「はぁ…はぁ…はぁ…」


身体が硬直している。焦点が定まらずジィーッと一点を見詰めている。


その見詰めた先には血に染まった物がいる。


人間だ


死んでいるのか?俺が…殺したのか?


現実なのか…?俺は人を殺してしまったのか…?


その男は何故こんな場所にいるのか何故右手に血のりが付いたナイフを持っているのか


疑問に思うより、今日で最終回のドラマを見逃した事に気づき少し落胆した。


何故こんな日にこんな目に合うんだ…


人通りの少ない高速道路のトンネルの下で男は考える。


何か忘れている…なんだ…?


手探りで身体を触り自分の身体を調べる。


そうだタバコを吸うんだ…


まずタバコを吸って落ち着こう…


まずこのナイフをどうするか? ひとまず下に置いておこうか


男はナイフを地面に置きタバコに手をかけた時に右手に血が付いてるのに気づいた。


男は血が付いてこの血をどうやって拭くか悩むより


この血が自分の服に付いたらどうするんだと少し怒りを覚えた。


この横たわっている人物のせいで付いた血だ。


そう思うと段々とその人物を呪った。


とりあえず横たわってる人物の衣類で右手に付いてる血を拭った。


そしてタバコに火を付け煙をゆっくりと吸いゆっくりと吐いて少し落ち着いた様子だ。


今この時には横たわっている人物に対して恐怖も無くなっていた。


「そうだ顔を覗いてみよう」


くわえタバコでおもむろに顔を覗かせ


その人物の顔を覗いた。


「誰だ?」初めて見る顔だ。


薄暗いトンネルで目を細め顔を再度確認する。


歳は50前後か? 「誰なんだ…?」


何故俺はこの人物を殺したんだ?


いや!俺が殺したのか?


何も接点もない他人を殺したのか?


思い出せない…!何故ここにいるのかもわからない…


男が意識を戻してからもう10分経ったが、いまだ車や人は通らない


そんなに人通りが無いのかここは…


とりあえず逃げるか…?


でもこの死体をどうする?


「そうだ!ナイフを拾わないと」


男はナイフを拾い刃先を見て血が乾いたのを見てジャケットのポケットに入れた。


そして死体をどう片付けるか考えたがめんどくさくなりそのまま逃げる事にした。


死体から離れ歩きながら考えてた。


今日の出来事を…









仕事を片付けようやく帰宅出来ると安堵してる将彦に


同僚から飲み行かないか?と誘いが来た


将彦は表面上行くか止めるか悩んでるように見えるが


心の中はまったく行く気が無い


そもそも将彦は自分から飲みには誘わないし


誘っても半分以上は断る


別に会社の連中が嫌いとか行くのがめんどくさいとかでは無い


ただ飲みに行けばそれだけ家に帰るのが遅くなる


遅くなれば風呂に入って後は寝るだけと自分も時間が無くなってしまうのを嫌う


もし明日が休みなら飲みにも行くだろうが、あいにく仕事だ


そんな訳で今回も将彦は渋々断る演技をしなければならない


「んー今日は止めとくよ 嫁がうるさいんだよ最近寄り道するなってさ」


「怖そうだもんなあ牧野さんの奥さん」 同僚は将彦の嫁の顔を知らない


将彦がいつも逃げる口実で憲子をダシに使っているのだ


もしこれが憲子にバレたら本当に怖いんだろうなぁと将彦は思う


同僚と会社前で別れ帰路に着く


会社に向かう家に帰る


この繰り返しで、将彦は毎日何かを考えている。


当たり前の生活のどこかで、少しでも躓いたり 少しの寄り道で家庭が崩壊したりしたら


どうなるんだろう?


人は理性の元で生きている。自殺だって今すぐ出来るし人も殺せる


紙一重の理性と言う名で人は左右されている。


誰だって殺せるし誰だって救える。


俺みたいなサラリーマンだって今この時刻から殺人鬼にだってなれる


もしくは日本を動かす男にもなれる。すべては思考でしかないとわかっているけど


それが理性ってもんだ。悪いこと良いことを認識出来る物が初めて人間と言えるんだと


電車に揺られながらたまに思う。 


この考え方が異常だとは思わない ただ思ってしまうだけで…


駅を降りてそこからは自転車で帰るのが日課になってる


自転車の荷台の部分が錆びてきているのに少し気になっていた。


「新しいの買うかぁ」 小さなこだわりだ。今の自転車を使ってもう2年経っている


確か1万5千円ぐらいだったか


「この自転車を憲子に譲り俺は折りたたみ自転車でも買うかな」


周りを見ると折りたたみ自転車で通勤してる人が多い


そんな中自分は普通の自転車で何か抵抗があるのを感じていた。


別に折りたたみ自転車に変えたからと言ってかっこよく見える訳でもないのだが


少し錆びた自転車に乗ってる自分が少し嫌になる


周りは俺がこんな自転車に乗ってる姿を見てなんて思うんだろう…?


そんな事考えているともう家の前だった。

憲子は日々悩んでいる


これは主婦の宿命なのかもしれない…


毎日同じな物では駄目なのだ。


日々の変わり映えのない日常を少しでも変える為にも…


とスーパーの籠を腕に下げ今日の献立に悩む憲子が野菜売り場をウロウロとしている。


「はぁ~今日何にしようかなぁ」


年々野菜が高くなってきてこれもそれもと買う訳にもいかず


しっかりと料理を決めてから買う努力をしている。


「やっぱ政治が悪いのかしらね?」


と昨日の会話を少し思い出し冗談っぽく言った憲子


なんでもかんでも政治のせいにするのは良くない事だと


わかってるのに経済的に悪化を期している今


誰もが政治が悪いと思うのは当たり前の事だ。


でも憲子は家族が幸せに暮らせればそれでいい


こうやって家族の為に献立を考える事も幸せの一つだ。


今の世の中それも出来ない人々がいる…


当たり前の事がどんどん失われていく今の時代に


憲子はふっと恐怖した