明日から休みます、お願いします、と言って

会社を去り、自宅に帰ると旦那ももう帰宅してた。



「走りにいきますけど」




いつも通りー。



ってな感じで私も着替えて、ナイトラン。


でもちょっと雨が降りそうだし、

スタートが遅かったので、いつもの10kmコースではなく

短縮しての6km(くらいかな?)ラン。


入院前日ですし、そんなに走りこんでもね。

軽く流す感じがちょうどいい。




それにわかってるんだ。


旦那さんなりの励まし、気分転換なんだよね。

いつも通りに過ごして、そして体を動かすことで

私が手術だからって身構えないように、

リラックスできるようにしてくれてるんだよね。



って、旦那にも言ってみた。


「わかってるよ、大丈夫だよ。

走ることでリラックスさせてくれてるんだよね。

気分転換させてくれてるんだよね。

言わなくてもぶーこさんはわかってるよ、大丈夫だよ。

ありがとうね。」



「・・・・・」




恥ずかしそうに鼻をヒクヒクさせて

知らない顔して走る旦那さん。


かわいい。




そのぶっきらぼうな優しさに、

今回どれだけ元気づけられたか。


いつもいつも

「がんのクセに」とか

「元気に走ってるけどがんですけどね」とか

がんだからって特別大切に扱うわけじゃなく、

でも

「サバ食べなさい」とか「カテキンがいいんだから毎日お茶飲め」とか

命令口調で気にしてくれててさ。


ほんと旦那さんらしい。



そーゆー扱いをしてくれたから

普段泣き虫な私でも、全然泣かないでここまでこれたかなって思う。


別にがんだからって泣いたり卑屈になる必要はないしね。

だったら元気に明るく、手術で切ってとってもらおう!

って感じです。





と、言ってるそばから・・・



入院前日の夜、就寝時・・・。




泣いてしましました・・・。



多分、深く考えなければ泣かないで大丈夫だったんだけど、

ふと、いつも通り旦那と手をつなぎながら寝ようとしたら、

(あー。明日からこの手はないんだなぁ。

なんでないんだっけ。あ、がんで手術するからだぁ)

なーんて思ったら

ほろほろほろほろと涙が・・・


あり、まずい。

止まらない。


ほろほろほろほろ・・・



「・・・・何、泣いてんすかっ」



と、ぎゅっと抱きしめてくれる旦那さん。


まーた最後まで旦那さんに甘えてしまった。

またまたありがとう。



結局、泣きつかれてぐっすり眠れました。



いざ、入院!!

水面下ですすめてきた仕事のお願いもなんとか終わり。
2010年9月15日。
入院の前日です。明日からお休みを頂きます。

さすがに(予定で)2週間も休むのに
他の部の人に言わないわけにはいかない。
でも『がん』とは言いたくない。
心なく、本人のいないとこで騒ぎたてる人がいるから。

うちの会社では朝、各部の代表が集まってのミーティングがある。
うちの部ではいつも私が出席。
その場で言ってみた。


「私事ではありますが、明日から入院のため2週間ほど休みます。
10月1日から復帰できればいいな、と思ってます。
色々ご迷惑おかけしますが、ヨロシクお願いします。
仕事のお願いはだいたい終わったので大丈夫かと思いますが、
何かあったらW科長に言ってください。」

と。
病名告げず。



フツーこういう言い方したら、
聞かれたくないってわかるでしょ。わかるよね。


実際、事務の仲のいい子は何も聞かずに
「大丈夫?つらい?」とか心配してくれたし
営業の課長さんも
「大丈夫か?そんな入院するほど悪いんか?」
って。
こーゆー聞き方よね、フツー。
皆、心配してくれてありがとう、と
私も素直に思える。


が!
一名、私の思いをまったく汲み取ろうとせずに
なんのオブラートにも包むことなくいきなり現れて
こー聞いてきた人がいた。


「ねぇ、なんで入院すんの?」




確かにあなたのほうが役職もあるし先輩です。
「入院」だけ聞いたら「なぜ?」と思うでしょう。


でもそんな聞き方あるか!?
わかるだろ、聞かれたくないから言わないんだよ!
心配より先に興味だけで聞いてくるな!
あなたみたいな人がいるから言いたくないんだよ。


あまりに傷つき、頭にきたので
「ちょっと」
と答えてみた。それでも食い下がらない態度だったが
私が頑なに言わなかったら「ふーん」といなくなった。


とりあえず最後のヤマは越えたかな。



最後、同じ科の仲間たちに色々お願いし、
W科長から「大丈夫だよ、全部うまくいくよ」との
言葉をかけてもらい、会社を去った。


ばいばい。
また2週間後に!
さて。
会社の仲間には告白しました。
入院まで約一ヶ月、準備することはいっぱいあります。


仕事のお願いはもちろんの事。
それは皆さんに少しずつお願いするとして。


仕事以外では

まず健康保険限度額適用認定証の申請。
これは気のきく事務のY主任が申請書をダウンロードしといてくれた ので
書いてY主任に出せばOK。Y主任ありがとう。

次に生命保険の保険金給付の申請。

私は保険に2つ入ってる。
ひとつはドンピシャがん保険。かなり入ります…うふふ。
アフラックありがとう。
ただ、これは代理店が勤務先の関連会社なので
代理店に連絡して病名をいうのが非常にイヤ。
なのでアフラックのサイトから請求書を申請。
でかい保険屋はさすがだね。

もうひとつは他の保険会社の個人年金。
入院と手術に対して保険金が給付されます。
これもちょっと面倒な話で、母親が昔この保険会社で働いてたのだ。
なので担当の人がいないというか、まったく知らない人が
一応担当になってる。
ホームページからの申請もできないようなので
直接電話することにした。


これがけっこう面白かった、というか嬉しかった。

保険証券を片手に誰もいない会議室で電話をする。
電話にでた方に事情を説明する。


ここで声が一変。
かなり悲しい、申し訳なさそうな声になる。
「大変失礼ですが、ご病名はご存じですか…?ご存じでしたら
大変申し訳ないのですが、お教え頂いてもよろしいですか…?」

悲しそー。

「あ、はい。甲状腺がんです」
あっさり、私。

「甲状腺…」
「がんです」
「がん…ですね」

悲しそー。


あとは丁寧に入院が何日目から出るとか
申請書の書き方など、詳細を説明してくれた。

で、電話の最後。
「あの…がんばってください。よくなられる事を願ってます」



嬉しいねー。
人の愛って感じ。
ネットも便利だけど、こーゆーのは非常に嬉しい。温かい。
しかも送られてきた書類の中にはピンクの折り鶴が入ってた。

いい会社の保険に入っててよかったよ。
保険会社に元気づけられるとは思ってなかったわ。




あとは実際の入院グッズ。

頸を切るだけなので、母ちゃんの乳がんの時みたいに
リハビリってのがないんだよね。

絶対ヒマじゃん。


買いました、ポータブルDVDプレーヤー。
音楽番組や大好きなプロレスを旦那がCSから録画してくれます。
他、iPodとラジオが聞けるやつと…
充電器だけで大変な数だ。
携帯も旦那と一緒にスマートフォンに替え。
プロの自転車選手で睾丸がんになり、その後脳にも転移したが
それを乗り越え見事に復帰した、ランスアームストロングという
人の本も旦那が買ってくれたので、それも持っていかないと。
あと、会社でやらされてる検査の通信教育の本。
この病気のバタバタでなんにも進んでないから
それもしなきゃ。
あ。退院したらマラソン大会近いから筋トレ…



私、何しにいくのかしら。
看護師さんに追い出されそー。




よし


準備OK。

楽しませてもらおうじゃないか。

入院・手術の日程が決まった翌日。


まずはもちろんW科長に報告。

当初の予定通り、9月16日入院の17日手術になりました、と。


「うんうん。せっかく早く見つけたんだから早いほうがいいよ。」


まぁそうですね。

いくら進行が遅いがんって言ったって早いほうがいいに決まってる。

転移もないうちに。



で。。。

科の皆にいいましょうか!Wさん!

日程もハッキリ決まったし、仕事のお願いもしていかなきゃならないし。

引継ぎが必要な仕事、けっこうあるし。




今の段階でがんの事知ってる人は

もちろんW科長とS代行、事務のY主任。

科の仲のいい子にも病院に通ってたことも全然言ってない。


だってひくじゃん。



でも、入院が7~10日。

自宅療養と合わせて少なくとも2週間くらいは休むワケだから

もちろん皆には言わなきゃならない。

迷惑かけるし。


つーかもう言いたい!!

面倒!!


科の皆には全然言ってもいいし。




でーもー。


科の人以外には言いたくない。


だってひくじゃん。




ひく理由としてひとつ、

去年、会社の方が乳がんで亡くなったってのもある。

それに世間は『がん』というものに対して過剰に反応するでしょ。

『たいしたことないがん』だって言ってもひくでしょ。


正直、他の科の人で

こっちが『聞かないでオーラ』出してても

絶対色々聞いてくるだろうって人もいるし。

心配とかじゃなくて、興味で。

騒がれるのもイヤだし。




なので、W科長と相談して

とりあえず科の人だけに全てを話すことにした。

今日の夕方、定時の10分前ぐらいに皆を集めてもらう事に。






なーんにも知らず、皆は普通に仕事(当然ですけど)。

私だけが、時間が近づいてきた・・・と考えて、緊張が高まる。


んー。


なんで緊張するんだろう・・・。



何に緊張??





もう時間だ。


W科長と目配せ。


「皆、ちょっと集まってー」



私の科は私、W科長含め総勢11名。

ぞろぞろと集まる。

そうそう集められることもないから、皆(??)って顔してる。



「オレから言おうか」

とW科長。

「お願いします」

と私。



「えー春先からバタバタしてたんですけど、

昨日やっとハッキリ決まりまして。

ぶーこ選手さんが、実は甲状腺に悪性の腫瘍、がんができまして

来月の16日から入院して手術をします。

がんって言っても、本当にそんなに大騒ぎするほどのものではなく、

初期で見つかったので、手術でとればいいってことで。

で、そんな周りに言いふらすことでもないので

この話はここだけの話でお願いします。


じゃあ、ぶーこ選手さん。」



「はい。。。

まー、そんな事になりまして。色々ご迷惑おかけしますが

よろしくお願いします。




(あり、あり。

やばい、涙がでそうだ)



今、現在この事知ってるのがS代行とY主任とここの皆だけでして

その他は言うつもりはないので、

でも帰ってくる時は傷作って帰ってくるからすぐばれるんだろうけど・・・


(違う、違う、そんな事どうでもいい!

長く休んで迷惑かけるってことを言いたいのに!!

なんか何が言いたいかわからなくなってきた・・・)



とにかく大したことはないので

あんま心配しないでください。

よろしくお願いします」







・・・だめだめじゃん・・・。


なんか結果、自分の保身(?)の事ばかりしゃべってた・・・。

いない間、迷惑かけますがよろしくお願いします、

がんと言っても進行も遅いし、がんの中では術後の経過もいいし、

本当にたいしたことはないので心配しないでください、

すぐ元気に帰ってきます!



ってちゃんと言いたかったのに・・・。





なんか泣きそうだった。


私は多分、プライドが高いからなのか、

病気であることが情けない・・・というか、

皆の心配そうな目線が痛いというか・・・




中学生の時を思い出した。



中学の時、部活で骨折をした。

(元新体操部。着地に失敗し、3日間ほっといた。

あまりに腫れがひかないので医者に行ったら骨が折れてた)


で、ギプスなどの処置をしていたら

医院の時間外になって

母親の迎えを待ってる間に待合室の電気も消され、

一人ぽつーん・・・。



あれは至上最高、情けなかった。



骨折した自分が。



涙がほろほろでてきた。



なんで私、こんなとこで一人でギプスしているんだろう・・・






あの時と同じ感じ。

とにかく自分が情けないんだよね。

人に心配されることがないから(普段、健康なため)

心配され慣れないというか。





まぁ、もう仕方ない。


約1ヶ月。


皆に仕事を分散してめいっぱい迷惑をかけさせていただこう。




皆さん、よろしくお願いいたします、ほんと・・・。


2010年8月19日


先日の手術前の検査の結果を聞きに。

それと、入院・手術の日程の最終決定をしに。


行ってきました。




11時予約。

旦那は仕事を抜けてきてくれた。

病院で待ち合わせ。


そこに、乳がんの手術後の放射線治療で

毎日通院している私の母ちゃんも時間見て待ち伏せしてた。



母ちゃんは手術前に抗がん剤やってますから

一回頭がつるっぱげに。

で、今は生えてきているとこなので

ちょーベリーショートみたいな感じ。

これでスタイルよければかっこいい中年のオバサンなのに・・・

いかんせん、メタボ。



うちらの顔だけ見て、安心して帰る母ちゃん。

ちゃんと旦那がいつも一緒にいるから大丈夫だって言ってるのにさ。

心配ありがとう。


で。。。。




2時間近く待たされた・・・・。



旦那、午後には会社に戻れると思ってたのに、

ゴメンなちゃい。

お昼も食べるヒマないじゃんねー。



で、呼ばれて。


「検査の結果は特になにもないですね。大丈夫です。」



でしょう。だって基本、健康優良児だもん。


「では、手術も予定通り9月16日入院の17日手術でいいですね」


「あ・・・先生、ちょっと・・・」


「はい?」


「手術は全然その日でいいんですけど・・・

私、多分その日に生理がドンピシャでくるんですよ・・・」




そう。


何が一番ためらったかって、

生理なんだよ!生理!



通常、私は生理の周期が長くて

32~35日。

なのに先月はめずらしく早く31日できた。

もし、そのリズム(31日)でくれば9月の生理は9月13日にくる。

が!またいつもと同じ周期でくると、まさにドンピシャ!

手術日が生理2日目なんてこともぉぉぉぉ恐ろしい・・・。



最近、生理痛が重くて。

生理痛と下痢、腹痛とさらに胃痛もあって

もうどこが痛いかわからない状態。

そんな日に手術なんて絶対できない!!

つかトイレも行けないのにどーすんだ!?



と、考えてて。

だから病院の婦人科でピル出してくれて

確実に早めにこれるようにしてくれないかなぁ、と考えてたのだ。





「んーーーーーーー」


思わず下を向いて、苦笑いのO野先生。


「ピルとか処方してくれないですかねぇ」

「でもここでは出せないんですよねー」


え?出せないの?


「私、生理痛重くて・・・」

「あー!そーゆーのはちゃんと薬出しますから!」

「はぁ・・・」



聞き流された・・・。

旦那と顔を見合わせる・・・。


「じゃあ予定通りでいいです・・・」



仕方ない・・・。ちっ。

意地でも31日でこさせてやる(どうやって??)。




で、診察室をいったん出て、

別室で入院の説明。


これまた母ちゃんの時に見たことある資料たち。

入院の案内。

入院申込書。

麻酔の説明書。

入院、手術から退院までの日程表。

などなど。



おばちゃんの看護師が丁寧に説明してくれる。

この人のほうが先生よりよっぽど色々聞きやすかったわ。

会社はいつから行けるのか、とか

入院は何日くらいになるのか、とか。




ん?



「あのー。もしかして、入院まであと一ヶ月、私もう

ここには来なくていいって事ですかね」


「はい。もういらっしゃらなくて大丈夫ですよ」




なーんか。


蛇の生殺し状態。


じわじわ近づいてくるのね。




ってなわけで、書類一式いただいて、本日終了。


次にここに来る時は入院の時ってことさ。



■本日の支払い  ¥210

(内容)  再診料