四つ這いの姿勢から片手を上げるとき、多くの場合「体幹が弱いからグラつく」と捉えられがちですが、それだけでは見落としてしまう大切な視点があります。それは、「支持基底面」と「重心」の関係性です。支持基底面とは、身体が接している地面と、その間の範囲のこと。私たちの身体は、重心が支持基底面の中央付近にあるときに最も安定しやすく、逆にその位置から離れるほど不安定になり、バランスを取るためにより多くの筋活動を必要とします。
一般的には安定性を高めるために、重心を支持基底面の中央に保とうとするのが自然な動き方ですが、トレーニングにおいてはその逆の状況、あえて重心を支持基底面の“端ギリギリ”に残したまま支えるという選択が、体幹の深層筋やバランス能力を引き出すために有効なのです。
四つ這いで片手を上げる際、もともと身体全体の重心は4点支持の中央あたりにありますが、そこから体重を完全に反対側に移してしまうと、手を上げる側の負荷は抜けてしまい、支える必要がなくなってしまいます。
つまり、重さが抜けた側では筋肉が働かず、「支える力」を育てるための刺激が減ってしまうため、トレーニング効果としては物足りないものになります。
そこでピラティスでは、重心をギリギリまで残したまま手を離すことで、まだその側にも体幹の質量がかかっている状態をつくり出し、結果として支持基底面からはみ出しそうで、なんとか踏みとどまっているという不安定な状況を意図的に生み出します。
このような“ギリギリの不安定さ”は、身体がバランスを保とうとする反応を引き出し、無意識のうちにインナーマッスルや筋肉の協調性が働くようになるため、「ただ安定した姿勢を取る」だけでは得られない質の高い運動が自然に行われるようになります。
重心を大きく移動させてしまえば、確かに動きはラクになりますが、それでは身体が支える必要を感じないため、安定性に関わる筋肉のトレーニングにはなりません。わずかに重心を残した状態で手を動かすという小さな不安定さを受け入れることで、深部の筋肉が活性化し、「支える力」や「軸の感覚」を身体が自ら学んでいくのです。
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