ヨーゼフ・アントン・ブルックナー(Joseph Anton Bruckner / 1824年 - 1896年)
没後130年に寄せて、ブルックナー交響曲探訪シリーズを掲載しています。
総合概説の後、第00番から作曲年順に各交響曲の探訪を進めています。
今日は、ブルックナーの人生の中で最も好評を得た初演に恵まれた上、
現在でも人気が高い作品、交響曲第7番を探訪します。
この「第7番」は「第4番」と並んで演奏頻度も高く人気も高い作品と目されます。
ブルックナーを聴き始める方の入門編としてもお勧めできるナンバーです。
(だからと言ってこの7番や4番が平易で優しい曲ということではありません。)
この第7番は初演から大成功となって、ブルックナーは交響曲作曲家(シンフォニスト)
としての成功と名声を生前に得ることができたのでした。
敬愛するワーグナーが危篤の床にあることを知りながら第2楽章を書き進めている中、
遂には訃報に接してコーダを付して、自らこの楽章の終盤を『葬送音楽』と呼んだそうです。
その部分にはワーグナー・チューバ4本が導入されています。
現在では、ベートーヴェンの『英雄』の第2楽章と同様に、要人の葬儀などで
このブルックナーの「第7番」の第2楽章が演奏されることも多くなっています。
実は筆者には忘れがたい経験があります。
1989年1月7日の夜明け頃、私は首都高速の中央環状線を荒川に沿って
南の湾岸線方面に向かって自家用車のハンドルを握っていました。
夜明けが近づき夜空が次第に薄明るくなってきた頃、ふとカーラジオのスイッチを入れました。
すると、ブルックナー「第7番」第2楽章が厳かに流れていたのです。
『何でいつもの番組と違ってこの時間にこの音楽が!?』と思いながらも、
夜明け前の空が広がる風景と妙にマッチした荘厳な響きに浸っていました。
そして楽章が終わる、天皇陛下の崩御の報を知らせる静かなアナウンスが聞こえました。
その時の風景が、今の私の脳裏に鮮明に焼き付いています。
往年の大指揮者カラヤンの最後の録音がこの「第7番」であったこともよく知られています。
(この記事の下段に写真を掲載しておきます。)
ベルリン・フィルとの来日公演でも取り上げていたことを私も記憶しています。
尚、木管は2管ずつ+ホルン4+トランペット3+トロンボーン3
♫ ♫ ♫ ブルックナー交響曲探訪 vol.9/交響曲第7番 ♫ ♫ ♫
〜交響曲第7番 ホ長調〜
注釈)交響曲第7番 ホ長調 - - - - 1881-83年作曲 / 1885年出版に際しての改訂版有り
下の解説は、主にハース版を基に記しています。
第1楽章 Allegro moderato (演奏時間:約20分)
ブルックナー流の三つの主題を擁するソナタ形式による冒頭楽章です。
冒頭は、典型的なブルックナー開始によって第一主題が悠然と姿を表します。
そして木管楽器から始まるかなり長い第二主題を経て第三主題に至ります。
展開部に入っても滑らかさを讃えながら荘重な音楽が続きます。
途中で第二主題の反行形が印象的に扱われる連綿とした展開も見られます。
何度も第一主題が調を替えて探るような終盤の展開を経て、
三つの主題が順番に回帰する提示部に比べてやや圧縮した再現部となります。
そして、第一主題を中心としたコーダ(終結部)によって壮大に楽章が閉じられます。
ほぼ主和音のみで押しに押しまくる結尾は、ブルックナー流の音の大伽藍です。
第2楽章 Adagio. Sehr feierlich und sehr langsam (演奏時間:約25分)
ブルックナーの緩徐楽章の標準形とも言える A-B-A-B-A-Coda の構成による緩徐楽章です。
前述の通り敬愛するワーグナーの死を意識しながら書いたという経緯があり、
「葬送行進曲」の性格を色濃く持っている、厳かで美しい音楽が連綿と流れる楽章です。
終盤にワーグナー・チューバが導入されて、
ブルックナー自身が「葬送音楽」と呼んだ楽想でこの楽章は結ばれます。
第3楽章 Scherzo: Sehr schnell (演奏時間:約11分)
ワーグナーの死から意を決して決別するかのように、第2楽章から一転して、
ブルックナーらしい野性味を湛えた快活なスケルツォ楽章となります。
スケルツォを得意としたブルックナーの面目躍如と言える楽章です。
勿論、スケルツォ→トリオ→スケルツォの三部形式(複合三分形式)構成です。
トリオ(Trio)はスケルツォ主部とは対照的に柔和な楽想です。
第4楽章 Finale: Bewegt, doch nicht schnell (演奏時間:約14分)
三つの主題を擁したソナタ形式による構成ですが、再現部での主題の再現が、
第三主題→第二主題→第一主題と逆順になっている点が珍しい終楽章です。
どことなくユーモラスな楽想から始まり、展開部が極短く、
ブルックナーの終楽章としてはコンパクトではありますが、
独特の存在感を醸し出している音楽です。
ひょっとすると、『A-B-C-小展開-C-B-A-Coda と捉えられる
ブルックナー流ロンドソナタ形式を試したのでは!?』とも考えられます。
Coda(終結部)の最後は第1楽章の第一主題を敷衍して盛り上がり、
再び主和音で押しまくる音の大伽藍となって全曲が閉じられます。
全曲約70分の大作ですが、第1楽章と第2楽章で全体の三分の二程を占める、
やや"頭でっかち"なバランスが指摘されることもあるようです。
それはともかく、人気はなかなか高いブルックナーの「第7番」です。
日本でも、かなり演奏頻度が高い名曲として認識されています。
私の仕事場のライブラリーにあるCDをご紹介しましょう。
大指揮者カラヤンの最後のレコーディングを収録したディスクとして有名なCDです。
アントン・ブルックナー 交響曲第7番 CD / グラモフォン / POCG 1005
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
もう一枚は第9番とのカップリングになってるCDです。
アントン・ブルックナー 交響曲第7番 CD / RCA BMG / BVCC-8917-18
ギュンター・ヴァント指揮/ケルン放送交響楽団
最後に、チェリビダッケ指揮/ベルリン・フィルによる、
遅いテンポどりによる壮絶な演奏をリンクしておきましょう。
A historical, superlative concert:
The Berlin Philharmonic performs Anton Bruckner’s Symphony No. 7 in E major (WAB 107) under conductor Sergiu Celibidache in the Konzerthaus Berlin, in the spring of 1992. Rehearsals for the concert were documented in the film ‘The Triumphant Return’ (dir. Wolfgang Becker, 1992).


