元ファッション誌の編集者エスター・アベリル『黒ねこジェニーの誕生日』 | B/RABBITS(ビーラビッツ)のおしゃべり・絵本

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絵本専門古本屋(児童書)を13年経営していました。手と腕を壊して休業中です。この機会にもう一度、絵本や好きな本を見つめ直します。お店で"おしゃべり"していたように、本以外についても"しゃべる"ように書いています。


1/6に『黒ねこジェニー』のお話をblogにアップしました。挿絵は線画なので、彩色画である、残念ながら絶版のこの絵本を紹介したいと思います。


『黒ねこジェニーの誕生日』1954年初版
                           エスター・アベリル作・絵  
                            パルコ出版 1992年 絶版

恥ずかしがりやの小さな黒ねこ、ジェニー・リンスキーの誕生日。
みんなに愛されているジェニー。
友だちと公園で、お祝いピクニックをすることになっています。


賑やかなニューヨークの町を歩いていると、プレゼントを持った友だちに会います。


あのピックルズ(『しょうぼうねこ』文化出版局)は、消防士さんが用意してくれたご馳走と、みんなを🚒消防車に乗せました。
さぁ、みんなで可愛いジェニーのお祝いだ!



ジェニーの大好きなダンスを踊り、


素晴らしい誕生会は終ります。



「世界中のねこが お誕生日に すてきなお祝いをしてもらえますように」
ジェニーはお祈りをして、眠りにつきました。

             " I love Jenny 💕"


エスター・アベリル(1902-1992)は、
ファション誌の編集者となり、ニューヨーク公立図書館児童部に勤務しながら、美術学校で絵を学びました。

1/12のロジャンコフスキーのblog記事に、アベリルのことを書きましたが補足します。
アメリカの商社のために、パリのデザイン通信員(服装・家具・室内装飾・建築など最新の情報)としてパリにいたときに、ロジャンコフスキーに会いました。

亡命後、転々としてパリにいたロジャンコフスキーは、便箋の模様やカタログなどの仕事をしていました。絵本を描くように忠告したアベリル。

しかし、そのときは誰も、絵本の制作や製本のことを何も知らなかった…。

アベリルは『ホーン・ブック選書 1924-48』1959年出版に、「絵本の遍歴者(オデッセイ)」の文章を寄稿…と、瀬田貞二氏が『絵本論』(福音館書店)で語っています。

アベリルの詳しい履歴はわかりませんが、絵本のプロデュースをしているうちに、自分でも表現したくなったのでしょうか?
ホーン・ブックの本の邦訳版がないので、アベリルをもっと知りたいわたしは、地団駄地団駄。残念無念。

アベリルのあっさりと率直で微笑ましく、洒落感がありユーモラスな絵は、画面に惹き込まれて、はまってしまいます。
描き込まれていない感が、見ている側をリラックスさせ、心地よい余韻を残してくれている気がします。


『はなのすきなうし』文や『おっとあぶない』作・絵のハーバード大出身のマンロー・リーフも出版社の編集者。
編集者として挿絵画家に、下手な絵で注文をつけていると、面白いと言われて本を書き始めました。

敏腕編集者は感性が豊かで、色々な意味で面白い方が多いようです。
また、そういう方がよい絵本を作ってくださっているのでしょうね。