「あ、バニーちゃん」
 
 
これからトレーニング?と首を傾げるその仕草もら彼女を幼く見えさせる原因だと思う。
 
 
「そのバニーちゃんって呼ぶの、止めてくれません?」
 
 
「なんで?」
 
 
「なんでって…」
 
 
それはもちろん、
 
 
「僕より貴女の方が似合ってますよ、兎ちゃんぽくて」
 
 
嫌味半分、本音半分。
 
 
「あははっ」
 
 
僕の言葉に突然笑い出した彼女。
 
 
「何が可笑しいんですか?」
 
 
「んー?いや、まさかバニーちゃんが『兎ちゃん』とか言うと思ってなくて、…しかも、言い方がね、随分と可愛らしい感じだったからね、つい」
 
 
「僕は本当の事を言っただけですよ」
 
 
そう、事実を言ったまでだ。
 
 
銀色の髪。ライトブルーの瞳。白い肌。
 
 
柔らかな笑顔。
 
 
僕よりずっと彼女の方が『兎』のようだ。
 
 
「…でも、やっぱりバニーちゃんの方が『兎ちゃん』だよ」
 
 
「だから、」
 
 
「寂しがり屋さん」
 
 
「…そんなことないです」
 
 
別に寂しがりなんかじゃない。一人はなれた。
 
 
「でも、寂しくて死んじゃいそうな顔してるよ」
 
 
一人はなれた、はずなのに。
 
 
貴女がそんな風に、普段はしないような顔で、
 
 
大人のみたいな顔で優しく笑うから、
 
 
少し、ほんの少し、不本意にも泣きそうになった。
 
 
「そんな顔、してません、」
 
 
自分でも分かる、情けない声だ。
 
 
「そう?まぁ、寂しくなったら何時でも言いなよ。ネイサンが添い寝してくれるよ?」
 
 
「…遠慮しときます」
 
 
ふわふわで可愛らしい兎は優しいのか優しくないのか。
 
 
なんだか腑に落ちないが、それでも少し、ほんの少し、なんだか悔しい気もするが、心が軽くなった気がした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
寂しいなんて叫ばなくても、君には分かるんだね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
トレーニング後のシャワー、そしてシャワー上がりに飲む珈琲牛乳。
 
 
…格別だ。
 
 
この1パックの珈琲牛乳の為に、日々トレーニングしているといってもいい。
 
 
それくらい幸せな一時である。
 
 
「髪、ちゃんと拭いてください」
 
 
そんな小さな幸せに浸っていると後ろからバニーちゃんの声が聞こえた。
 
 
…と、同時に突然視界が真っ白になる。
 
 
「バニーちゃん前見えない」
 
 
「バーナビーです」
 
 
少し不機嫌そうにそう言う彼は、何故かあたしの髪を吹いてくれている。
 
 
…意外と面倒見がいいキャラなのかもしれない。
 
 
「バーナビーは優しいね」
 
 
「な、別に貴方のためではないです!ただそのまま歩き回られたら床が濡れて滑るじゃないですか!そうなればおじさんはどんくさいですからすぐ転びますよ!あ、いや、あの人の心配とかじゃなくて、これからの仕事に支障が…」
 
 
「うん、そこまで聞いてないよ」
 
 
顔を真っ赤にして否定してるけど、なんというか彼は言い訳が苦手なのだろうか?
 
 
今もあたしの声が聞こえてないのか一人で喋り続けている。
 
 
「…バニーちゃんも可愛いね」
 
 
最早、自分の世界に入っていて聞こえないであろうバニーちゃんにあたしは小さく呟いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
可愛いのはうさぎちゃんだから!
 
 
「バーナビーです」
 
 
「あ、聞こえてたんだ」
 
 
「…あと、可愛いとか言わないでください」
 
 
(…だって、可愛いんだからしょうがない。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
パンケーキにホイップクリーム、ブルーベリージャム、あと、ミルクたっぷりの珈琲。
 
 
それがあたしの朝食である。
 
 
「あら、シルヴィエそれかけすぎじゃない?」
 
 
「そうかな?…普通だと思う」
 
 
普段は寝坊助なあたしだが、月に一回早起きしてネイサンとお気に入りのカフェで朝食を一緒にとる約束をしている。
 
 
「それにしても、毎日パンケーキって飽きない?」
 
 
テーブルに頬杖をついてネイサンは不思議そうにあたしを見つめる。
 
 
「うん、飽きないよ」
 
 
「そう、…あ、」
 
 
「んー?」
 
 
不意にネイサンの右手が伸びる。
 
 
「ついてた」
 
 
あたしの口元についてたらしいブルーベリージャムを親指で拭っい、笑ってその指を舐める姿は、うん、少女漫画のようだ。
 
 
「…ネイサンってホント乙女だよね」
 
 
「なによ、いきなり」
 
 
「可愛いってこと」
 
 
「あら、ありがとう」
 
 
シルヴィエも可愛いわよ、って笑うネイサンの方があたしは可愛いと思う。
 
 
後日、そう虎徹さんに話したら「お前、頭大丈夫か?」と聞かれた。
 
 
…あたしの何処が間違っているのだろうか?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
砂糖菓子みたいに甘いなんて言ったら大袈裟だろうか?
 
 
それくらい、可愛かった。
 
…少し分けて欲しい、その可愛さ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
虎のおっさんも牛のおっさんもオカマも可愛いよ!
 
 
いや、みんな可愛い!