「最後の忠臣蔵」



最近の邦画に興味を示さない僕なのですが、役所広司さん、佐藤浩市さん共演となれば観ずにはいられない。



そもそも。この21世紀のAKB48ときゃりーぱみゅぱみゅのご時勢に忠臣蔵ってなに?って話なんですけど。



忠臣蔵って年末に特番でやっている、じいさま&ばあさま御用達のアレでしょ?



そうアレです。



よくよく観てみると忠臣蔵って面白い話なんですよね。僕は子供の頃から大好きでした。吉良上野介が。



そうなんです。僕は赤穂浪士よりも吉良のが好きなんですよ。



まぁそんなことはどうでもいい。





「最後の忠臣蔵」これを観て泣かない人はいないんじゃないかしら?特に男性諸君はこの手のものに弱い。「壬生義士伝」と同じ匂いのする映画だ。



吉良邸討ち入りより16年。



世の中は赤穂浪士四十七士をまことの武士として英雄視していた。



しかし英雄視されたとしても所詮は死んだ人間。残された家族達はつつましやかな生活を送っている。



そんな四十七士の家族を1人1人訪ね歩き、討ち入りの全容と大石内蔵助からの見舞金を渡す使命をうけおった佐藤さん演じる寺坂吉右衛門。



そしてもう一人が大石内蔵助の隠し子を世間から隠して育てているのが役所さん演じる瀬尾孫左衛門。



どちらも討ち入りによる名誉の死を遂げることの出来なかった”生き残り”だ。



二人とも大石内蔵助から託された使命の為に生きている。これだけでも相当グッっとくる。



ただこの作品はもっと深いところをえぐっている。



寺坂吉右衛門は悲痛な思いで語る。



四十七士の名声が高まれば高まるほど、討ち入らなかった者の負うものが重くなると。



そりゃそうだ。



みんな声に出しては言わないけれど「え?元赤穂浪士?勇気ある人は主君の仇を取りに討ち入ったのに、あんたは行かなかったんだ」って。



だから寺坂と瀬尾以外の赤穂浪士の生き残り達は過去に縛られたままだ。柴俊夫さんが演じてる役なんてまさにそう。



だから大石内蔵助の17回忌で泣くんだね。過去に後悔しているから。



寺坂や瀬尾はそんなことでは泣かない。彼らにはまだ使命が残っているから。未来を見据えているのだ。



この描写は見終わってからジワジワと来る。ボディブローみたいに。



ただそんな過去に縛られていた赤穂浪士の生き残りが、内蔵助の隠し子が輿入れする際に続々と集まってくる。



16年もの間、苛まれてきた過去に決別しにきてるのだ。元赤穂浪士としてではなく、赤穂藩の藩士として。



あれこそ魂の救済だ。



僕は直視できませんでした。子供のようにうわんうわん泣いてしまって。



他にも片岡仁左衛門さんの内蔵助のシーンや、ベタだけど桜庭ななみさん演じる可音の嫁ぐ前とかずっと泣きっぱなし。



ペットボトル1本ぶんくらい涙出たんじゃないかしら。相当なダイエット効果だわ。



あぁ~これを投稿したもう一度観返そう。いや明日の返却までにあと二度は観返そう。






さて。



そんな素晴らしい作品だったのですがちょっと残念だったことが。



これ製作・配給ワーナーじゃん。



別にワーナーは嫌いじゃないんだけど、こんな日本的な作品なのに東宝も松竹もほったらかしかい!と思うと今後の邦画が不安でしょうがない。




たまにはホラー映画でも。



M・ナイト・シャマラン監督の名前に惹かれて「デビル」を観た。



でもオープニング観てて気づいた。



これシャマランは監督じゃなくて製作だ。



まぁ別にいいんだけど。





M・ナイト・シャマラン!



ここ数年知名度がグン!と上がってきている。



それはやはり20世紀を締めくくった名作「シックスセンス」によるものが大きい。



僕はいまだに「シックスセンス」以上のラストの大どんでん返しを観たことがない。



あれは実に素晴らしい。



そんなシャマラン監督だが、一発デカイのを当ててしまったが故にその後の作品への期待値が上がってしまっている。



観客は「シックスセンス」と同等か、もしくはそれ以上のモノを求めてしまうがそんなもん無理。



「アンブレイカブル」「サイン」「レディ・イン・ザ・ウォーター」などなど名前を聞けば「あぁ~。あったねそんなの」という作品ばかりだが、どれも正面からは楽しめない。もちろん裏口から入ると非常に面白い発見があるのだが。





さて。



「デビル」です。



「デビル」というと90年代にハリソン・フォード、ブラッド・ピッド共演で話題になったものを思い浮かべる。



”まだ多少は動けた”頃のハリソンと若くて血気盛んなブラピの共に思い出したくない作品ではなかろうか。



最初、今回の「デビル」(シャマラン製作の)を見つけたとき、「え!?まさかリメイク?」と戦慄が走ったが、どうやら違うようで安心した。



ただ、そもそもなコトだがタイトルの「デビル」(原題「Devil」)っていかにもセンスがない。



コメディー映画や恋愛映画で「デビル」なら少しは「お!なになに?」ってなるけれど、サスペンスホラーで「デビル」じゃ~まんまじゃん!



Tシャツ買ったら、ロゴが「Tシャツ」って入ってるようなもん。う~ん。ちょっと違うか。






とはいえ。



映画の内容はスゴかった。



悪魔がエレベーターに閉じ込めた人間をテンポ良くバッサバッサと葬っていくというもの。



そんだけ。



さすがにそれだけじゃアレなので、僕がこの映画の見所を独断と偏見で。



まず数少ない登場人物の中で1人グッっと来る人がいます。いますよね?



そう。ジェイソン!です。ビルの整備責任者の!!



初登場シーンでジェイソンは35階のブチ割れた窓ガラスを直そうとしています。しかし急に停まってしまったエレベーターを直さんかい!と言われて屋上の機械室へ。



屋上では強風に煽られ彼のトレードマークであった、今は亡き誇り高い整備工の親父の形見の帽子(あくまで想像)が飛ばされてしまいます。



飛ばされた帽子を追いかけて何のフェンスもない危険な屋上を走るジェイソン。



みんな思いますよね。



「あぁ、ジェイソンこれ落ちちゃうパターンね」と。



案の定、帽子はビルの屋上から落ちて、そのままジェイソンも・・・と思いきやジェイソンセーフ!ギリセーフ!!



落ちる一歩手前の所で、手で引くタイプのサイドブレーキをグーン引っ張ったんかい!?そんな上げたらもうサイドブレーキ戻らんぞオイ!っていうくらいの見事なストップぶり。



やるねぇ~ジェイソン。




続いてジェイソンがやってきたのは地下室。屋上の機械室には問題がなかったから今度は地下の機械を点検しにきたってワケだ。



この高層ビルは何基ものエレベーターがある。そのエレベーターの下を恐る恐るくぐり抜けていくジェイソン。



すると問題の停まってしまったエレベーターの下に謎の生命体を発見。タヌキ?キツネ?フェレット?



みんな思いますよね。



「あぁ、ジェイソンこれ落ちてきたエレベーターに潰されちゃうパターンね」と。



案の定、謎の生命体を追い払ったジェイソンの上にエレベーターがグワーッンと落ちてきて、そのままジェイソンを・・・と思いきやジェイソンセーフ。ギリセーフ。



タヌキだかなんだか分からん動物の命も結果的に救ってやったし、やるねぇ~ジェイソン!




そして次にジェイソンがやってきたのはワイヤー。ワイヤー?



そう。地下にも異常を発見することができなかったジェイソンは屋上からエレベーターを吊っているワイヤーをつたって直接閉じ込められた人を助けに行こうってワケだ。



今まで警備とやりとりしていた無線も流石にいまは出れない。必死にワイヤーを降りていくジェイソンだが無線からは何度もジェイソンを呼ぶ声が。



みんな思いますよね。



「あぁ、ジェイソンこれワイヤー切れて落ちちゃうパターンね」と。



案の定、ジェイソンに謎の飛行生命体がぶつかり、体勢を崩すジェイソン。体を吊っていたカラビナが外れてしまいワイヤーが切れて、そのままジェイソンも・・・と思いきや、カットが替わりエレベーターの中が映し出されて、あれ?と思っていたらドシーン!って何かが降ってきて、血がジワーッって。ジェイソンアウトー!完全にアウトー!



マジかっ!?



2度も救っておきながら死なせちゃう!?



マジかっ!?



よくよく考えてもらいたい。



普通の人なら即業者を呼ぶであろう割れた窓ガラスを直そうとしていた。彼の持ち場である機械室に通じる屋上は高層ビルなのにフェンスも何もない。地下室では勇敢にも小動物の命を救った。そして2度も死にかけたのに、そんなのレスキュー隊クラスだろ!といいたくなるようなワイヤーを降りて救出作戦を実行した。



これらのことを彼は、ジェイソンは・・・たった1人でやっている!!



時と場所さえ違えばダイ・ハードのジョン・マクレーン刑事に匹敵する働きだよこれは。



この映画を観たことない方は以上のことを踏まえてから観てもらいたい。ジェイソンという哀戦士がいるということを胸に刻んでから。





そして。もうひとつ。



この映画は閉じ込められた人間の追い詰められた感じは良く出ていますが、僕はここでもアメリカン達の対応のスゴさを痛感させられた。



エレベーターが原因不明で停まってしまうワケだが、停まってから1分も経たずに全員が現状を理解し、管理会社や整備責任者の名前を調べつくし悪態をつき始める。日本じゃエレベーター停まってもそんなすぐ騒がずにお互い牽制してるくらいの時間で、アメリカン達は暴動を起こしかねない勢いに憤慨しとる。



アメリカってホントすごいね。



ん?まてよ。悪態つかれてる整備責任者って・・・ジェイソンじゃないか!



悪魔の未知なる力で停まったしまったエレベーター。ジェイソンは日ごろの点検だってちゃんとやってたハズだ!そして命をかけてみんなを助けようとしたジェイソン・マクレーン刑事を悪く言うなんて!



悪魔さんやっちゃってください。



以上がダイ・ハー・・・じゃなくて「デビル」の見所です。お試しあれ。










フランスという国はまったく!!



どうしていちいち芸術の水準が高いのだろう。



シルヴァン・ショメ監督の「イリュージョニスト」を観た。



映画が公開されていた当時、ずっと見たかったのだが、有楽町でしか公開されておらず結局見逃してしまっていた作品だ。




シルヴァン・ショメ監督といえば「ベルヴィル・ランデブー」でも有名な監督さんだ。



TSUTAYAに行けばジブリコーナーに置いてあるので知っている方も少なくはないと思う。



そう、ジブリが海外の優れたアニメーションを日本でも公開すべく取り組んでいる一環で日本でも観れるのだからジブリ様々だ。





さて。



「ベルヴィル・ランデブー」でもそうだったのだが「イリュージョニスト」でも人物や建物の描写がえげつない。



日本のアニメは様々なデコボコを丸くして味気ないものになっていると思う。いわゆる似顔絵や真似がしやすい絵だ。



言い換えれば馴染み深く優しい絵とも言える。



フランス人はそこを妥協しない。



明らかに主張している絵だ。



言い換えればトゲトゲしく個性にあふれ魅力的な絵とも言える。



決して日本アニメのような爆発的なヒットを生むことはないだろうが、アニメ界の第一線は日本ではなくフランスではなかろうか?と思わせられる要素が「イリュージョニスト」には詰まっている。



ストーリーはベタだ。



チャップリンの「ライムライト」と同じ。万国共通ウケるテーマ。



ただ、圧巻なのが登場人物にセリフを与えていないところだ。



もちろん無声映画ではなくいくつかセリフもある。だが意味のあるセリフはほぼ無い。



ストーリーをその絵のタッチと雰囲気、そして音楽だけで引っ張っていく。



もうね、本当になんなんでしょう。この芸術点の高さは!