いろいろな意味で衝撃を受けることのできる九つのアニメ作品からなるオムニバス。
マトリックスの延長線上に考えうるエピソードを追っている。
本編の映画がああいうかたちで3作品続いてみて、この作品の意味はむしろ大きく感じられる。
本編を補完するかたちで企画されてると言える。
映画ですら、マトリックスという大きな構造の一面をスクリーン用にもっとも耐えうるエンタテインメントなエピソードで追いかけるしかできなかった。
そこからこぼれたアイデアがたくさんあって、どうせなら日本のアニメスタジオに大きく関わってもらって全体としての「マトリックス」を完成させてほしい。という気持ちが伝わる。
日本のアニメスタジオのこの企画にかかわる気合いもびりびり伝わる。
それはだれにでもわかるほどだと思う。
コラボレーションという語を軽々しく使う勿れ。こういうものがコラボレーションだと思う。
たとえば、
だれかがだれかにきっかけの手紙を送る、それを受け取ったものが1年後、予想だにしなかった作品を送り返す。
そういう馴れ合わない理解のことをコラボレーションというと思う。
まぜっかえして焦点のぼやけた商品を人に売りつけるために使うべきではない。
それやってるヒマがあったらネタの無いことを自覚して、本気に新しいものを考えることに時間とお金を使うべきである。
なにがすごいのか?という問いには、「すべてが」と答える。
既存のセルアニメの延長上のものではあるけれど、タッチを大きく変えて、目新しさを強調していることろがかっこいい。
また、なぜそれをアニメ化するのか?という問いにも簡単に答えられる。
それは「タッチによる視覚効果がすさまじいから」だ。
こういう部分に従来のセルアニメ用のタッチと表現用のタッチとのパワーの差をきっちり出してきてる。
それは映画にも出せない効果、という意味で必然性を備える。
日本のアニメは手塚治虫先生の開発したリミテッドアニメを得意とする。
このリミテッドの手法は突き詰めればサウンドと止め絵だけでどれほど情感をかもしだせるか、ということにつきる。
そういう「間」の存在に価値を与える日本人ならではの感じ方をそのまま手法にしてコストに貢献させたということだけど、実はこの「間」の認識という一見副産物に見える価値観は、もともと映像作品に内包されるものとして、アニメ表現というカタチにする過程でおもわず突出したもので、それがなぜ突出したかといえば、やはり日本人がそう認識したからに他ならない。
マトリックスの監督も、ここは正直「胸を借りた」という気持ちもあったと思う。
技術や表現の奇抜さで圧倒できる力を持つ日本のアニメだけど、こういった「間」を器用に利用して独自の表現に高める手法ももともと持っている。まだまだ伸びる分野だと言える。
まあ、このアニマトリックスもすでにそれほど新しくはないけれど、一定の水準に達しているという意味で、ユニークなアイデンティティを持つ作品に数えてもいいと思う。
本編の三つの映画とこのアニメ。
実はルーツをたどる意味をも持つこのアニメ企画は、けっこう重要な意味を含むと思う。
ただのサイドストーリーとして観てもよし、そういう含みを味わいながら観てもよし。
自分は一発目のフルCG作品で度肝抜かれた。
人物はよくよく見て微妙に違和感のある程度。よくできてる。実物と並べて比べるのは野暮というもの。
ここまでくるとアニメートさせるという意味を、あまり感じないので、全部キャプチャでやったほうがいいとすら思える。
自然な基本動作はほぼキャプチャだと思う。
ところどころ手付けの大げさなモーション。
男女のキャラクターが刀の練習をしていて、体すれすれに刃先が交錯しておたがいの着衣が脱がされていくというなんともふざけた、やったモン勝ちなシナリオ大賛成。
だれでも考えてるんだね、こういうすじがき。
アクションそのものは、まあ、普通。
センチネルの動きは複雑で気合入ってるね。これ大好き。
あとはセル調の作品が多いけれど、それぞれCGとシームレスに表現したり、タッチに凝ってみたりと、目が飽きない。
そういう意味でも単純にフィジカルな要素としてサービスが行き届いてるのでお得でもある。
非常にリッチなDVDだと思う。
好みもあるとはいえ、そんじょそこいらのテレビのアニメDVD何本か借りてみるなら、これ一本で何度か楽しめるような気もする。
そしてアニメを見るという一般的な行為として考えた場合、それで十分。おかわりはいらない。
それだけパワーがあって、カラフルな表現に満ちている。
アニメの本分としての「アニメートする」こと。
リミテッドに感じさせる「間」のこと。
単にシナリオに拠らない「映像表現」として優れていること。
「アニメであることの条件」をいまさらながら考える機会に遭遇する。
いかに考えるか?
ということに気づかされる。
少なくとも比較はなりたつ。
従来型の見方とか、固定観念とか。
アニメ屋さんの本気はけっこうこわいよな。