私たちは、動くときについ「筋力で支えよう」と力みがちです。腕や脚、体幹の筋肉をギュッと固めて動くと、一見安定しているように見えます。しかし、それでは身体は効率よく動けず、疲れやすくなってしまいます。身体を支え、効率よく力を伝える鍵は「筋肉の力み」ではなく、身体の内側にあるテンション(張力)です。

張力とは、筋肉や結合組織が生み出す内側からの張りです。ボールにたとえるとわかりやすいでしょう。
適度に空気が入ったボールは押されても形を保ち、力を均等に伝えることができます。これが身体の理想的な張力です。全身で力を分散し、滑らかに動けます。
空気が抜けたボールは、押すと簡単にしぼんでしまい、力が伝わりません。逆に、空気が入りすぎてパンパンのボールでは、硬すぎるため押しても弾みにくく、衝撃を吸収できません。筋肉を力いっぱい固める「力み」の状態に似ています。動きはガチガチで、効率的に力を伝えられません。

適度に空気が入ったボールのように、張力が整った状態となると、力は筋肉だけでなく、腱や筋膜、骨といった全身のネットワークを通じて分散されます。その結果、動きがスムーズになり、衝撃を吸収しやすくなり、そして持久力や柔軟性も向上します。

ピラティスでは、この「内側の張り」を意識することが大切です。単に筋肉を鍛えるのではなく、身体の内側に「弾力のある張り」を作ることで、全身がつながり、少ない力で大きな動きをコントロールできるようになります。

たとえば、プランクのような姿勢では、単に腕や体幹を力ませるのではなく、頭頂部から足先へ伸びる線、そして床を押す手から背中へ伸びる線をイメージすると、全身に均等に張力が広がります。この“伸び合う張り”が軸を安定させ、少ない力でも身体を支えられるのです。

力みではなく、張力が力を伝える。この感覚を意識するだけで、身体はぐっと自由に、そして効率よく動くことができます。

 

 

 

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先週は、反作用の力を一部で受け止めるのではなく、全身で分散させることの大切さについてお話ししました。今週は、その続きを掘り下げて「背骨の柔らかさがどのように力の流れを助けるか」を見ていきます。

硬いパイプを上下から押すところを想像してみてください。力は一部に集中し、大きな圧力がかかればパイプ自体が折れてしまうでしょう。では、柔らかいホースならどうでしょうか。全体がしなって形を変えることで、力を分散させることができます。

背骨も同じです。もし背骨が硬く動かないと、力は一部の関節や椎間板に集中してしまいます。その結果、身体に加わった負荷を吸収しきれず、腰痛や首の不調につながるリスクが高まります。逆に背骨がしなやかに動けば、負荷は全身へと分散され、ひとつの部位にストレスが偏りません。その結果、効率的で安定した動きが可能になるのです。

ここで、もう一つ重要なのが「張り」の存在です。
ホースに水が流れているとき、内部の圧力がしなやかな張りを生み、外からの力を全体へと伝えてくれます。しかし、水が流れていない空のホースでは、たとえ柔らかくても力を十分に伝えることはできません。

ピラティスには、ロールダウンやスパインストレッチのように「背骨を一つずつ動かす」エクササイズがあります。これは単なる柔軟性のトレーニングではなく、ホースのように全体でしなやかにしなりながら力を受け止め、分散させるための“回路”を育てる練習でもあります。

そして、背骨が柔らかいだけでは不十分です。そこに呼吸や体幹の働きによる“適切な張り”が加わることで、全身のつながりが生まれます。

ピラティスでは、この「しなやかさ」と「張り」の両立を練習することができます。
柔らかさによって力を分散し、張りによってつながりを保つ。
そのバランスこそが、動きを滑らかにし、負荷に強い身体を育てていくのです。

 

犬の動きはいつもしなやかでパワフルです。

 

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先週は、ドアノブを回そうとして転倒したロボットの例をご紹介しました。ドアノブを回すと、その逆向きの回転力(抗トルク)が腕から肩、体幹へと伝わります。ロボットはその反作用の力に十分対応できず、全身のバランスを崩してしまったのです。

物理学でいう『作用・反作用の法則』(ニュートンの第三法則)によれば、ドアノブを回すと、その瞬間に同じ大きさで逆向きの力がこちらに戻ってきます。このような反作用の力を一部の筋肉や関節だけで受け止めようとすると、そこに応力(ストレス)が集中し、疲労や痛みの原因になります。反対に、全身を使って複数の経路に力を分散させれば、一点あたりの負荷は小さくなります。エネルギー効率も上がり、安定性も高まります。

たとえば重いスーツケースを持ち上げるとき。腰だけで引き上げれば、腰椎周囲に大きなモーメント(回転の負荷)がかかります。しかし、足で床を押し、股関節と骨盤で支え、体幹で保持しながら腕で引き寄せれば、力が全身に分散し、一部の関節に過剰な負担がかかるのを防げます。

ピラティスの立位アームワークも同じです。一見「腕の運動」に見えても、足のグラウンディング、骨盤帯の安定、体幹の支持、肩甲帯の安定といった全身の連動があってこそ、反作用を受け止められます。腕だけで支えれば肩や首が疲れてしまいますが、足から体幹、肩へと力を伝えることで、省エネで安定した動きになるのです。日常生活でも、たとえば荷物を抱えて歩くとき、腕だけでなく体幹も含めて持つと局所への過負荷を防ぎ、動作の安全性と効率を向上させられます。

力を受け止めるとき、局所で耐えるのではなく、全身で分散させる。
これはパワーを高めるだけでなく、省エネで動き続けるための基本戦略です。ピラティスは、その全身連動を安全に練習できる場でもあります。
「どこで支えるか」を意識することは、動きをしなやかに、そして強くしてくれるのです。

 

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これは、2015年に開催された災害救助用ロボットの競技大会(DARPA Robotics Challenge)での一場面です。ロボットがドアノブを回そうとした際、姿勢を崩して転倒しています。

「ドアを開ける」という、ごく日常的な動作。しかしこのシーンから見えてくるのは、「姿勢の安定性を保ちながらトルク(回転を生む力)に対応することの難しさ」です。
この“回されそうになる力に抗う”という運動制御は、実はピラティスにおける身体教育とも深く関係しています。

ドアノブを回すには、手でノブを回転させる方向へのトルクを発生させる必要があります。同時にその反作用として、身体全体には逆方向の回転モーメント(ねじれ)が伝わります。人間の身体では、体幹部や対側の筋群が自動的に活動し、姿勢を崩さないように調整しています。
一方ロボットは、動作中に生じる力の変化をリアルタイムで予測・補正する能力が不十分だと、姿勢制御が追いつかず、転倒してしまいます。

ピラティスでは、動作の際に「体幹から四肢へと動きをつなげる」ことが強調されます。
それは単に腹筋を鍛えることを目的としたものではなく、運動中に生じるねじれや外乱に対して“軸の安定性”を保つ力を養う、教育的なアプローチです。

たとえば、ピラティスのキャデラックで、立位姿勢から片手のみでスプリングを引くアームワークを行うとします。このとき身体には、スプリングに引かれる方向とは逆のトルク(回される力)がかかります。
動いているのは腕であっても、実際には腹斜筋、多裂筋、骨盤帯周囲の筋群などが協調して活動し、「回されないように支える力」を発揮しているのです。

このように「動きながら安定を保つ」ことは、動的安定性における抗トルクの精緻なコントロールを学ぶ実践になります。揺れを完全に止めるのではなく、微細な回転を絶えず打ち消しながら、全体として「ブレのない姿勢」をつくっているのです。

つまり、「まったく動かない=安定」ではなく、“動きそうで動かない”という絶妙なバランスの中にこそ、質の高い安定性が存在しています。

ピラティスでは、このような回転力を身体で感じながら動くことで、軸感覚が育まれていきます。
重力、床反力、スプリングからの負荷といった外力により生じる回転に対して、それを受け止め、調整しながら動く。この繰り返しの中で、インナーマッスルの協調性や「中心を保つ力」が磨かれていくのです。

 

 

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重心の位置や身体の質量が「どこにかかっているか」に目を向けると、支える力や安定性に大きな違いが生まれることを、前回の投稿でご紹介しました。
では、その重さを支える地面からは、私たちにどんな力が返ってきているのでしょうか?
それが「床反力」と呼ばれる、動きと安定性を支えるもう一つの重要な力です。

床反力(Ground Reaction Force)とは、私たちが地面に力を加えたときに、地面から返ってくる力のことを指します。とてもシンプルに言えば、「押したら押し返される」という関係です。これは、ニュートンの第3法則(作用・反作用の法則)に基づいており、「あなたが床を押すと、床も同じ大きさで逆向きの力を返してくる」
というしくみになっています。

たとえば、立っているとき。足の裏で床を押すことで、同じ大きさの力が床から上向きに返ってきています。この押し返しの力があるからこそ、地面に沈まず、重力に負けて倒れることなく、私たちは立っていられるのです。

歩いているときには、足で地面を後ろに蹴り出すことで、床から前向きの力が返り、身体が前へ進みます。ジャンプするときには、地面を強く蹴ると、上向きの反発が返ってきて、身体が空中に浮き上がります。

このように、床からの力は常に私たちの身体を支えてくれていますが、普段はあまり意識されることのない「静かな力」でもあります。しかし、動きの質を高めたり、姿勢の安定性を引き出したりするためには、この力の方向や大きさを“どう受け止めるか”がとても重要です。

たとえば、四つ這いで片手を上げるとき。体重は反対側の手や膝、足の甲に集中します。このとき、それぞれの支持点には地面からの反発=床反力が働いており、その力を身体がどう受け止めるかによって、安定性や動きの滑らかさが大きく変わってきます。

特に、体幹の深部筋はこの床反力を「受け取り」、それを軸にして身体を微細に調整する役割を担っています。地面から返ってくる力を逃がさず、適切に伝えることができれば、必要なところに自然と筋活動が引き出され、結果として「支える力」や「軸の感覚」が育まれていくのです。

また、床からの力は単に「受ける」だけではなく、「活かす」こともできます。
たとえば、手のひらでしっかりと床を押すことで、その反力が肩甲帯から体幹へと伝わり、背骨が引き上げられるような感覚が生まれます。こうした上下方向の力の流れは、姿勢の安定や動きの軽やかさにつながり、「自分の身体を自分で支えている」という感覚を育むうえでも大切です。

ピラティスでは、この床反力を単なる“支え”ではなく、動きの“パートナー”として扱います。
自分が床に働きかければ、床も等しく応じてくれる。この相互関係の中で生まれる繊細な感覚が、身体の内側から自然な支えを引き出し、無駄のない、美しい動きへとつながっていくのです。

 

 

 

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