「なぁ、ジャイロ?前に女神が乗ってるって言ってたよな?」

夜も更け、そろそろ寝るかと久しぶりのベッドに体を沈めると隣からジョニィが目を擦りながら小さく呟いた。

「なぁ、その女神ってさ、女神って言うくらいだし美人なのか?」

なんて本当に些細な、何の中身もないような、言うなれば「お前、昨日の晩飯何だった?」とか言うレベルの話。

「…あぁ、うん、そうだなぁ、美人、というよりは愛らしいって感じだな」

ふぅーん、とやはり特に興味があって聞いたわけではないようで気の抜けた返事を返した後、直ぐに寝息が聞こえた。

規則正しい呼吸の音を聞きながら、オレもゆっくりと瞼を閉じる。

暗闇に懐かしい後ろ姿が浮かんだ。




「ジャイロ、また女性患者といけない事したのね」

真っ白なシーツを抱えてオレを見上げる、その青い瞳が好きだった。

「もう、いい加減にしなよ、シーツを交換する私の身にもなってよ」

よく通る、その声も、

「あ、そう言えばこの前プレゼントしてくれた髪飾り付けてきたの?どうかな?」

くるり、と回った反動で揺れる銀の髪も、

「ん、流石俺が選んだだけあってセンス良いわ」

「なにそれ」

何よりも笑った顔が好きだった。

「…ジャイロ、私は暫く居ないんだからね、しっかりやるのよ」

そう言って、彼女は田舎町へと流行病の看護を手伝いに行き、戻っては来なかった。

彼女は病の感染を防ぐ為、向こうで燃やされ埋葬された。

オレの手元に残ったのは彼女が持って行かなかった、あの髪飾りだけだ。



「今もお前に縋ってるって言ったら、きっと叱られちまうんだろうな」
ぼくの隣でクロッキー帳を覗き込む彼女。

「ねぇ、飽きないのかい?」

もう随分長い事、ぼくはここでスケッチをしていて、彼女には一言も声をかけていなかった。

「何がですか?」

ゆっくりと顔を上げる彼女と目があう。

「見てるだけでつまらなくないのか?」

思いのほか、近かった距離に少しだけどきり、としてぼくは視線を逸らした。

「…こうやって、せんせのスケッチをみてるとね、せんせの見てる景色が見えるの」

ぼくの肩にぴったりとくっついてクロッキー帳の中の景色を白い指先が撫でる。

「あたし、今、露伴せんせと同じ景色をみてるんだなぁって、」

それがね、とっても素敵なことだな、って、

そう言って笑う。

(…君はそうやって、)

「…なにそれ、変な奴」

そうやっていつも何食わぬ顔をして、ぼくの内側を掻き乱すんだ。

熱くなったぼくの頬を春の風が撫でていった。
せんせはいつもあたしを馬鹿だという。
本当にその通りだと思う。
せんせの言っている事はいつも正しいと思う。
「ぼくは君なんか何とも思ってない。嫌いではないが、別に好きでもない」
知ってるよ、あたし、せんせの事、いっぱい知ってるよ。
せんせが好きな人だって知ってるよ。
知っててね、それでもね、
「あたしはあなたがだいすきです」



露伴先生ツンデレすぎ好き