1970年代、アメリカ・サンフランシスコでゲイの地位向上のために身を投じたハービィー・ミルクの物語。自身ゲイであるミルクは、ゲイの市民権獲得のために、市政委員に立候補。3度の落選ののちに“ゲイとして初の公職”を得るに至る。いまでさえ、ゲイというと微妙なニュアンスが紛れ込んでしまうことは紛れもない事実だが、'70年代当時、マイノリティーとしてのゲイとの偏見との戦いには、相当な苦労があっただろうことは間違いない。“すべての人間には平等な権利がある”という主張は、ゲイであることを超えて、人間の尊厳を求めての戦いであったように思われる。そういった意味で『ミルク』は、「不屈の闘志でもって社会の偏見に立ち向かう」という、アメリカ映画のひとつの“テーマ”に則った作品だと言える。これが実際の出来事をベースにしているということと、アカデミー主演男優賞を受賞したミルク役のショーン・ペンのすばらしい演技が相まって、極めて感動的な作品に仕上がっていると思う。

とはいえ、この『ミルク』が発表されたのと同じ年に、アメリカ・サンフランシスコにおいて、同性結婚禁止に関する住民の投票が可決され、同性の結婚は禁止となってしまうわけで、ゲイというのはきわどい問題を孕んでいるのだと思う。

最近なんとなくアニメを観るようにしているのですが(といっても週に5~6本程度)、この春のアニメでもっとも期待していたのが『東のエデン』。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の神山健治監督のオリジナル作品ともなれば、やっぱり期待しないわけにはいかないわけで……。

で、あまり予備知識を仕入れていなかったので、どこに話が進むかもわからずにいたわけですが、謎を含みつつ展開されるストーリーに惹きつけられて、わくわくしながら観ています。羽海野チカの絵がかわいくて、ぱっと見ほのぼのした雰囲気になりがちですが、描かれているのは“テロ”の話で、「どこまでこの監督はテロの話が好きなんだ?」って思ってしまいます。もしかしたら“テロ=日常を破壊するモノ”みたいな仮託があるのかもしれませんなあ(あまり無責任なことも書けませんが……)。物語の日常性と非日常性がちょうどいい具合で、リアリティーがありつつも非日常に踏み込んでいくというバランスが絶妙で、それは羽海野チカのキャラの魅力が大きいのかもしれません。今後ますます楽しみな作品であります。

昨年は黒澤明監督の没後10年。


それを企画してNHK衛星第2で黒澤監督の全作品を放送するという誠に豪儀な企画が、昨年にあった。ぼくも何作か撮り逃しつつ何作かを撮りしていま遅ればせながら黒澤作品を少しずつ観ている。いままでずっと観たかった、『用心棒』や『隠し砦の三悪人』、『生きる』、『天国と地獄』などが観られてとても嬉しかったのだが、圧巻だったのが『赤ひげ』。


“人間を描く”ということにまっとうに向き合った圧倒的な迫力はさすがというほかなく、映像を観ていてただただ口をあけているばかりだった。まあ、山本周五郎の原作(←ぼくは未読)の力もあずかって力あるのかもしれないけれど、それにしても、すごさを感じます。