいいねえ、そういうの。
みね子） アハハ！
あの…。台本、よかったら、
私手伝います。
世津子） えっ？ あ…えっ？
時間大丈夫なの？
みね子） はい、大丈夫です。パチンコ、
行ってるこどになってんで。
世津子） え～？
そんな女の子だったっけ？
（笑い声）
世津子） あぁ、そう？
じゃ、お願いしようかな。
みね子） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
三男） ♪二人で唄おう
明るい恋のリズム ゴーゴー！
でっかい太陽が 恋の女神なのさ
ゴーゴー！
シーサイド・バウンド ゴー バウンド
（ミニスカート姿のさおり）
三男） わっ、びっくりした！
さおり） お帰りぃ！
あっ、そう？ 似合ってる？
ありがとう。
三男） あっ、いや、
似合うとは言ってませんが。
さおり） 結構勇気出したんだ！
アハハハハ！ アハハハハ！
三男） あっ、旦那さんは？
さおり） 出かけた。
三男） あっ、そうですか。
さおり） 今夜は帰らないって。
三男） はぁ。えっ！？
（上目遣いで三男を見つめるさおり）
さおり） 三男君。
三男） はい。
さおり） 謝らなきゃいけないこどが
あって、私。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
グイッグイッくるな～最近のヒデ君。まぁ…
みね子にもその変化が分かるぐらい、グイ
グイいってもらわないと、朝ドラ名物、鈍感
ヒロインに恋愛感情は伝わらないからねｗ
川本世津子が気になるみね子の背中を押
してあげるヒデ君。控え目ながらもみね子
のことは何でもわかっているから…みたい
な自信というか、みね子を大切に思う気持
ちが伝わってきて、みぞみぞしてきたよ～。
ミニスカートの新しい風は、あちらこちらで
女性たちの心を解放していっているようで。
お父ちゃんのことを知りたいとは言えない
世津子の気持ちを汲んで、一方的に報告
するみね子。そんなみね子のキャラ変に
驚く世津子。いや、でも、心の中では昔か
ら結構毒舌というか、三男には容赦なか
ったし、漫画家たちにもツッコムし、軽く猫
をかぶっていただけで、もともとみね子は
はっきり物言う素質はあったんだと思うよ。
大丈夫。
…にするしかないから。
大丈夫にするしかない。そう、お父ちゃん
が東京で行方不明になったと知ったとき、
みね子が自分に言い聞かせていた言葉。
大丈夫…にするしかない世津子。20分し
か時間がなくても、大丈夫にするしか…。
世間話をした分、手伝ってもらわないとｗ
何か違うんだよね。
長かったものを短くしたものと、
もともとミニスカートとして
デザインされたものとは、
何かが違うんだよね。
もともとの性格は、変わらないっていうか。
お直しと、デザインを変えるのは、別もの。
いろいろ含みを持たせた感じだけれど…
愛子さんがおなかのあたりにあててみせ
たラクダ色のスカートが腹巻きにしか見え
なくて、ネットではバカボンのパパ呼ばわ
りされていて…。ごめん、笑っちゃった～。
それより、グッときたのは、何気に披露さ
れた三男の台詞。三男のくせにかっけえ。
時子、下向ぐな。堂々としろ！
女優になりてえんだっぺ？
だったら自分に自信持でよ。
下向いでる女優なんていねえど。
下ばっかり向いてっと、背中曲が
っちまってきれいじゃなくなっと！
フフフ。こりゃうっかり惚れてしまうべさｗ
さおりんが心配になるのも分かるべさ～。
時子にはやっぱり負けるけど、悪くなか
ったよ、さおりんのミニスカート姿。今夜、
二人は二人きり…。一体何が起こるのか。
怖いわ～怖いけど、先が楽しみだわ～。
何しろ、バックで流れた挿入歌「恋のうた」
を歌うのは、木綿のハンカチーフの太田
裕美さん。いや～これはもう、盛り上がる
っきゃないよね。恋バナ祭り、わっしょい。
♪君が好き
ララララ ランララランラン……
そんな君が好き～
あっちでもこっちでも恋のひよっこたちが、
ピヨピヨと動き出す。♪そんな君が好き～
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