ゴールドの毛皮に真っ赤なベスト、白いスカーフを巻く猫が一匹。
 
 
「こんにちは、ベルフェゴールさん」
 
 
屈んでそう あいさつすれば、彼は顔を真っ青にして後ろに飛んだ。
 
 
「お、俺に近づくなって言ってんだろこのやろー!」
 
 
 
 
 
「フェルたん、さくの事怖がりすぎやない?」
 
 
別にお前まだお仕置きとかされてへんやろ。
 
 
「うるさい、俺はお前と違うんだよばかやろー」
 
 
「ベルフェゴールくんは女性が苦手ですもんね」
 
 
「…の割にはさくの事、ちらちらみすぎやろ」
 
 
むにむにと頬をつつくこの阿呆を今すぐ切り刻んでやりたい…!
 
 
「ちょ、フェルたん顔怖いよ?」
 
 
「俺で遊ぶんじゃねぇ!」
 
 
「あれ、ベルフェゴールさんどうしたんですか?」
 
 
アザゼルを怒鳴ると何故かさくまが話しかけてきた。
 
 
「な、なんでもない、…ちょ、こっちくんじゃねぇ!」
 
 
うわぁぁ!なんて自分でも情けない声だってわかってる。
 
 
だけどなぁ、俺は、
 
 
 
 
 
 
 
 
女の子恐怖症。
 
 
「あ、ベルフェゴールさん!」
 
 
ダッシュで帰ろうとすれば後ろから、イケニエは!と大きな声で聞かれた。
 
 
「…いる」
 
 
「あ、イケニエはいるんや」
 
 
「うるせぇ!」
 
 
 
 
純白のマントを翻し、夜の街をかけるそいつは所謂、俺の先輩である。
 
 
 
「何をやってるの?タイガー」
 
 
ほら急がないと、と俺の腕をつかむ小柄なその男はにっこりと微笑んだ。
 
 
…この展開はもしや、
 
 
「ちょ、アル、まさか、」
 
 
「ほら、いっくよー!」
 
 
「え、…ちょ、まじたんまっ!」
 
 
そうして俺はこの先輩ヒーローに光にされたのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「虎徹ー?まだ怒ってるの?」
 
 
大人気ないなぁ、なんてにやにや笑いながら俺の頬をつつくこの小柄でガキのような男は所謂先輩で、俺より少しばかり年上で、尚且つ妻子持ちである。
 
 
「お前、何回言えばわかんだよ…」
 
 
「んー?」
 
 
「急に走るなっつってんだよっ!あと、お前と俺じゃ身体のサイズがちげーんだよ!あんな狭いとこ通れるわけねぇだろ!」
 
 
「なんだよタイガー、反抗期?」
 
 
「えぇ、ナイト先輩のお陰でね!」
 
 
そんな怒んないでよー、なんてへらへら笑うこいつが世の中の女性が憧れる『マジックナイト』だなんて誰が信じる?
 
 
「ほらほら、そんな顔しない!アントニオも誘って飲みに行こうよ?」
 
 
先輩がご馳走してあげよう!だなんて、子供っぽく笑うから俺はなんだかんだでこの先輩を許してしまうのだ。
 
 
 
 
 
 
 
ナイト様は落ち着かない!
 
 
「タイガー!また遅いー!ダッシュだよ!」
 
 
「ちょ、だからやめろー!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
娘の部屋で目覚ましが鳴り始めて約15分。
 
 
朝食の準備を終え、自分の席にエプロンをかけて向かうは娘の部屋である。
 
 
 
「シルヴィエ遅刻しちゃうよー?」
 
 
「…ん、後一時間、」
 
 
もぞもぞと寝返りをしながらそう言う彼女の体を揺する。
 
 
「パンケーキ冷めちゃうよー?つか、単位やばいんじゃないのー?」
 
 
「パンケーキ…」
 
 
あ、単位よりもパンケーキの方が大事なんだ。
 
 
いや、彼女のパンケーキ好きはもとからなので分かりきっていたことだが。
 
 
「おはよう、僕の可愛い天使」
 
 
白い額に口付けると、彼女はむすっとした顔で肩を押し返した。
 
 
「パパ、あたしもう大学生」
 
 
「でも、パパの可愛い娘には変わりないさ」
 
 
ほら、おはようのキスは?
 
 
自分より少し体温の高い娘を抱き締めてそう言えば、
 
 
彼女は仕方なさそうに自分の頬にキスをくれるのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
おはよう、僕の天使。
 
 
 
 
「でね、もうシルヴィエが可愛くて可愛くて、」
 
 
「…先輩、そろそろあいつもいい年なんだからそれやめた方がいいんじゃないっすか?」
 
 
「虎徹だって楓ちゃんにベタベタじゃないか」
 
 
「うっ…」