昨年の暮れあたりから大御所ミュージシャンの訃報が続いていますね。 モーターヘッドのレミー・キルミスターにはじまり、新年早々誰もが驚いたデヴィッド・ボウイ、イーグルスのグレン・フライ、ジェファーソン・エアプレインのポール・カントナー、 EW&Fのモーリス・ホワイト、EL&Pのキース・エマーソン、そして衝撃的なプリンスの死… こんなに続くのはちょっとめずらしいのではないでしょうか。まあ60年代からすでにほぼ半世紀経ち. 活躍したミュージシャンが鬼籍に入る頃合いといえばそれまでなのですが…
しかし亡くなって直後のCDの在庫不足や価格高騰にはちょっと辟易いたしますね。特に価格高騰については商売の匂いが漂い、何となく虚しい気分になってしまいます。 メディアもここぞとばかりに露出させるようになるのも何となく浅ましく感じてしまうのは私だけでしょうか。 そんなこともあってデヴィッド・ボウイに続き天に召されたアーティストをとりあげるのは話題便乗臭い面もありますが、 こちらも「現在のところの遺作」が素晴らしいアルバムなのでやはり取り上げさせていただこうかと思います。
プリンスは敬愛するアーティストのひとりです。特に80年代はリアルタイムでしたのでダーティ・マインドあたりからよく聴いておりました。プリンスは年最低一回はアルバムを出すハイペースミュージシャンでしたので結構多作。なので 90年代以降の特にシンボル化してからの作品は聴いていないものも多いですが、それでもファンを自負してはおりました。
2010年に20Tenというアルバムを出してから4年間沈黙していましたが、2014年に突如リリースされた「ART OFFICIAL AGE」 とPrince & 3RDEYEGIRL名義の「PLECTRUMELECTRUM」のダブルリリースで俄然盛り上がったのは記憶に新しいところです。 特に自分は後者のアルバムがどストライクで、まるでツエッペリンのプリンス的解釈アルバムと言っていいのではないかと思うくらいロックグルーヴに溢れており好きでした。間髪おかず昨年「HITnRUN Phase One」をリリース。沈黙はいったい 何だったのかというくらいの精力的な音楽活動再開でまた目が離せなくなりました。
プリンスの訃報を知ったのは出張先の神戸でした。付き合いでしこたま飲んでホテルに帰り倒れるように眠り起きた朝、ツイッターのタイムラインを見て初めて知りました。大変大きな衝撃と「またか!何て年なんだ今年は…」という悲嘆が 襲ってきました。ほぼみなさんも同じようなお気持ちであったのではと思います。訃報があって後、ここに取り上げる 「HITnRUN Phase Two」のCDが出ていることを知り即予約をしましたが、手元に届いたのは少々遅れて5月4日でした。
一曲目のいきなりのインパクトですぐに引き込まれました。そしてどこか懐かしいプリンスメロディ。80年代のアルバム、「Around The World In A Day」あたりに入っていてもおかしくないのではないかと思うほどファミリアなメロディに驚きました。
フェーズワンは冒頭こそ自身の「1999」のサンプリングから始まりましたが、過去プリンスのテイストではなくて、「ART OFFICIAL AGE」路線のエレクトロニック(ダンス)ミュージックへの傾倒が強く、アーティスト・プリンスを 強く押し出した内容となっていました。対してこのアルバムは、ポップスター・プリンスの復活祭とでも言えるような内容となっているのに気付かされます。
Prince - Rock N roll Love Affair
以降の曲もミドルテンポで、ホーンセクションを効果的に使った、王道ともいえるプリンス版オマージュ的ファンクが続きます。打ち込みやエンジニアの手を縮小化したような生音感が特徴的に感じられます。まさに往年のプリンス節を感じさせる仕上がりとなっています。
タイトルの「HITnRUN」は直訳するに「あて逃げ」でしょうか。このアルバムは「ART OFFICIAL AGE」のようなコンセプトアルバムには入れられなかったアウトテイク&シングル集のようなもののようです。ご存知のようにプリンスは膨大な 未発表曲のストックを持っているためコンセプトに沿わないけれども「世に出したい曲」をリリースする必要から、 統一感をアルバムに持たせるため「エレクトリックサウンドのフェーズワン」、「ポップソングのフェーズツー」として分けたような感じがします。そしてロッカー・プリンスはサードアイガールとしてのリリースで表現したのでしょう。
また、こんな軽快なロックンロールまでこなしてしまう音楽性の広さも健在。アルバム全体の躍動感に寄与しているかのようです。
プリンスは前述のように膨大な未発表曲のストックがあるので、きっとこれからまだまだリリースが続くのでしょう。このアルバムを「現在のところの遺作」と申し上げたのは、これから何年も遺作が出続けるような気がしてならない からです。未だに発掘音源が遺族の手によって毎年のように出続けているジミ・ヘンドリックスのように。アーティストはある意味幸せですよね、亡くなってなお、作品は永遠に生き続けるわけですから。
しかしプリンスの死は、今なお死因がはっきりしていないようですね。訃報を目にしたとき、真っ先にドラッグ?というキーワードが頭を一瞬よぎりましたが、プリンスはドラッグやアルコールとは無縁で、しかもヴィーガンという ストイックを絵に書いたようなアーティストだったのでそれはないでしょう。だとしたら何が死の原因だったのか ファンとしてはやっぱり知りたいところです。今後も彼にまつわる情報はチェックしてしまうのでしょう、きっと。そして遺された音をずっと楽しませていただこうと思います。
偉大なるアーティスト、プリンス・ロジャーズ・ネルソンの死を悼み、
生前の心豊かにしてくれた活動に最大限の感謝の気持ちを込めて祈りたいと思います。