ヴラジーミル・グリゴリエヴィチ・ステーエフの『こねずみとえんぴつ』~12のお話~ | B/RABBITS(ビーラビッツ)のおしゃべり・絵本

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絵本専門古本屋(児童書)を13年経営していました。手と腕を壊して休業中です。この機会にもう一度、絵本や好きな本を見つめ直します。お店で"おしゃべり"していたように、本以外についても"しゃべる"ように書いています。


『こねずみとえんぴつ(1966年初版)
  ~12のたのしいおはなしとえのほん~』
ステーエフ作・絵  福音館書店1982年/表紙


3年半前の引越のとき、息子の引き出しにはチビたえんぴつ✏が、ごっそり入っていました。

えんぴつ✏、えんぴつ✏…
ステーエフの「こねずみとえんぴつ」のエンディングに描かれた、チビたえんぴつ✏を思い浮かべました。

高校3年生の冬でしたが、小学生まで使っていたえんぴつ✏がチビて使えなくなっても、捨てられずに取っておいたようです。

そういえば、義母が亡くなった後に整理していたとき、えんぴつが入っていたお菓子の缶に、カッターナイフで綺麗に削られた、チビた大量のえんぴつがあったっけ。

義母が亡くなった後に産まれた孫に、しっかりと受け継がれておりました。


画家・絵本作家・ソビエトのアニメーション映画の創始者で、絵や監督・脚本家として活躍したヴラジーミル・グリゴリエヴィチ・ステーエフの、楽しいお話が12話入っている本の紹介です。

ちょうど、長新太さんの『ぼくのくれよん』ごっこをしていたので、絵を描いたり、絵の具でぬったりするお話が3つも入っているこの絵本を読むことに。


[ストーリー]  男の子の机にあるえんぴつを、歯がムズムズするこねずみが、自分の巣穴にひっぱっていこうとします。

えんぴつは「最後に何か絵を描かしておくれよ」とこねずみに頼み、猫の絵を描いておっぱらうことに大成功。

…ステーエフは漫画風の筆致で、動物たちや子どもたちのお話を、あたたかくユーモラスに描いた絵本なのです。

【扉絵】
動物たちの表情も豊かで、思わず微笑んでしまいます。森の描写も安らぎとあたたかさが感じられ、この絵本の世界に自然に入り込むことができます。


「三びきのこねこ」

口絵】
[ストーリー]  くろねこ、はいいろねこ、しろねこの子猫たちは好奇心が旺盛 。
小麦粉の缶に入って白くなったり、カエルを追いかけ、地面に落ちている煙突に入って、真っ黒けになったり。
子猫たちの遊ぶ姿を愛くるしく描いています。


「きのこのかさ」

[ストーリー]  どしゃぶりの雨が降ってきて、ありが小さなきのこのかさで雨宿り。びしょぬれのちょうやこねずみやすずめも、ぎゅうぎゅうにつめて雨宿り。
そこにきつねに追いかけられたうさぎがやってきて…。


「にゃーおといったのはだれ?」

[ストーリー]  こいぬが昼寝をしていたら、「にゃーお!」と鳴き声が聞こえます。その正体を突き止めようと探しまわります。
出会う動物などの鳴き声を聞き、さんざんなめにあいながら、やっとその鳴き声の正体を知り…。


「いろんな おおきさの くるまのわ」

[ストーリー]  切り株の上の小さな家に、ハエとカエルとはりねずみとおんどりが暮らしていました。
森に出かけたとき、ちょっと変わった四つの輪の大きさが違う荷車を見つけ、持って帰ることに。

運ぶのに難航すると、はりねずみは"必ず役にたつ"と輪だけを外して、それぞれ転がして家路に着きました。

動物たちは輪を利用して役にたつものを作り、バカにしていたうさぎを大歓迎します。うさぎは恥ずかしくなり…。


「ちいさなふね」

[ストーリー]  みんなで小川にやってきて、カエルだけは水のなかにぴょーんととびこみます。他の子たちは泳げません。みんなで力を合わせて船を作りました。


「たすけぼう」

[ストーリー]  家に帰るはりねずみとうさぎ。はりねずみは道にあった長い棒を拾います。不思議がるうさぎに"これはただの棒じゃない。たすけぼうっていうんだ"と、はりねずみ。

そうです。この棒が次々とふりかかるうさぎの災難を助けるのです。はりねずみは感謝するうさぎに、たすけぼうをプレゼント。

本当の意味を知ったうさぎ。
"たいせつなのは ぼうじゃなくて、かしこいあたまと、やさしいきもちなんだね!"と悟ります。


「おんどりとえのぐ」

[ストーリー]  男の子はおんどりの絵を描いて、色を塗り忘れてしまいました。
散歩に出かけたおんどりは、絵の具さんに助けられ、ほんとうのおんどりになりました。


「きまぐれな めすねこ」


[ストーリー]  絵を描いている女の子に、やってきた知りたがりやのトラねこは、次々に質問します。

女の子はトラねこの質問に答えながら、どんどん絵を描いていき…。
結局、女の子の絵を気に入らず、ぶりぶり怒って帰ってしまうトラねこちゃん。


「おしょうがつのもみのきまつり」


[ストーリー]  12/31のもみのきまつりに、肝心なもみのきがない子どもたちは、さむさむおじいさんに手紙を書きます。

雪だるまが郵便屋さん。犬のボービクと一緒に届けに行くことに。
すごい吹雪にあって、粉々にくだけてしまった雪だるま。

森の動物たちに助けられ、やっとさむさむおじいさんに手紙を渡し、もみのきは子どもたちのもとへ…。


雨でどんよりした日、ステーエフの明るく無邪気な絵本に、少し救われたような気がします。