1970年代、アメリカ・サンフランシスコでゲイの地位向上のために身を投じたハービィー・ミルクの物語。自身ゲイであるミルクは、ゲイの市民権獲得のために、市政委員に立候補。3度の落選ののちに“ゲイとして初の公職”を得るに至る。いまでさえ、ゲイというと微妙なニュアンスが紛れ込んでしまうことは紛れもない事実だが、'70年代当時、マイノリティーとしてのゲイとの偏見との戦いには、相当な苦労があっただろうことは間違いない。“すべての人間には平等な権利がある”という主張は、ゲイであることを超えて、人間の尊厳を求めての戦いであったように思われる。そういった意味で『ミルク』は、「不屈の闘志でもって社会の偏見に立ち向かう」という、アメリカ映画のひとつの“テーマ”に則った作品だと言える。これが実際の出来事をベースにしているということと、アカデミー主演男優賞を受賞したミルク役のショーン・ペンのすばらしい演技が相まって、極めて感動的な作品に仕上がっていると思う。
とはいえ、この『ミルク』が発表されたのと同じ年に、アメリカ・サンフランシスコにおいて、同性結婚禁止に関する住民の投票が可決され、同性の結婚は禁止となってしまうわけで、ゲイというのはきわどい問題を孕んでいるのだと思う。