また一つ、随分前の指導エピソード。
滝中学の一年生の女の子。Σのshun出身ではあるが、南女は不合格だった。私は受験後、中学での学習フォローで指導を始めた。
どういう生徒だったのかというと、ノートが凄く綺麗で丁寧、数学も繰り返し何度もやって定期試験では得点する、成績は50〜100番くらいをキープしている、こんな感じだった。
悪いことではないのだけれども、ちょっとヤバいと感じてはいた。度が過ぎるから。
確かに・・・
定期試験ではテスト範囲を何度も繰り返して脊髄反射でやれるようにした方がいいし、そうしないと試験時間が足りない。でも、それが度を過ぎると後々何の役にも立たなくなる。
ノートはある程度綺麗に書くことはよいが、蛍光ペンで艶やかな配色をするほど固執するのは時間の無駄。それを先生に褒められたことがあるのが、逆に痛い。ノートが綺麗で優秀な人は、書くのが手早いよね。
成績を追求するのはよいが、やり過ぎでは仕方ない。成績が受験に直結することではないので。特に中学の成績は推薦入試にすら影響しないのに。
数字が出ると追ってしまうのは人間の性だが、数学を活かすか、数字に殺されるか、それも学習のポイントだから。
挙句、技術家庭の指導をお母さんからお願いされたときには、さすがに辟易したわ。
お母さんも、数字が好きだったんだよね。
"成績が◯◯位だとどこの大学"とか
"問題集は◯回繰り返すべき"とか
そういうことを常に話していたんだよね。
こんな感じだから、お母さんとは方針で対立することも度々あった。そして、中学三年生の夏に、なんとかしないといけないと感じた私が方針を提案したことが決定的な断絶となり、私はクビになった。それでも2年以上継続指導したので、失敗ではないけど。
私はまだ若かった。硬い棒もゆっくり曲げれば曲げられるが、強く曲げれば折れるわな。
その後、この生徒がどうなったのかというと、三浪した末に私立医学部に入学している。滝で2桁だったのだから、もう少し早く決着できてもいいわな。
誤解のないように言っておくが、この生徒もお母さんも、そんなにズレた考え方をしているわけではない。おおよそ一般的な考え方だと思う。ちょっと度が過ぎただけだ。それをうまく修正出来なかったのは、私がまだまだこの世界では青かったからだろう。
お母さんとも生徒とも、その後偶然再会したのだが、遺恨は残っていなかった。まあそれは良かったな。
いくた
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