横風と向かい風 | 消しゴム君 寫画集

消しゴム君 寫画集

寫眞と物語と言葉で綴った寫画集

 

鬼のような形相で迫り来る向かい風に立ち向かう力は、意識して構えればなんとかひねり出せる。

しかし、ふいに襲ってくる横風には、どんな巨人であっても一瞬でコントロールを失ってしまう。

 

 

先日、仕事帰りに乗った飛行機はいつになく大揺れに揺れた。

飛行機移動には慣れていたのでさほど気にせずシートに深くもたれていたが、他の乗客は動揺を露わにしていた。

 

そこに突然の横風が機体を襲う。

機体は激しく横に大きく流された。

 

その時、ふと思った

 

機体は迫り来る向かい風であってもなんとか機体を保ち、目指した方角に突き進んでいたのだが、予想もしないふいな横風に一瞬惑わされたのだ。

 

しかし機体はすぐさま冷静に姿勢を正し、前よりも増して速度を上げ力強く突き進んだ。

 

人間も同じだ。

 

前に立ちはだかる出来事には、それなりに考え、それなりに対処し、それなりに姿勢を保てるが、ふいに襲ってくる想定外の横風の出来事には人それぞれの動きをしてしまう。

 

あのパイロットのように、驚いたものの即座に姿勢を保ち、何事も無かったかのような顔をして目的地に進む者。

 

横風にそのまま身を任せ、そのことでわずか1度のズレが生じ、その1度の誤差によって同じところを何度も旋回し続けてしまう者。

 

横風にブレないためには

自分の軸を持つことだ

軸が正しいか誤っているかは問題ではない

間違っていたと気づいたら矯正すれば良い。

少なくとも他人に方角や選択を依存するよりはずっとましだ。僕はいつもそう思っている。

 

それが「自分は何者だ」と言う問いの

「始まりの答え」になる。

 

キミよ

僕よ

日本人よ

 

もっとしっかり自分を保て

それまで語っていた思想や文化や誇りを、ふいの横風に煽られてたやすく捨てないでくれ。

 

横風の流行に惑わされ、踊らされ、

人の評価や数の正義に安易に身を委ね、

唯一無二の自分のブランドをどうか捨てないでくれ

 

あのパイロットのように、頑なに自分のアイデンティティと進む方角を信じ、力強く舵を握ってくれ

 

一人でソファに腰を落とし

そんなことを少し止まって考えた。

 

(「横風と向かい風」より)