高校物理で出てくる重要な法則として
「力学的エネルギー保存の法則」
があります。
多くの生徒が次の式を覚えているのではないかと思います
1/2・mv2+mgh=一定
これでもマチガイではないのですが、正確な理解には達していません。
力学的エネルギー保存の法則についてキチンと押さえるべきところを説明します。
まず、覚えるべき関係ですが
「位置エネルギーと運動エネルギーの和が保存される」
このように覚えましょう。
「位置エネルギー」+「運動エネルギー」=一定
ですね。
法則を用いるからには、その法則が成立する条件が分かっていないといけません。
「力学的エネルギー保存の法則」が成立する条件は
「運動の過程で仕事をする力が保存力だけである」
です。
「保存力」がやや難しいですね。
「保存力」とは、「その力がする仕事が始点と終点だけで決まってしまい、経路には依存しない」ような力のことです。
例えば、重力のする仕事は、はじめの位置とおわりの位置の高さの関係だけで決まってしまい、途中どの経路を取ろうが仕事量は一定ですね。
それに対して、摩擦力がする仕事は、どのような経路を取って終点に至るかによって、仕事量が異なります。
重力は保存力で、摩擦力は保存力ではないということです。
どの力が保存力か、の判断は難しいので、
「重力(万有引力)」
「弾性力」
「クーロン力」
この3つが保存力だと覚えておけばいいでしょう。
あと、ローレンツ力は必ず仕事をしない、ということも覚えておくと良いでしょう。
フレミングの左手の法則より、
ローレンツ力の向きと荷電粒子の運動の向きは常に垂直なので、
ローレンツ力が仕事をすることはありません。
それで、仕事をする力が保存力だけのとき、
力学的エネルギー保存の法則が使えるのですが、
使う手順は
①働く力をすべて挙げる
②その力を仕事する力としない力に区別する
③仕事をする力が保存力かどうか調べる
このようになります。
多分、
なんとなく力学的エネルギー保存だろう
といい加減に法則を使っている生徒がほとんどだろうと思うのですが、
キチンと今述べたようなことを理解しておかなければいけません。
具体例を挙げましょう。
斜面を滑り降りる小球の運動について
斜面が滑らかなら
働く力は、重力と垂直抗力
垂直抗力は仕事をしない
重力は保存力
仕事をする力が保存力だけなので力学的エネルギー保存の法則が使える
「重力による位置エネルギー」+「運動エネルギー」=一定
このような手順になります。
斜面が滑らかでないなら
働く力は、重力、垂直抗力、摩擦力
垂直抗力は仕事をしない
摩擦力は保存力ではない
仕事をする力が保存力だけではないので、力学的エネルギー保存の法則は適用できない
となります。
この場合どうするのかというと
「エネルギーの原理」
を用います。
おそらく、高校物理では力学的エネルギー保存の法則が強調されているので、
エネルギーの原理を知らない生徒も多いと思いますが、
力学的エネルギー保存の法則はエネルギーの原理の一種です。
エネルギーの原理もしっかり理解しておきたいところです。
エネルギーの原理については次回説明したいと思います。
天井からバネで鉛直に吊されている小球の運動なら
働く力は、重力と弾性力
両方とも仕事をする
両方とも保存力である
よって、力学的エネルギー保存の法則が使える
「重力による位置エネルギー」+「弾性力による位置エネルギー」+「運動エネルギー」=一定
電場と磁場がある空間における荷電粒子の運動、ただし重力は無視できる
働く力は、クーロン力とローレンツ力
ローレンツ力は仕事をしない
クーロン力は保存力
よって、力学的エネルギー保存の法則がつかえる
「クーロン力による位置エネルギー」+「運動エネルギー」=一定
教科書に書いてある
qV+1/2・mv2=一定
はこういうことだったのです。
今回は、力学的エネルギー保存の法則について説明しました。
どうでしょうか、あなたは正確に理解できていましたか?
なんとなく力学的エネルギー保存の法則なんだろう、
という程度の理解の人が多かったんじゃないかと思います。
簡単な問題ならそれでもなんとかなりますが、
応用問題では正確な理解が必須です。
ここで理解しておきましょう。
拙著も参考になるでしょう
![]() |
高校物理発想法
2,160円
Amazon |
![]() |
東大物理攻略法
1,980円
Amazon |
次回、エネルギーの原理について解説します。