水曜日


やっぱ今日は雨かぁ


憲子はため息交じりで呟いた。


「今日は友達と久々のショッピングなのに なんで雨なんて降るんだろ」


少し愚痴りながら仕度を始めた。


友達と連絡を取りいつものカフェで待ち合わせする事になり


傘を手に取りブーツが濡れるのが少し気になりながら街へと向かった。


カフェに着くと友達も丁度着いたらしくコーヒーを頼んで席に着いた。


少し世間話をしてから買い物するつもりだったのが話に夢中になって


二時間もそこのカフェに居座ってしまった。


でもまあいつもの事 どうでもいい話でも女同士なら盛り上がってしまうものだ。


それは若い娘でも私みたいなおばさんでも関係ない


話を切り上げ外に出るとまだ雨が降っている。


「なんだ こんなにしゃべってたのに雨が上がらないか」


友達は話に夢中になってれば雨も勝手に上がるだろうと思ってたらしく


少し残念そうだった。


「そうね 雨降ってたんだったわね。忘れてたわ」


憲子も雨の存在を忘れてたらしい


二人で傘を差して街をぶらつく


特に買うものなって無いのだが このぶらつきが好きなのだ。


普段家で家事ばっかしてる主婦としては、街を歩いてるってことはなんか若さを取り戻した感じがする。


でも夕方になれば夫や息子の事が気になり夕飯のおかずを買いにデパ地下に向かう


「?今日は何にしようかしら?」


主婦の顔に戻りつつある憲子とその友達は、これが安いあれが安いと見比べている。


手に買い物袋と傘を持ち途中まで友達と帰り別れた。


友達と別れた途端手荷物が重くなる。


雨は少し小降りになり少しは気分はいいがやっぱ傘が邪魔だった。


辺りも暗くなり水溜りがよく見えない


「もう!水溜りに入っちゃった」


下を気にしながら歩いて行くのがめんどくさいと思いながら


急ぎ足で歩いてると目の前に影らしい物を見た。


顔を上げてみるとそのまま意識が一瞬飛び


水溜りに倒れた。


「何…?」


脚らしき物が見える…?


その脚はそのまま通り過ぎていく


「何…?身体が動かない…」


憲子の意識は薄れていく







「警察は物取りの犯行ではない事から怨みの犯行が高いと推測して……」


リモコンのボタンを押してチャンネルを天気予報に変えながら憲子はつぶやいた


「家の近くじゃないこの事件…怖いわ…」


「あなたも帰りとか気をつけてよ。なるべく明るい道から帰ってきてね。」


憲子は心配しながら週間天気予報を見て水曜日が雨かと少し落ち込んだ。


「大丈夫だよそんなの この犯人は怨みを晴らしたんだからもう誰も殺さないよ」 


将彦は楽観的に言い返した。


「そんなのわからないじゃない!通り魔殺人かもしれないし 最近は本当に怖いんだから


もしあなたに何かあったら私達どうすればいいのよ!」


朝っぱらから嫌なテンションで、将彦は無言でコーヒーを飲みそのまま出勤をした。


「もう!すぐ無視するんだから! いってらっしゃいー」


あの子はまだ寝てるのかしら?


幸太はいつもギリギリまで寝ている為 朝は滅多に将彦と顔を合わさない


階段を下りる音が聞える。


「おはよう…はぁぁぁあー」


「おはようー早く食べないと遅刻よ」


「知ってるよーいつもの事だし」


幸太は冷静に返した。


朝ごはんをさっさと食べランドセルを背負い出かけはじめると


「最近物騒だから寄り道しないで帰ってきなさいね」


憲子は心配口調で幸太に言った。


「寄り道も何も僕塾いったないから嫌でも早く帰ってくるよ。」


「あらそうね だったら寄り道出来る様に塾でも行く?」


「まっぴらごめんだねーいってきますー」


「いってらっしゃい 気をつけなさいよー」


憲子は少し笑ってしまった。


滅多にそんな冗談を言わない自分に少し可笑しくなっていた。


そんな中水曜日に本当に雨がふるのかなと思いながら


片づけを始めた。



「はぁ~面白くない…」


バーで一人自棄酒を飲みつぶやいている


運なんてあるんだろうか?


俺とあいつの席が違ってたら俺は勝っていたのに


なんで俺はあんなスロットを打ってしまったんだろ…


後藤広樹はギャンブルに負けて自棄酒を飲んでいた


「ついてねぇーなぁ…ほんと」


何やっても駄目 面白い事なんて何も無い


このまま生きていても未来が見えない


俺はどうなるんだろうこの先


このこの歳で大金持ちにはなれないし


事業をやるって言っても才能もないし


残るは犯罪ぐらいか…


後藤は冗談交じりで苦笑した。


「犯罪かぁ…」


「窃盗やるとしても今の防犯システムは、すごいからなぁ」


「俺なんてすぐ捕まっちまうな」


「人を襲うなんても怖くて出来ないしな」


知らない人から金品を奪うなんて、自分が出来るかどうか


後藤は頭の中でシュミレーションしてみた。


「出来ないよなぁー理性が出ちまうよ」


「理性か…」


どうしたら理性を捨てる事出来るんだ?


酒を浴びるほど飲んで記憶を飛ばすか?


記憶が飛んだら意味ないか


後藤は真剣に考えていた。


グラスに残った酒を飲み干し


店から出た。


家に向かいながら少し千鳥足で、理性の消し方を考えていた。


少し猫背気味でフラフラと歩きただ理性を忘れる方法をつぶやきながら歩いた。


ドンッ!


肩に何かぶつけたなと思いながら何も気にしないでそのまま歩いて行こうとすると


「おいっ!人にぶつかって来ながらそのまま行くのかっ!」


中年の男が後藤を呼び止めた。


後藤はぶつぶつと言いながらその男を無視するかのように歩いていく。


中年の男はその態度にイラついたのか後藤を追いかけた。


中年は後藤に追いつくと肩に手を取り無理やり振り向かせた。


後藤は強引に振り向かせられたので、回転しながらその場に倒れた。


「なんだ!酔っているのか?」


「まったく 常識を知らない若者が酔っ払うと性質が悪い!」


中年の男は後藤の姿を見て苛立ちを覚えた。


今の若者は自分さえよければいいと思っている者ばかりだ


だから世の中がおかしくなる。この若者もどうせその類に入ってるんだ。


中年の男は無理やり後藤を起たせて、襟を掴み乱暴に揺さぶりかけて


怒鳴り散らし始めた。


後藤は揺さぶりかけられて、頭がグルグルと回り天地がひっくり返る感覚に襲われた。


「わぁーなんだ!止めろ!」


「気持ち悪りぃー止めろって言ってるんだよ!この野郎!」


後藤は無意識に襟を掴んでいる中年の男に頭突きをかまして、開放された。


中年の男は鼻を折られその場に倒れこんだ。


「なんなんだよアンタ?イキナリつかみ掛かってきやがって」


「俺が何をした?あぁ!」


後藤は酒のせいもあるがひどい興奮状態になっていた。


無意識に鼻を押さえ倒れこんでいる男の腹を蹴り上げた。


その瞬間自分が好きな映画のシーンと同じだと思いながら


またそれで興奮して、さらに蹴り上げた。


悪態を吐きながら蹴り続け唾を吐いた。


なんなんだこの開放感


いつもだったら相手に傷つけないように謝りながら


許しを願う 許してくれるまで相手の眼を見ないでひたすら謝る


これで自分が助かるのなら安い物だ。


相手に暴力を振るなんて怖くて出来なかった。


それが今ギャング映画みたいに相手を蹴り上げて


悪態を吐くなんて、こんな気持ちいいものなのか


後藤は顔をその中年の男の顔に近づけ


「てめえの時代は終わったよ。くだばりな」


と後ろポケットに入ってたナイフで中年の男の腹を何度も刺し


男が死ぬと解かるとそのまま立ち尽くした。


あー俺ナイフいつも持ち歩いてるんだっけ


襲われたら威嚇の為に持ってたんだ。


って言ってもナイフを持ち始めてからもう2年経つけど


やっと実ったよ。


理性も消し飛んだな


こんなに簡単な事だったんだな…


「そうだ レンタル屋に行ってギャング映画でも借りようかな」