下町言葉のおばぁちゃん | B/RABBITS(ビーラビッツ)のおしゃべり・絵本

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絵本専門古本屋(児童書)を13年経営していました。手と腕を壊して休業中です。この機会にもう一度、絵本や好きな本を見つめ直します。お店で"おしゃべり"していたように、本以外についても"しゃべる"ように書いています。


コドモノクニ名作選 夏 (ハースト婦人画報社)より 1924年6月号「雨の日」絵/久富矢須枝】

湿気ぽいやねぇ。
昨日は一日、この絵の女の子と同じポーズで外を見ていました。
咳をするのもままならないほど、首と肩がトンでもなく痛くなり、ここ数日ぼォ―と雨音を聞いて、いたずらに時間が流れています。

頭の中もぼォ―としてまったく冴えず。このままおばぁちゃんになってしまうのかと思うぐらい、時が止まっているような錯覚に…

世界童話集』1924年(大正13)西条八十・水谷まさる編/武井武雄・絵】

いささか、とんちきな文をツイートして、blogをちょっと(-_-)zzzお休みしていました。

ツレが tv kで現在放送している 「木枯し紋次郎」「鬼平犯科帳」「必殺商売人」を録りためた番組を見ていたので、わたしもいっしょについつい見てしまいました。
時代劇…めちゃめちゃ好きなので。

【『コドモノクニ』1931年3月号/扉絵/初山滋】

ジプシー・キングスのエンディング曲「インスピレーション」を聞きながら、
"いいねぇ、時代劇の台詞回しは。
鬼平は粋で気っ風がいい"と唸っちゃいました。

粋な…というと、
"えっ?ブス?"事件と、
"下町言葉を笑われる"事件を思いだします。

1941年7月号「ぐみの実」絵/鈴木信太郎】

書籍保護のため、本をビニールに入れていました。(本と本がこすれて傷がつかないようにと、幼いお子様も多く、お口の中に突っ込んだお手てで、本を触っちゃうこともあったので)

若いお嬢さんに「ビニールから本をだしちゃダメなんですか?」と聞かれ、

「いえいえ、ビニールの袋の上は開いていますから、どうぞどうぞご自由にご覧ください」

「あぁ、ホントだ。取り出せますね。ビニールの上が閉じているかと思いました」

「アラ、本屋に来て中身が見られないなんて、そんな不粋なことをしませんよぉ」

「えっ?ブス? ブサイク?(-""-;)」
「いえ、お客様の顔のことじゃありませんよ。お可愛い顔してます。
ブス?じゃなくて不粋(無粋)ぶすいf(^_^;)です」

「"不粋"って何ですか(  -_・)?」

「"粋"の反対です(^ー^)
 野暮なこととでも言いましょうか…

息子にも蕎麦の食べ方や言動を、
「粋じゃないよ、野暮だよ」とか、
「そんなことしたら、お里が知れるよ」
なんてことを幼い時分から言っているわたし。
ついつい口癖がでてしまい、危うく誤解されるところでした。

1925年7月号「蛙の学者」絵/武井武雄】

もうひとつ"下町言葉を笑われる"事件。

向島から来たというおばぁちゃん。
最近読み聞かせにはまっていて、子どもが集まる場所で読んだら、"ひ"と"し"が言えなくて子どもたちに笑われると、しょげながら話をしてくれたおばぁちゃん。

「"やかましい"って、
絵を見てたらわかるだろって、
"潮しがり"は"潮ひがり"だってわかるだろって(*^。^*)」

「奥さんも生まれは下町なんですか?どこいらへん?」

「いえいえ、関東の田舎ですよ。
わたしも学生の頃、地方出身の友だちとしゃべっていて、言い回しが面白いって笑われたたことがありますよ。
親になっても、息子から"お母さんの言葉はおもしろい"って言われるし。

【1925年7月号「蛍の燈台」絵/岡本帰一】

例えばですね…
やっぱし、まいンち、
持ってくん(持っていくの)、
くんなかった(くれなかった)、
しまって(納めて)、しまいに(終わりに)、

ひっちゃぶく、ひん曲がる、
つっぷす、うっちゃる、こしらえる、
おこうこ(お線香)、おみおつけ(味噌汁)、

おんなし(同じ)、おもて(往来)、
おかいんなさい(お帰りなさい)、

〇〇(新宿)くんだり、しゃっこい(冷たい)
ねっころがる(寝転がる)、行っといで、
よそいき(外出着)、まっつぐ(まっすぐ)
…息子に対して、口癖ですからしょっちゅうこんな調子でしゃべるンですよ。

引越が多い家だったので、どこの方言が混ざっているンだろうと調べたら、下町言葉なんですよねぇ。

いつも何気なくしゃべっている言葉は、東京方言・東京訛りだってことが。
地方の人や息子にとっちゃ、東京訛りが面白いわけです。

さすがに大工をでえく、大根をでーこんとは言いませんけど(ノ´∀`*)

【1926年8月号「ユフスズミ」絵/岡本帰一】

言葉を覚える幼い時分に、芸者の置屋さんが近所にあって、三味線の音色や都々逸が通るたびに聞こえるような所に住んでいたことがあります。

立ち止まって聞いていたそうです。
ちん・とん・しゃんの世界です。
日本髪を結って、綺麗な着物のお姐さんたちを見ていましたから。

その頃から、時代劇を好きな元になるようなことはあったンですね、思い返すと。

【附録童謡/裏表紙 絵/岡本帰一】

幼いときに、一人だけ叔母の家に行き、趣味の合うおばちゃんと、TVの時代劇をしょっちゅう見ていました。
大人になっても池波正太郎の時代劇や必殺シリーズが大好きで大好きで。

小さな頃から見過ぎて、下町言葉に感化されちゃったんでしょうね、わたし。
調べたりしてお門違い、見当違いだったンですけどね。
いやなに、要するに"下町言葉はいい"っていうことです

【1935年夏の増刊号「新案テント」絵/横山隆一】

「奥さん、話しが面白いよ。
今からでも落語家の弟子になったらどうだい

「アハハ、取材で落語家さんがいらしたとき、"姐さん、落語家より上手くしゃべっちゃいけないよォ。今からでも入門するかい"と言われました」

「そうかい。この店に来て、奥さんとしゃべれて御の字だよ。
それにしても、今さら"ひ"の発音は直らないねェ、きっと

【1923年6月号「お池」絵/本田庄太郎】

"ひ"が"し"になっちゃったって、下町の子どもたちは話し言葉として、耳で聞いていますから、わかってますって。

まぁ、今は時代が違うから、標準語と言われる言葉をしゃべるンでしょうけど。

【1925年「6月号裏表紙「スヰレンノハナ」絵/本田庄太郎】

読み聞かせで"笑いがくる~"なんて、
つかみはOKってことですよ。
子どもたちが聞く耳をもって、受け入れ体制ができるってことですから。
読み聞かせの"あっため"にはバッチリです。
楽しかったと思いますよ、子どもたちは。バカにしたわけじゃない、楽しかったンですよ。

わたしは下町言葉大好きですから、応援しちゃいますよ!」

【1928年6月号裏表紙 無題 絵/本田庄太郎】

「そうかい。大丈夫かねぇ」

「ハイ。大丈夫です。
わたしも早口なので、ゆっくり読むように心がけています。あとは慣れです。積み重ねです。
そして、子どもたちのことを想って選んだ絵本が、自分で大好きな絵本だったら、子どもたちにも読み聞かせで伝わりますって。

上手く読もうとしなくても、味わい深い読み聞かせも良いものです。
ハートが大事です。いっしょに楽しもうとする気持ちが…。

まだ始めたばっかり、気にしなさんな…ってことで、どうでしょう
                        (*^ー^)ノ♪」

【『曲馬』1928年川西英】

『さんまいのおふだ』(水沢謙一再話/梶山俊夫画/福音館書店)を読んで、子どもたちを少しビビらせますか("⌒∇⌒")?
ユーモアあふれる昔話ですから。
それとも、いっそのこと落語絵本にしますか?

…と話をしたら、向島のおばぁちゃんはにっこり。

 絵本は面白いのよ、読んでてさァ。
   笑われてもいいかァ、
  辛気くさくなるよりいいかァ、
                      アハハ(  ^∀^)」
                一件落着。

時代劇が好き過ぎて、下町言葉をしゃべるようになり、下町のおばぁちゃんの読み聞かせの話しを思い出したという、
わたしの与太話の一席はおしまい。

"粋"な話から飛んでしまいました。
あいすいません。

【『お伽草紙 動物之巻』1918年竹下夢二】