『ゴルゴ13』2:マンガ原作とマンガ制作 その裏側 Part2 | 懐かしエッセイ 輝ける時代たち(シーズンズ)

懐かしエッセイ 輝ける時代たち(シーズンズ)

懐かしい’60s’70s’80s
ひときわ輝いていたあの時代の思い出のエッセイ集です。
毎週土曜日更新予定です。

 今日は。
本日は3月11日です。
東日本大震災から何年になるのでしょう?
昨今の能登半島地震中東の紛争、そしてウクライナでの戦争と大きな災害の中で、埋もれてしまいそうです。
でも、今日はその時に思い馳せたいと考えます。

 10年前に僕は「山下達郎「Ray of Hope」(東日本大震災へのレクイエム)」(リンク)を書きました。
そこでご紹介した『希望という名の光』を今回お届けします。

 ○#希望という名の光(A Ray Of Hope)

 


  https://www.youtube.com/watch?v=qQ0iTo-0xgg

 もちろん、能登半島地震で現在被災に苦しんでいる方もいます。
東映は能登半島地震の被災地復興のため、広告収益の一部を日本赤十字社に寄付する映画の3作品目『UFOロボ グレンダイザー対グレートマジンガー』を期間限定(3月7日午後9時~21日午後8時59まで)での無料配信を開始しました。
どうぞご視聴ください。

 〇『UFOロボ グレンダイザー対グレートマジンガー』令和6年能登半島地震 復興応援配信【公式】

 

   https://www.youtube.com/watch?v=-GHIxVzEtbA

 さて、前回の「『ゴルゴ13』1:マンガ原作とマンガ制作 その裏側 Part2」(リンク)では、最近の『ゴルゴ13』のストーリーについて書きました。
それに続き、「『ゴルゴ13』 2」をお届けします。

<『ゴルゴ13』 2:マンガ原作とマンガ制作 その裏側 Part2>

 
 まず、『ゴルゴ13』が掲載されている「ビッグコミック」と同じ小学館「週刊ポスト」2023年12月24日号が『ゴルゴ13』の現在の制作現場を紹介していますので、見てみましょう。
●小学館 「週刊ポスト」2023年12月24日号 制作現場
  
 前回ご紹介すればよかったのでが、さいとう・たかをは「原作」と言わずに「脚本」という言葉を使っています。
マンガの制作を映画と同じように考えるさいとうですので、映画の「脚本」を使用していると思います。

●『ゴルゴ』が生まれる部屋

「ギネス世界記録」の長寿連載を支える「ビジネスモデル」に密着


 

 

 



「さいとう氏亡き後はシナリオは脚本家に任せ、作画はチームで分業する”プロダクション・システム”が構築された」
「脚本家は5~10人ほど。
脚本のプロだけでなく、国内外の裏事情や専門知識に明るい軍事ライターや元外交官も加わる。

・さいとうたかを氏の意志を引き継ぐ作画術    
1.構図・ネームの作成
 脚本を元に、3日ほどかけてチーフのふじわら・よしひで氏がネーム(劇画の設計図)を作成


 

 

 

2.枠線引き
 コマの枠線を引いた後、銃や建物などの担当ごとに作画スタッフへページを割り振る。

3.作画
 作画スタッフがペン入れ。
 各ページの作画が同時進行で進み、7日で40頁を完成させる

4.作画チェック
 10人のスタッフ全員で、抜けや間違いがないかを入念にチェック

5.音入れ
 “ズキューン”などの効果音は鉛筆で場所を指定し、過去作のさいとう氏の手描き文字をPC上で重ねる

6.担当編集者が確認
 かつてはさいとう氏が最終確認していたが、今はふじわら氏と担当編集者でその役割を担う

(Writers4 コメント)

 さいとうたかをの生前は「ゴルゴ13」の顔はずっとさいとうが描いてきたので、現在の「ゴルゴ13」の顔を『ゴルゴ13』の旧作から使用しているのは知っていました。
音も、旧作から使用しているんでね。
   
 「さいとう氏亡き後はシナリオは脚本家に任せ、作画はチームで分業する”プロダクション・システム”が構築された」と記事があります。
これは間違いではないでしょうか。
さいとうたかをが存命の時からのシステムのですから。

 この制作からすると、「脚本の深堀」が足りないよう思います。
そのため前回紹介したように、「脚本」が『ゴルゴ13』の世界観に添わなく、甘くなっているように思えたのです。
かつて、さいとう・たかをが、脚本家から出てくる脚本の中で、手を加えなかったのは小池一夫ぐらいだ、言っていたのを思い出しました。

 小池は、『ゴルゴ13』の連載開始当時は、脚本に加わっていましたが、『子連れ狼』(画: 小島剛夕)や『実験人形ダミー・オスカー』叶精作作画)のなどの原作を書いている、梶原一騎に並ぶ、原作の大家です。
逆に言うと、さいとう・たかをは、小池以外の脚本にかなり手を加えていたことになります。

●僕の『ゴルゴ13』のイメージ
 読者には、読者なりの『ゴルゴ13』のイメージがあると思います。
 僕にとっては
  ・金融問題や世の中の動乱や政治問題など僕らの知らない問題に起因するグローバルな作品。 
  ・依頼人の多くは、国家の首脳レベルやそれに準ずる国家諜報機関。
  ・実行困難と思われる狙撃を、意外な手段と、驚異的な射撃テクニックや行動力で、不可能を可能にする。


 そんなイメージです。

 このイメージに前回ご紹介した3話は合わないように思えてなりません。

●「カンブリア宮殿」
  そんな中、こんな動画を見つけました。

  ○【ゴルゴ13作者】さいとうたかを カンブリア宮殿

 


   https://www.youtube.com/watch?v=MtQYy_J4qPI

 この番組を三点から追ってみたいと思います。
1.制作スタッフ
 連載開始当時の「さいとうプロ スタッフ」は次のようでした。
 (年齢は2009年頃のもの)

〇さいとうプロ スタッフ(8:36頃)
   さいとうプロ スタッフ 9名
   さいとうプロにはアシスタントはいない。
   スタッフそれぞれが独自のパートを受け持つ
   
 ○2007年(番組放映時)当時のスタッフ
   さいとうたかを(70歳)

   石川フミヤス(69歳)
   武本サブロー(65歳)
   いとう・たかし(64歳)
   千葉利助(55歳)   高卒以降 銃器担当
   上柚宇大(54歳)
   正村 弟(39歳)
   赤司 教(36歳)
   杉本洋平(27歳)

   
 ○1968年連載開始時( 第1話「ビック・セイフ作戦」クレジット)

  構成:さいとう・たかを  
  脚本:小池一夫
    さいとう・たかを  

  構図:武本サブロー   
     さいとうたかを

  作画:石川フミヤス(69歳) 
     武本サブロー
     甲良  幹二郎

     神田 猛・山崎拓味・大竹由次・三村ヨウコ
     田村精作・中津真樹子
 
     フジ・山城


 〇(参考 2023年)第533話のスタッフ
  構成・構図:さいとうプ
  脚本:静夢 さいとうプロ
  作画:さいとうプロ
    ふじわら・よしひで 藤原輝美 宇良尚子 白川修司 木村周司 
     永嶋康宏 杉本隆康 渡辺 格 小山 響 古賀 憲
     さいとうたかを
  担当:吉田有里 


  「週刊ポスト」で紹介された2023年と比べてどうでしょうか?
  この2007年時点では、甲良 幹二郎はいませんが、連載開始時からのチーフ二人(石川フミヤス武本サブロー)がさいとう・たかを支えています。
 これに比べると、現在のチーフのふじわら・よしひでは数年前から『ゴルゴ13』の制作に携わっていて、まだ経験が足りないのではないでしょうか?
 更に特筆すべきは、ふじわら・よしひではさいとう・たかをが逝去のあと、さいとうがかつて担当していた重要な部分も任されていることです。

2.効果音
  15:11頃のさいとうが 効果音を 一筆する場面を見てください。
さいとう自ら原稿にマジックで書きこんでいます。
 これはさいとう以外の人が担当するには、相当難度が高いですね。

 
 「カンブリア宮殿」を見て、現在の制作の過程で「効果音」は「過去作のさいとう氏の手描き文字をPC上で重ねる」という理由がわかりました。

3.脚本
(1)さいとうの「劇画」『ゴルゴ13』対する本音 
  さいとうたかをは、 書き手の感覚より、プロデューサーの感覚が強かった、と話をしています(10:00頃)
  さいとうには『ゴルゴ13』は書きたいものという意識はない。むしろしんどい作品。(16:40) 
  『ゴルゴ13は私自身が一番苦手な世界。
  わたしは時代劇がすき。時代劇を書いているとホッとする。
  機械ものが苦手。PCがでてきたらパニックにおちいる。
  私の中に、機械文明を認めていないところがある。

(2)分業体制(22:27)
  ゴルゴの脚本家にも分業制があった。現在10名。

  これまで脚本を書いたのは小池一夫外浦 吾郎(直木賞作家 船戸与一)を含め45人。
      
(3)静夢(銀行マン)(22:37)
   前回紹介した第633話「悪徳の彼方」の脚本を担当していました。 
   1990年 「ベストバンク」発表しました。
   その後1995年に 三菱銀行と東京銀行が実際に合併が起きていて、これを予言するものです。

(4)横溝邦彦(24:01) 
   横溝邦彦は 以前さいとうプロでマンガを描いていて、さいとうに脚本作りの才能をみとめられた。
    「病原体・レベル4」(第343話)1995年

(5)さいとうの脚本に対する本音(25:31)
  さいとう「(45人に脚本を書いてもらったが)いまだかつて、ゴルゴがでてきたことがない。
  つまりゴルゴではない。私の中にあるのがゴルゴ。
  (各脚本は)それぞれが違うゴルゴになっている。
  それを私なりに書き直す作業がある。

  小池一夫の脚本は直さなかったと嘗て聞いたことがありました。
 さいとうたかをは手を出さないにしても、小池に修正を依頼はしていたのかもしれません。
 他の脚本家の脚本は「書き直す」作業が必要だったことを明言しています。
 今、そのさいとうが居ません。

●エピローグ

 「ビックコミック」の最後にちばてつやのエッセイまんがはありますが、僕は、最後に『ゴルゴ13』を気を引き締めて読んで、雑誌を閉じていました。
 次回の雑誌に期待をしてです。
 最近の『ゴルゴ13』は、今回書きましたように、しっくりしない話が多く、その座をかわぐちかいじの『空母いぶき』に変えています。
 早く、『ゴルゴ13』にもとの僕の正位置に戻ってほしいものです。

 「ゴルゴは半分は読者のもの。読者が望むなら、書き続ける」とのさいとうの言葉を受けて、さいとうプロには頑張って欲しいものです。 
 そのためには、まずは脚本。
 そして絵にも磨きをかけてほしいものです。

  作者の逝去のあと、続く作品にアニメ映画の『ドラえもん』があります。
 アニメ映画版は例外もありますが、藤子・F・不二雄の『大長編ドラえもん』の漫画をベースにしていました。
 藤子亡き後も、『のび太の恐竜2006』のようなリメイク版もありますが、多くの新作を発表しています。
 僕は、映画の『ドラえもん』も大好きで、子供以上にこの作品を楽しんだのを覚えています。
 今回『ゴルゴ13』を見直しして、アニメ映画の『ドラえもん』も考えてみたいと感じました。